【コラム】米朝首脳会談、ゲーム理論的には身動き取れず

Beware of the zugzwang.

Photographer: Jewel Samad/AFP/Getty Images

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トランプ大統領が北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と会談するとすれば、それ自体はかなり予測不可能なイベントと見なされる。そのような首脳会談について考える際、エコノミストがどのようにゲーム理論を活用するかを見てみるのはそれなりの価値がある。たとえそれが、状況が改善するより悪化する余地の方が大きいとの説明になるとしても。

  ゲーム理論者がよく用いるアプローチは、一連の戦略がどのような結果を生むかを検討し、現時点での選択肢が理解できるよう、結果から逆方向に推測することだ。北朝鮮問題の場合ではまず、わずか2、3年以内に米国主要都市を攻撃できる大陸間ミサイルを開発できる状態だとのシナリオから始める。これは北朝鮮の指導部には良いが韓国を含む他国には非常に悪く、首脳会談で何かの成果を挙げる必要があるのは米国と韓国であるため、金委員長の交渉力は増す。

  一つには、北朝鮮に対する先制攻撃は良いこと、または少なくとも必要だと考える向きがあるだろう。だがそこまでの強硬論者には、首脳会談の開催は歓迎されるかもしれない。米国が北朝鮮に非核化を迫るが、金委員長はその受け入れを拒み、トランプ大統領はあらゆる手を尽くしたと言い張り、少し待って攻撃をしかけるという流れになる。

  もう一つの可能性としては、核開発計画を凍結または制限するため、この首脳会談で北朝鮮に支援を約束し、いわば賄賂を送るというものだ。ただ、米国の後ろ盾がある韓国が最近すでにこの戦略を試しており、それは明らかに失敗した。北朝鮮はより強力になっており、米国として何らかの成果を生むには、北朝鮮への報酬は合意違反を未然に防げるほど大きくなければならない。確かな見返りが約束されていない状況で、米議会がそのような巨額の資金を非友好的な独裁者に配分するとは考えにくい。さらに、核兵器を手にする可能性がある国はトルコ、サウジアラビア、ベトナムなどほかにもあり、仮に米国が北朝鮮に報酬を提供したなら、他国も同様の支払いを期待して核開発を進めるかもしれない。

  米朝が単に協議するだけで何の合意も得られなかった場合、金委員長のステータスは高まり、結局ミサイル開発を続けることになる。このため、米がこのまま協議実施に至った場合、戦争に至るリスクが高まったと推察するのは合理的といえよう。

  チェスでは、どう指しても形勢が悪化する状況のことを「ツークツワンク」と呼ぶ。米国として形勢を改善させられる一手というのは存在するのだろうか。最良の結果は中国を介して得られると私は見ている。首脳会談は北朝鮮の脅威が焦点となり、結果的に中国の国民が解決策を求めることはあり得る。それがより強い中国の反応となり、制裁の強化を誘発し、金委員長がそれに建設的に反応し、同時にその背景では米朝協議を理由に韓国が米国との同盟関係を維持する、というシナリオだ。だが、これも実現する可能性は低いという印象だ。

  トランプ大統領のツイッター使用には、支持者の間でも批判の声が多い。だがツークツワンクの状態で肝心なのは、直接対話という手を打てば状況ははるかに悪化する可能性があるということだ。

(タイラー・コーウェン)
(コーウェン氏はブルームバーグ・ビューのコラムニストです。このコラムの内容は必ずしもブルームバーグ・エル・ピーの意見を反映するものではありません)

原題:Game Theory Scowls at Trump-North Korea Talks: Tyler Cowen(抜粋)

翻訳記事に関する翻訳者への問い合わせ先:
シアトル ハイアー千津子 cheyer5@bloomberg.net
翻訳記事に関するエディターへの問い合わせ先:
西前明子 anishimae3@bloomberg.net

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