武田薬:資金負担重く、大幅格下げ懸念や金利上昇-日本最大の買収で

  • 3兆3600億円のブリッジローン導入-シャイアー買収で
  • 負債規模考えると「恐ろしい」-BNPパリバ・中空氏

武田薬品工業によるシャイアー買収が8日、合意に達した。武田薬は今後、巨額の買収資金の返済を迫られ、財務悪化が懸念される。格付け会社は大幅格下げも示唆しており、資金コストの上昇に跳ね返ってくる恐れもある。

  今回の買収額は約460億ポンド(約6兆8000億円)で、日本企業による海外買収としては過去最大。買収資金を賄うため総額308億5000万ドル(約3兆3600億円)のブリッジローン契約をJPモルガンチェース銀行、三井住友銀行、三菱UFJ銀行と8日に締結した。昨年末時点で1兆1385億円だった有利子負債はさらに膨らむことになる。BNPパリバの中空麻奈チーフクレジットアナリストは、買収の成否はシャイアーがどれだけ利益を生むか次第だとしながらも、「負債の規模などを考えると恐ろしい」との見方を示す。

  そこに追い打ちを掛けそうなのが格付け会社の動向だ。ムーディーズ・インベスターズ・サービスとS&Pグローバル・レーティングは、シャイアー買収が実現すれば負債が増える武田薬の発行体格付けに下方圧力が掛かるとの見解を示し、中でもムーディーズは最大で2段階以上引き下げる可能性を示唆している。

武田薬品工業

Photographer: Buddhika Weerasinghe/Bloomberg

  ブリッジローンは一時的なつなぎ資金の性格が強く、通常は社債発行などの長期的な資金調達で借り換える。武田薬も8日の開示資料で長期借入金やハイブリッド資本などで統合完了前に借り換えることを検討していると記している。

  ニッセイ基礎研究所の徳島勝幸金融研究部主席研究員は、武田薬の資金調達について「これまでの格付けならいくらでも起債できるが、格付け次第で調達しやすさは変わってくる」と話す。

  社債市場では巨額買収を織り込んで、同社の調達コストは増加。ドル建て武田薬債(2022年償還、表面利率2.45%)の利回りは7日時点で3.8%台まで上昇しており、格下げされれば一段の上昇が予想される。

  武田薬は今後、ハイブリッド資本を発行する可能性もあるとしているが、これらは、格下げ圧力を緩和させる効果があるものの、返済順位が低い分、金利が高くなる場合が多い。

市場金利も上昇

  約3兆3600億円のつなぎ融資借り換えのうち、どの程度社債に依存するかは不透明だが、昨年度の発行額が10兆円余りと市場規模の小さな日本での大規模調達は「なかなかきつい」と徳島氏は指摘。国内債にとどまらず、外債発行や銀行からの借り換えなども考えられるという。同社は11年にスイスの製薬大手ナイコメッド買収の際、つなぎ融資の借り換えで国内社債1900億円、日本企業最大となる30億ドル(約3300億円)の外債発行を行った実績がある。

  ただ、大規模調達による信用力低下だけでなく、現在の市場環境では足元の金利も上昇し、起債環境は良好とは言えない。日本は依然、超低金利政策を取っているのに対し、出口政策に入ってきた欧米では金利が上昇傾向にある。米連邦準備制度理事会(FRB)は15年以降、利上げ局面に入っており、欧州中央銀行(ECB)は9月にも国債購入を止める可能性がある。

  大和証券の藤岡宏明シニアクレジットアナリストは、投資家の動向について「金利自体が上がれば、社債などリスク資産でなくても米国債を買ったらいいとなる」と指摘。社債の魅力が低下した分、上乗せ金利(スプレッド)拡大を引き起こしているとの見方を示した。ブルームバーグ・バークレイズ指数によると米投資適格社債の平均スプレッドは2月初めの85ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)から112bpまで拡大している。

  京都大学経営管理大学院の松本茂特命教授は取材に「シャイアーにはパイプライン(開発中の新薬)がたくさんある。武田がフォーカスしていないものもあるので、買収後にそれらを売却すると思うが、うまくできるのか」と疑問を呈する。これまでも買収はしているが買収した後の経営の経験と実績が十分ではなく「難易度は高い」と述べた。

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