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トヨタ:新設計手法「TNGA」でコストに苦しむ、削減を徹底へ

更新日時
  • 性能は大幅に向上と評価、両立めざした取り組み加速-関係者
  • TNGAで新型プリウスやC-HR開発、今後も対象車種は増加へ
A Toyota Motor Corp. badge is seen on the new2018 Toyota Corolla vehicle.

A Toyota Motor Corp. badge is seen on the new2018 Toyota Corolla vehicle.

Photographer: Bloomberg/Bloomberg
A Toyota Motor Corp. badge is seen on the new2018 Toyota Corolla vehicle.
Photographer: Bloomberg/Bloomberg

トヨタ自動車は商品力の向上と開発コスト削減の両立を目指して導入した車両開発手法「TNGA」について、大幅な性能向上につながった反面、期待していたほどのコスト削減効果は現時点で得られていないと評価している。自動運転や電気自動車など新規分野の投資負担が増えるなか、今後はコストの引き下げにより注力していく方針だ。

  トヨタはTNGAで当初は性能向上とコスト削減の両立を目指していたが、実際の開発現場では商品力の引き上げが優先される場面が多く、そのために多くのコストが使われたことから思ったほどの原価低減効果が得られていない、と非公開の情報であることを理由に事情に詳しい関係者が匿名を条件に明らかにした。その反省に立ち、今後は性能を維持しながらコストも下げることにこれまで以上に注力するという。

  TNGAはトヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャーの略称。独フォルクスワーゲン(VW)などが先行して取り組んでいた「MQB」などと類似した手法でプラットホーム(車台)や部品を複数のモデルで共有することなどで燃費や動力性能、ボディー剛性などを大幅に引き上げる一方でコストなどの開発リソースに関しては20%以上の削減を見込んでいた。TNGA導入で米ケンタッキー工場に13億ドル(約1370億円)をかけて設備を更新するなど初期投資もかさんでいる。

  トヨタでは2015年にTNGAを初めて取り入れ、ハイブリッドシステムの軽量・コンパクト化やボディーの高剛性化を図った4代目「プリウス」を発表し、16年に第2弾として小型SUV「C-HR」を市場投入。TNGAを紹介するテレビCMも放映してアピールしていたほか、今年1月にはコーポレート戦略部と先行開発推進部を統合し、TNGA推進部を設置。吉田守孝副社長を責任者に任命して体制を強化していた。

  トヨタの昨年の世界生産台数は単体だけで900万台と単一の自動車メーカーとしては世界最大でTNGAによる開発車種の比率は20年ごろ全世界の販売台数の半数程度になる見通し。今後は部品会社にも協力を求めてTNGAでのコスト削減を徹底し、自動運転など急増する先端技術への投資に充当するなどして競争力を高めるという。TNGAで開発される車種の数が増えるなか、コスト削減が成功すればトヨタの収益性改善につながる可能性がある。

  SBI証券の遠藤功治アナリストは電話取材で、TNGAは「現時点では目に見える効果が見えてこない。部品の共通化とコスト削減が当初思ったようにできていない」と指摘。自動運転やコネクティッドなど新しい技術の開発や設備投資にコストがかかる中、「基本的な車づくりのコストは下げていかなくてはいけない。いまは暗中模索で、これからどう成果がでるかが重要だ」と話した。  

  ブルームバーグ・インテリジェンスのアナリスト、スティーブ・マン氏によると、トヨタの営業利益率は、14年ごろから下降線をたどり、直近では米ゼネラルモーターズやホンダの水準に近づいている。トヨタは今夏にTNGAで開発したカローラハッチバックを発売予定で、マン氏はその後も米国での最も販売台数がSUVのRAV4や高級車ブランドのレクサスの複数モデルなど主要車種に拡大していくとみている。

強い危機感

  今年2月の新型駆動装置の発表会ではトヨタ第1駆動・EHV設計部CVT設計室の原嶋照室長が新技術を採用した部品に関して、コストは以前よりも「ちょっと高い」とし、「上がっている部分もあるが、ほかの部分でだいぶ工夫して下げた部分がある。同等とまではいかないがアップをだいぶ抑えた」と話していた。

  豊田章男社長は昨年5月の決算発表の場で、TNGAを通じて「もっといいクルマづくり」が定着してきたとしたうえで、車を賢くつくるという点でまだまだ改善の余地があると指摘。性能や品質の競争力向上を優先してコストや時間の削減が後回しとなったり、顧客目線の車づくりができなくなったりすることについて、「強い危機感を感じて」いると述べていた。

  トヨタの北米事業を統括するジム・レンツ専務は取材に対し、TNGAへの初期投資は将来の車の開発も見据えて投入されているもので、そのコスト削減効果の判断は現状の車種だけを見て下されるべきではないと話した。

  トヨタ広報担当の喜多亜貴子氏は電子メールでの取材に対し、TNGAは単なる部品の共有化や原価低減の手段ではなく、基本性能や商品力の向上を目指していかに設計して生産するかに取り組む活動で導入以降、トヨタ車の基本性能は大幅に進化し、よくなったと顧客などから評価を得ているとした。TNGAで開発された市販車はまだ一部にすぎず、今後はエンジンなど基幹部品にも対象を広げていくとし、「さまざまな車種への展開は始まったばかりであり、本当の成果はこれからとなる」とした。

(6、8段落にトヨタ関係者やアナリストのコメントを追加しました.)
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