Photographer: Kiyoshi Ota/

日本のガバナンス改革は「買い」、投資配分増やす

東京でヘッジファンドへ投資してきたエド・ロジャース氏は、運用資産に占めるアクティビストファンドの割合を増やすことにした。日本企業が株主の声に耳を傾け始めているとみて、物言う株主として知られる彼らが対話を通じてより大きな利益を上げる可能性に賭けたのだ。

  ロジャース・インベストメント・アドバイザーズで最高経営責任者(CEO)を務めるロジャース氏は、自らが率いる運用会社ウォルバー・ヒル・グループで2018年上期に運用資産の5%をアクティビストファンド1社に新たに振り向ける計画だ。既に1社に投資しており、割合は計10%になる。同氏は「日本企業は事業改善提案に対し、これまで以上に柔軟に対応するようになってきている」と指摘する。

  東芝や神戸製鋼所など、企業統治に関する悪いニュースが目立つ一方で、日本企業の改革は進んでいる。安倍晋三政権は海外投資家を呼び込み、市場を活性化しようと企業統治改革に着手。15年に導入したコーポレートガバナンスコードでは、上場企業に独立社外取締役の選任などを求めたり、投資家との対話を促した。政権発足時の12年末に比べて、東証株価指数(TOPIX)構成銘柄の株主資本利益率(ROE)は2倍になり、配当や自社株買いも増えた。

  呼応して、アクティビストファンドの動きも目立っている。オアシス・マネジメントは昨年、パナソニックがパナホームを完全子会社化した案件で実質的な買収価格の引き上げを勝ち取った。今年1月には、投資先のGMOインターネットのガバナンスに焦点を当て改革を提案した。00年代に注目を集めた「村上ファンド」創業者の村上世彰氏も再始動した。

  「コーポレートガバナンスの精神は確実に日本に根付き始めている」。ロジャース氏は電話インタビューでこう話した。少子高齢化による市場縮小に直面した日本が「抱えている問題に向き合うべき時が来たのは明らかで、産業構造を大胆に変革することが一つの解決になるだろう」と分析。「生き残るためには既存事業を見直すところも出てきそうだ。そこにアクティビストが活躍する余地が出てくる」と期待した。

道半ば

  日本の企業統治改革に注目するのはロジャース氏だけでない。世界有数の機関投資家らも期待を口にし始めている。「航海は始まった」。世界で1.6兆ドル(約170兆円)を運用するJPモルガン・アセット・マネジメントのファンドマネジャー、ニコラス・ワインドリング氏は日本の企業統治改革を船に例えて言う。「ともかく船出をし、進み続けている」。

  運用資産残高6550億ポンド(約99兆円)の英スタンダード・ライフ・アバディーンのアジア責任者、ヒュー・ヤング氏は企業統治改革の進む日本にワクワクしていると話す。一方で、残る懸念として、日本企業が将来の株式希薄化をもたらす転換社債(CB)をいまだに出し続けていること、政府お気に入りのガバナンス改革先進企業の指標であるROEへの過度の依存が長期的視点で企業の成長を阻害する可能性があること、女性役員の活用が遅れていることを挙げた。

  実際、日本は米国にいくつかの指標でまだ後れを取っている。ブルームバーグのデータによると、例えば、TOPIX構成企業の女性役員比率は平均4%弱。米S&P500種採用企業では同21%強だ。また、大多数の米同指数採用企業で独立取締役が取締役会の過半を占めているのに対し、日本の同指数採用企業では3%未満に留まっている。日本株はこうしたガバナンスのリスクが嫌気され、長く割安に取引されてきた。

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