官製春闘5年目、大手企業は賃上げ傾向継続も慎重-政権の意向も意識

  • 「政府が要請やめた時に賃上げ続くか不明」-日本総研の山田氏
  • トヨタは月額3.3%引き上げもベアの金額は非公表

2018年春闘では14日、自動車や電機など主要企業の集中回答日を迎えた。好業績を背景におおむね5年連続のベースアップ(ベア)となった一方で、一部企業では2015年の水準を下回るなど慎重さも目立った。安倍晋三首相は3%という賃上げ目標を示したが、定義があいまいななかで政権の意向を意識した様子も透けて見えた。

  トヨタ自動車は前年実績の月額1300円を超える水準でベアを実施するが、具体的な金額は公表しない異例の対応を取った。月額3.3%の賃上げとなるというが、これにはベアと定期昇給のほか各種手当なども含まれる。日立製作所やパナソニックなどが加盟する電機連合は統一交渉を展開し、ベア月額3000円の要求に対して1500円の回答を得た。

  政府が企業に賃上げを促す「官製春闘」は5年目となる。安倍首相は昨年10月の経済財政諮問会議で、デフレ脱却に向けて、今年の春闘で3%の賃上げを実現するよう企業に求めた。経団連の榊原定征会長も1月の会見で、「3%の賃金引き上げという社会的期待を意識しながら、自社の収益に見合った前向きな検討を期待したい」と述べた。厚生労働省によると、主要企業の春闘では2%台の賃上げが4年続いており、17年は前年比0.03ポイント低下し2.11%だった。

主要企業のベアの推移


20142015201620172018
トヨタ2700円4000円1500円1300円非公表(1300円超)
日産自3500円1500円3000円1500円3000円
ホンダ2200円3400円1100円1600円1700円
パナソニク2000円3000円1500円1000円1500円
日立2000円3000円1500円1000円1500円

  経団連次期会長に内定している中西宏明氏が会長を務める日立製作所は、ベアと定期昇給の月例賃金ベースで2.3%の賃上げと回答。ボーナスなども加えた年収ベースでは4.1%の引き上げになると表明した。同社の中畑英信常務は記者団に対し、首相の3%要望は「定義があいまい」と指摘したうえで、経団連の採用している年収ベースでは「3%の水準は超えたと認識している」と説明した。

  日本総合研究所の山田久チーフエコノミストは14日の電話取材に、「政権からの要請を企業はかなり意識している」と分析。一方で、必ずしも主体的な賃上げではないとし、「政府が要請をやめた時に賃上げが続いていくのかは不明」との考えを示した。

景気回復

  企業収益は過去最高水準で推移している。財務省によると、17年10-12月期の経常利益は20.9兆円と過去2番目の水準。企業の内部留保にあたる利益剰余金は過去最高となる417兆円を記録した。

  不正会計や米原子力事業の巨額損失など、相次ぐ不祥事で経営危機に陥っていた東芝は今年、電機連合の統一闘争に3年ぶりに復帰。ベアと定昇を合わせた月例賃金の上昇率は2.5%だった。同じく復帰を果たしたシャープは、年収ベースで組合員平均3%の賃上げを回答した。

  足元で続く人手不足は中小企業を中心に賃上げを後押しする。みずほ総研の宮嶋貴之主任エコノミストは14日の取材で、「中小企業は労働需給ひっ迫の影響を受けやすい。給料を上げないと人が集まらないから賃上げせざるを得ない」と指摘する。17年平均の有効求人倍率(季節調整値)は8年連続上昇の1.5倍で、1973年(1.76倍)に次ぐ史上2番目の高水準を記録した。宮嶋氏は、一方で大企業は研究開発や成長投資に資金を回す傾向があると説明した。

  ただ、物価の影響を考慮すると消費へのインパクトは限定的。第一生命経済研究所の永浜利広主席エコノミストは春闘について、日本企業は輸出中心であるために「2月は円高株安が進んでいたので警戒していたが、懸念していたほど悪くなかった」と評価。その上で「実質賃金は恐らくマイナス。消費を押し上げるには力不足」と語った。毎月勤労統計調査では17年の現金給与総額は同0.4%増だったが、物価上昇率を加味した実質賃金は0.2%減だった。

  連合は16日に全体の賃上げ率を含む集計結果を公表する。

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