【インサイト】LIBOR上昇、信用リスクよりも流動性低下に起因

3カ月物ドル建てロンドン銀行間取引金利(LIBOR)とオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)レートのスプレッドが拡大しているが、一見しただけではスプレッド拡大の原因の核心を見誤りかねない。 世界金融危機以降、LIBORとOISレートのスプレッド拡大は銀行の信用リスク拡大の兆候とみる向きもある。しかし一般的には信用リスクではなく、流動性低下の兆候と見なされる。

・信用リスクを流動性リスクから切り離す

  LIBOR/OISスプレッドの拡大が市場の注目を集めている。しかし多くの人が考えるようにクラウディング・アウトがスプレッド拡大の主因だとすれば、最近のLIBOR上昇のうち、どの程度が流動性リスクではなく、信用リスクに起因しているのかを推定できるかもしれない。流動性リスクを信用リスクから切り離す簡単な方法として、LIBOR/OISスプレッドから3カ月物財務省短期証券(TB)とOISのスプレッド(TB/OIS)を減じる方法がある。この単純な計算の結果、供給過多による足元の3カ月TB利回り上昇が、LIBOR上昇の主因であることが分かる。

  実際には、LIBOR/OISスプレッドからTB/OISスプレッドを引いた残りのスプレッド(TEDスプレッドに相当)は、2011年後期と16年に見られた水準より、まだかなり下回っている。しかしLIBORの上昇で、信用リスクや資金調達リスクの懸念も生じている。(2018/03/22)

図表:TB/OISスプレッドで調整したLIBOR/OIS

・LIBORスプレッド拡大のうち約25%が信用リスクに起因

  クレジットデリバティブの相場には銀行のデフォルトリスクの高まりがまだ十分織り込まれていない。コマーシャルペーパー(CP)のスプレッドは拡大(これも他の短期債発行によるクラウディング・アウトが原因とみる)しているものの、これまでのところLIBORパネル行(指定金融機関)のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)スプレッドは徐々に拡大している程度だ。実際には18年1月以降、LIBORパネル14行の平均CDSスプレッド(ブルームバーグ保有データ)は約10ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)拡大したが、17年11月の水準に戻したにすぎない。

  LIBORパネルには、JPモルガン、シティグループ、ドイツ銀行、バンク・オブ・アメリカが含まれる。もしLIBOR上昇が信用リスクの兆候であるなら、過去2カ月のCDSスプレッドはじわじわとではなく、大幅に拡大していただろう。(2018/03/22)

図表:LIBORパネル行の5年平均CDSスプレッド

・CPによる調達は少ない

  CP発行は銀行の資金調達手段の一つだが、足元で銀行の資金調達に占めるCPの割合は世界金融危機発生前の水準に近い。しかし流動性カバレッジ比率(LCR)や安定調達比率(NSFR)などのバーゼル3の規制のおかげで、CPによる調達の減少に対する銀行の対応力は以前より高まった。こうした規制により、他の短期資金調達源への依存度も低下した。フェデラル・ファンド(FF)とレポ(現金担保付債券貸借)が米銀の負債に占める比率は現在5%未満だ。

  一方、決済性預金は他の手段による調達が減少した分、増加している。当座預金口座から大量の資金流出があれば、銀行は切羽詰まってFF市場での調達を増やす可能性がある。そうなればOISレートは上昇し、皮肉にもLIBOR/OISスプレッド縮小につながるかもしれない。(2018/03/22)

図表:銀行の資金調達 タイプ別

・金融機関CP発行はそれでも続く

   銀行の調達コスト上昇を浮き彫りにするかのように(同様にクラウディング・アウトが主因)、CPの発行と残高にほとんど変化は見られない。年初からの金融機関のCP残高の増加率は17年通年よりも高い。この供給増によるCP金利の上昇もLIBOR/OISスプレッド拡大の一因となっている可能性がある。

  CPは2年前に実施された短期金融市場の改革により残高が急増したため、発行がやや難しくなったとみる向きもある。これが事実であれば、CPの供給増は足元のスプレッド拡大に少なくともある程度の影響を及ぼしているかもしれない。(2018/03/22)

図表:CP残高

・LIBOR上昇による実際の影響

  ロンドンに本拠を置く銀行の調達コストが上昇していることで、他の多くの銀行を取り巻く状況も次第に厳しくなっている。 LIBOR/OISスプレッドの拡大を金融危機の前兆とみるわけではないが、実体経済に影響があるのは確かだ。多くの企業や個人の借入コストは、政策当局の予想を上回るペースで上昇している。米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げサイクルの道筋が変更される公算はまだ小さいが、スプレッドが一段と拡大すれば、利上げにためらいが生じる可能性はある。

  ハイイールド債の発行体の多くは、LIBORを基準とする金利で借り入れ、その一部をスワップ取引で固定金利に交換している可能性がある。同様にクレジットカード、変動金利住宅ローン、その他消費者金融もLIBORを参照金利とすることが多い。(2018/03/22)

図表:LIBORを参照する融資・債券

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Libor’s Climb Driven More by Reduced Liquidity Than Credit Risk

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