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リニア談合で受注ゼネコンに逮捕者、東京都は入札指名停止-Q&A

JR東海が発注したリニア中央新幹線関連工事を巡る不正受注事件で、受注した大手ゼネコン4社のうち2社の幹部らが独占禁止法違反(不当な取引制限)の罪で逮捕された。残る2社についても、東京地検特捜部は在宅起訴する方針を固めたとの報道もある。総工費9兆円超に上るリニア計画の内容を再確認しながら今後の影響を探った。

1.受注ゼネコンへの捜査状況は

  東京地検特捜部は2日、リニア中央新幹線の工事をめぐる談合事件で、大成建設元常務・現顧問の大川孝容疑者(67)と鹿島の元土木営業本部副本部長の大沢一郎容疑者(60)を独占禁止法違反で逮捕したと発表。両容疑者は大林組と清水建設の関係者らと共謀し、ターミナル駅新設工事の受注予定業者の決定と価格見積もりなどで合意し、競争を制限したとしている。

  大成建設は2日、元常務の逮捕を受けて「嫌疑を受けている内容は独占禁止法違反に該当しないと反論、今後の捜査の過程において、当社の主張を行っていく」とのコメントを発表した。鹿島は社員逮捕について「独禁法の違反容疑で逮捕されたことは誠に遺憾」とし、「引き続き当局の捜査に全面的に協力する」とした。工事を発注したJR東海広報の依田広貴氏は取材に「今回、当社の中央新幹線の建設計画を担当している建設会社の関係者が逮捕されたことは極めて残念だ」と述べた。

2.不正受注とは

  この巨大プロジェクトについて、特捜部と公取委は昨年末から大林組、大成建設、鹿島、清水建設を調査対象とし、本社の家宅捜索や関係者への聞き取り調査を行った。4社はJR東海が発注した工事22件のうち15件をほぼ均等に受注していた。朝日新聞によると、4社は品川駅工事で受注調整をし、同駅の過去の工事実績があった清水建設と大林組を受注予定会社に決めた。名古屋駅工事では大成建設を受注予定会社に決めたが、JR東海の想定価格より希望価格が高く折り合わなかった結果、大林組JVが一部を受注した。

3.ゼネコン経営体制の変化は

  事件捜査が続く中、大林組は3月に蓮輪賢治取締役・専務執行役員が社長に昇格した。1月の社長交代発表についての記者会見の席で、白石達前社長は社長退任が工事受注の入札に関する容疑を受けたものがどうかについては明言を避けながらも「当局の捜査を受けたということは恥ずべきこと。世間を騒がせお詫びする」と謝罪した。

4.懸念される影響は

  当局による捜査状況は明らかでないが、進展次第ではプロジェクトを遅らせる可能性もある。事件の影響でゼネコン4社がリニア工事に関わることができなくなれば、トンネル工事は深刻な問題に直面すると指摘する専門家もいる。ゼネコン4社は今後、検察により会社関係者や法人が起訴される可能性があるほか、公取委による課徴金や排除措置命令を受ける公算もある。

  今回の問題を受けてゼネコン4社の受注にも影響が出始めている。東京都は5日、大成建設と鹿島の幹部逮捕を受けて、両社を都の入札に参加できなくなる指名停止処分にすると発表した。指名停止処分の期間は2カ月から最長で1年半となる可能性がある。

5.市場の反応は

  問題の表面化以降、ゼネコン4社の株価は軟調に推移。楽天証券経済研究所の土信田雅之シニアアナリストは株価への影響はあまり出ていないとした上で「なぜ今このタイミングで特捜部が動き出しているのか、不可解に思っている向きが多いのではないか。結局、大手4社が今後も関与しなければ工事完成は難しいとの見方もあり、事件の展開を見極める姿勢だ」と述べた。SBI証券のシニア・マーケットアドバイザーの雨宮京子氏は市場は冷静に反応していると分析し、その理由として「談合を否定している大成建設と鹿島の幹部らは逮捕されたが、現役の社長ではなく担当責任者のレベルであり、容疑そのものもあいまいな部分もある」と語った。

6.リニア中央新幹線とは

  正式名称は超電導リニア中央新幹線。JR東海が開発中。東京-大阪間を平均時速505キロで運行、約1時間7分で結ぶ計画。15年4月には鉄道の世界最高速度となる時速603kmを記録。ルートが確定している東京-名古屋間では南アルプスの赤石山脈などを横断するためほぼ9割がトンネルとなる見込み。まず27年に東京-名古屋を先行開業、その後45年に東京-大阪も開業する計画。2015年に着工済みだ。

  建設費は概算約9兆300億円に上る建設コストは全額JR東海が負担する。中間駅の建設を含む東京-名古屋間の建設費は約5兆4300億円になる見通し。それ以西について当初計画では、長期債務の削減などで最大8年間かけ経営体力を回復させた後に始める計画だった。しかし、JR東海は政府による低金利の約3兆円の財政投融資を活用することで、早期に大阪までの工事に着手できるようになった。国土交通省では民間借り入れとの比較で5000億円ほど金利負担が減るものと試算している。

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