湯煙たなびく別府に有名ホテル続々進出、地元老舗は投資急ぐ

  • インターコンチネンタルの建設進む、星野リゾートや大江戸温泉も
  • 資本力で太刀打ちできないとの声-昔ながらの旅館の良さで勝負

日本を代表する大分県の別府温泉郷に内外の大手ホテルが相次いで進出を決め、地元の老舗ホテルとの間で熱い戦いを繰り広げている。ターゲットは2019年のラグビーワールドカップや20年の東京五輪で増加が見込まれるインバウンド(訪日外国人客)や国内の富裕層。迎え撃つ地元資本は設備投資を急いでいる。

  おびただしい数の湯煙を見下ろす高台で建設が進んでいるのは「ANAインターコンチネンタル別府リゾート&スパ」だ。約8万2000平方メートルの広大な敷地に、89の客室とフィットネスクラブ、プールを備えた施設を19年にオープンする。4階建ての低層にして客室数を抑え、温泉を生かしたぜいたくなつくりが売りだ。

湯煙が上がる別府温泉郷

NOTE: EDITORIAL USE ONLY. NO SALES. NO ARCHIVING. Beppu is famed for its hot springs. Source: The Nishinippon Shimbun

  
  インターコンチネンタルを運営するIHG・ANA・ホテルズグループジャパンのハンス・ハイリガーズ最高経営責任者(58)は「別府は世界有数の温泉地だが、国際的に知名度のある高級ホテルがなかった。日本の富裕層向け市場は非常に魅力的で、インバウンドも急速に拡大している」と進出の理由を語る。

  別府は湧出量・源泉数ともに日本一の規模を誇る。1970年代には新婚や修学旅行客に人気の観光地として宿泊客数は約600万人に達したが、平成に入り団体旅行が衰退。2017年の宿泊客数は約254万人と半減した。熊本地震が発生した16年に大幅に落ち込んだものの、5年前に比べてほぼ横ばいで推移している。

別府温泉の宿泊客数の推移

日本人客の減少を外国人客が埋め合わせ

出所:別府市観光戦略部観光課

  一方で、韓国や台湾、中国などアジアを中心とした外国人宿泊客数は約21.3万人から約48.6万人と同期間で倍増した。隣の大分市で5試合が行われるラグビーワールドカップでは、インバウンド増加の期待も高く、国内大手も参入。大江戸温泉が昨年7月に老舗ホテルをリニューアルして開業したほか、星野リゾートも創業100年を超えたホテル跡地に高級温泉旅館を建設中だ。

高まる温泉人気

別府市の外国人宿泊者数は増加傾向

出所:別府市観光戦略部観光課

  インターコンチネンタルの誘致で陣頭指揮を執ったのは長野恭紘別府市長(42)。相次ぐ新規参入に「近年の別府市の面白さ、潜在力の高さを改めて評価してもらった」と胸を張る。「これから最も伸びるのは観光だ。国内需要は人口減少でますます減少し、伸びしろがあるのはインバウンドだ」と話す。

  長野市長が外部資本の参入をてこに狙うのは「安売り」から「高売り」競争への転換だ。地元のホテルや旅館がその対価として、施設を整備しサービスを向上することで、宿泊客を徹底的に喜ばせることが重要だと強調する。

厳しい共存共栄

  地元老舗も目の色を変えている。「潮騒の宿 晴海」の久保力夫代表取締役(60)は、団体客中心だった別府で30年前に個人客を対象した全室露天風呂付きの宿を始めた。2年前には1泊2食付3-4万円程度と高価格帯の系列ホテルをオープンしたばかり。料金帯が重なる星野リゾートの進出に「ドキッとした」が、逆に刺激になったという。19年夏の営業を目指し、20億円かけて施設を増築する計画だ。

「潮騒の宿 晴海」の露天風呂

Photographer: Masahiro Hidaka/Bloomberg

  部屋数647と別府で最大規模を誇る「杉乃井ホテル」は14年から稼働率100%を続けている。客単価は1万3000円程度。1944年に開業したが、2001年に経営破たんし、オリックス不動産の下で再建した。佐々木耕一総支配人(71)は大手資本の参入は「町に魅力があるからで大歓迎。どんどん攻めていって魅力ある町にした方がもうかっていく」と余裕の構えだ。近く、会議施設をリニューアルするという。

  内外資本の参入に、歓迎一色というわけではない。別府市旅館ホテル組合連合会によると、部屋数は現在の約4400室に約630室が加わる。ホテル白菊の西田陽一社長(57)は「表向き共存共栄と言っているが、本音はすごく厳しい。皆、戦国時代になると感じている」と打ち明ける。資本力やマーケティングでは大手に太刀打ちできない。昔ながらの旅館の良さをどのように出すかが勝負と考えている。

「杉乃井ホテル」の温泉

Photographer: Masahiro Hidaka/Bloomberg

  JPモルガン証券の足立正道シニアエコノミストは、人口減少・少子高齢化で内需不振が続く日本経済にとって、インバウンド急増が「救世主になっていることは間違いない」としながらも、これまでのペースで伸び続けるとは考えにくく、「少なくとも短期的には減速を覚悟しておいた方がいい」と指摘する。

  今年創業100年を迎えるホテルニューツルタの鶴田浩一郎社長(65)は、相次ぐ新規参入に「だぶついた緩和マネーが入っている。もろにバブルで必ず反動が来る」と警戒しつつも、受けて立つ構えだ。19年までに通常の倍の3000万円から4000万円の資金を設備投資に投入する。「こんなに動きのある時代はない。経営者にとって腕の見せ所だ」と鶴田氏は意気込んでいる。

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