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【インサイト】邦銀G-SIBベイルイン・シニア債、毀損しない公算

日本の破綻処理制度には、グローバルなシステム上重要な銀行(G-SIB)の資本ならびに流動性を支えるという選択肢がある。これを勘案すれば、破綻の危機にあっても日本のG-SIBのベイルイン適格要件を満たすシニア債は、毀損(きそん)を免れるかもしれない。危機時に政府が支援する確率が非常に高いことを理由に、 ムーディーズは持ち株会社の三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、三井住友フィナンシャルグループ(FG)、みずほフィナンシャルグループ(FG)の同シニア債に対し、銀行子会社のシニア債と同水準の格付けを付与している。

  三井住友FGとみずほFGのベイルイン適格シニア債に対するムーディーズの格付けは「A1」、S&Pグローバル・レーティングは「A-」で、これらのスプレッド(指標国債に対する上乗せ金利)はバンク・オブ・アメリカ(BofA)のベイルイン・シニア債(A3/ A- / A)より大きい。 幾つかの逆風が収益性への圧力となっているものの、日本のG-SIBの自己資本比率は高く、預金基盤には安定性があり、流動性が潤沢で、資産の質も高い。

日本のG-SIBの持ち株会社シニア債

  日本の銀行破綻処理制度のあいまいさは、G-SIBが破綻の危機にあっても、ベイルイン適格シニア債は毀損を免れる可能性があることを示唆する。MUFG、三井住友FG、みずほFGは、総損失吸収力(TLAC)として預金保険を含めることで、TLAC債を発行する必要性が軽減される。

・破綻前に資本と流動性を支援するという選択肢

  日本の銀行破綻処理制度には、G-SIBの破綻前に資本と流動性を支えるという選択肢がある。第1の選択肢の下では、存続可能な銀行は資本注入ならびに流動性に対する支援を受け、その一方で株式や一定の条件下にある負債のみが元本削減、あるいは株式転換される。第2の選択肢は破綻、あるいはその可能性が高い銀行に適用される。このオプションでは、株主と債権者の双方が損失を負担することになる。

  ただし、破綻の危機に際してどのような措置を取るかの判断基準について、日本の規制当局は詳細を明らかにしていない。金融安定理事会(FSB)も、日本のベイルインによる処理制度をめぐるあいまいさに対し、注意を喚起している。

日本の金融機関破綻処理制度の概観図

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・格付け会社は政府支援の可能性織り込む

  日本のG-SIBの持ち株会社ベイルイン適格シニア債の信用格付けに、政府支援の可能性の高さが反映されている。ムーディーズは、MUFG、三井住友FG、みずほFGの持ち株会社シニア債を、銀行子会社シニア債と同レベルのA1に格付けしている。S&Pは、A-と銀行子会社の格付けより1段階低く評価しているが、これは日本のソブリン格付けがA+であることから引き上げが制限されるためだという。

  両格付け会社は、経営危機の際には政府がこれらの銀行を支援する可能性が高いことを格付けの前提としている。一方、他のほとんどのG-SIBについては、持ち株会社ベイルイン適格シニア債の格付けを銀行子会社シニア債よりも2-4段階低く評価している。

持ち株会社と銀行子会社債格付けの違い

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・預金保険基金でTLAC債発行の必要性は低下

  適格性のあるTLACとして預金保険基金を含むことで、日本のG-SIBが新たにTLAC適格シニア債を発行する必要性は軽減されるだろう。日本の金融庁は、2019年3月31日より、銀行がリスクアセット(RWA)の2.5%相当をTLACとして算入することを認める方針だ。22年3月31日からはRWAの3.5%相当分へ引き上げられる。

  全てのバッファーを勘案すれば、銀行は22年3月31日までにRWA比21.5%相当(MUFGは22%)、レバレッジエクスポージャー比6.75%相当をTLACとする必要があるだろう。

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・三井住友FG、みずほFGのTLAC債はBofAよりスプレッド大

  日本のG-SIBである三井住友FGならびにみずほFGのTLAC適格シニア持ち株会社債のスプレッドは、米国のG-SIBであるBofA発行の比較可能な債券より大きい。 三井住友FGとみずほFGのシニア債に対するムーディーズの格付けはA1、S&PがA-で、BofAの債券に対するムーディーズとS&P、およびフィッチ・レーティングスの格付けは中央値でA-。スプレッドの違いには、日本のG-SIBの事業見通しの厳しさと資本の質が反映されているのかもしれない。

  しかし米国と異なり日本の破綻処理制度には、危機に陥る前にG-SIBの資本と流動性を支援するという選択肢がある。ただし、これらの措置が実際どのように取られるかを巡っては不透明な部分が残る。

各金融機関のスプレッド比較(OAS)

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Japan G-SIBs’ Senior Bail-In Bonds May Avoid Losses in a Crisis(抜粋)

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