武田薬:シャイアーの買収で合意、約6.8兆円

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  • 3.4兆円のローン契約、JPモルガンチェースや三井住友銀などと
  • 3期後の期末までに年14億ドルのシナジー効果を期待
Photographer: Buddhika Weerasinghe/Bloomberg

武田薬品工業はバイオ医薬品メーカーのシャイアーを約460億ポンド(約6兆8000億円)で買収することで合意したと発表した。国内企業による過去最大規模の海外企業買収で、世界の製薬会社のトップ10入りを狙う。

クリストフ・ウェバーCEO

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  武田薬は、新株の発行と現金を組み合わせシャイアー株1株当たり49.01ポンドでの買収を提案。これには現金30.33ドルと、武田薬の新株0.839株または米国預託株式(ADS)1.678株のいずれかが含まれる。武田薬が買収の検討を公表する3月27日のシャイアー株終値に60%の上乗せとなる。買収の成立には両社の株主の合意が必要になる。

  武田薬のクリストフ・ウェバー最高経営責任者(CEO)は8日の電話会議で、今回の買収は新薬開発のあらゆる段階での「豊富なパイプライン」につながるとの見解を示した。統合は買収完了前に開始するとも説明した。シャイアーのフレミング・オルンスコフCEOも同日文書を公表し、買収受け入れについて「株主にとって最大の利益であり、専門的治療が必要な世界中の多くの患者の生活を改善する機会を提供する」と歓迎した。

  武田薬は今回の買収により、米国市場の基盤強化や消化器系疾患やがん、神経障害などの領域の強化を目指している。シャイアーが得意とする希少疾患の治療薬に対する需要は増加傾向で、競争も比較的緩やかなため収益性が高い。ただ、巨額の買収が重荷となる可能性はある。3月に武田薬が買収検討を発表するとシャイアー株は26%上昇し、時価総額は約5.2兆円まで膨らんだ。一方、約20%株価が下落した武田薬の時価総額は約3.7兆円で、自社を上回る企業の買収となる。

世界の製薬会社の売上高ランキング

武田薬とシャイアーを合算するとトップ10入り

Source: Bloomberg, based on companies' filings for most-recent fiscal year

  格付け会社S&Pグローバル・レーティングは今回の買収による財務負担は事業面で見込まれるプラス効果を大きく上回るとの見方を示し、資金調達次第では格付けを最大2段階引き下げる可能性があると指摘。R&Iも武田薬を格下げ方向のレーティング・モニターに指定し、過去の買収で収益力は買収額に見合うほど改善していないことなどから、格下げする場合には調整幅は2段階以上になると発表した。

  ウェバーCEOは電話会議で、2段階以上の格下げになる可能性があることを認めたうえで、「投資適格を維持していくことが重要」との考えを示した。武田薬自身の買収防衛策については「成長企業になることが最善の策」と話した。

販売地域のシナジーに期待

  同社の株式を保有するしんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹運用部長は今回の買収について、「武田薬はパイプラインも乏しくジリ貧になる可能性もあったが、財務リスクを取って成長に舵を切った」と指摘。米国市場に強いシャイアーとは販売地域のシナジーも期待できるとし、約60%のプレミアムについても「許容できる範囲だ」との見方を示した。

  武田薬は必要な資金を調達するため、308億5000万ドル(約3兆3600億円)のブリッジローン契約を8日付でJPモルガン・チェース銀行、三井住友銀行、三菱UFJ銀行と締結したことも発表した。このうち、35億ドルについては返済日が借り入れ実行日から90日後に設定されており、残りの部分については364日後となっている。

  武田薬は買収完了から3期後の期末までに、少なくとも年14億ドルのシナジー効果を期待できるとしている。クレディ・スイス証券の酒井文義アナリストは、シナジー効果について「ポジティブ」と指摘した上で、武田薬の発表内容にサプライズやネガティブな要素はないとの認識を示した。

財務体質の悪化懸念

  日本アジア証券の清水三津雄エクイティ・ストラテジストは、期待感はあるものの相乗効果をどの程度出せるかは不透明だと指摘。3兆円を上回る借り入れにより財務体質の悪化が懸念されるとの考えを示した。

  武田薬によるとシャイアーの株主は統合会社の約50パーセントの株式を保有することになる。また、2019年上期を想定する買収完了後に、ニューヨーク証券取引所へ統合会社のADS上場を申請する方針も明らかにした。

  医薬品業界ではM&A(合併・買収)が加速している。米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)は先月、独メルクの消費者部門を約34億ユーロ(約4400億円)で買収すると発表。スイスのノバルティスは3月、消費者ヘルスケア関連の合弁会社の株式36.5%を130億ドルで英グラクソ・スミスクラインに売却すると発表。仏サノフィはジェネリック(後発医薬品)部門を米投資会社アドベント・インターナショナルに19億ユーロで売却する方針を示している。

  国内での人口縮小や特許切れが進むなか、武田薬は海外市場を取り込むために海外企業の買収を加速させていた。同社は11年、スイスの製薬会社ナイコメッドを96億ユーロで、昨年には米アリアド・ファーマシューティカルズを約46億6000万ドルで買収している。

(5、6段落に格付け会社の評価やCEOのコメントを追加します.)
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