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保護主義波及がリスク、輸出依存高い日本の鉄鋼業-米関税引き上げ案

  • 米国からアジア市場に鋼材流入が増えるリスクも、市況軟化の恐れ
  • 日本政府は対象国などについて詳細確認を進める-経産相

トランプ米大統領が鉄鋼とアルミニウムの輸入に追加関税を課す方針を発表した。輸出依存度の高い日本の鉄鋼業界にとっては、米国以外にも関税引き上げといった保護主義の動きが広まることが最大のリスクになるとの懸念が高まっている。

  トランプ大統領は1日(現地時間)、鉄鋼に25%、アルミに10%の追加関税をそれぞれ課す方針を表明した。大統領権限で実施できる通商拡大法232条に基づく。米商務省は鉄鋼、アルミの輸入が米国の安全保障を脅かすとして、鉄鋼については国内製鉄所の稼働率を現行の73%から80%に引き上げるために輸入制限が必要などとする調査結果をまとめていた。トランプ大統領は来週、正式に決定する見通しだ。

  トランプ大統領の表明に対して、世耕弘成経産相は2日の閣議後の記者会見で「どこが対象国となるのか詳細確認に努めたい」と述べた。「日本からの鉄鋼輸入は米国の安全保障に影響しない」として、米国側に理解を求める考えも示した。

  米国の2017年の鉄鋼製品の輸入量は約3800万トン。カナダ、ブラジル、韓国、メキシコ、ロシアが上位で、日本からの輸入は190万トンと全体に占める比率は約5%。日本鉄鋼連盟によると、自動車部品に使用される線材やレール、ラインパイプ用の鋼管など日本でしか製造できない高品質の製品が主だという。

2017年の米国向け鉄鋼製品の国別輸入量

出所:米商務省の資料から、1-10月の統計を年率換算したもの

単位:万トン

  野村証券の松本裕司シニアアナリストは同日付のリポートで、日本の米国向けの鉄鋼輸出の比率は低いことから「直接的な影響は小さい」と指摘。一方、「間接的には、米国に輸出されている韓国製品などがアジア市場に振り向けられるリスクはある」とした。その上で、日本の粗鋼生産に占める実質的な輸出比率は17年に40%に達したとして、「保護主義的な動きが広がることは業績面での潜在的なリスク要因を高めることにつながる」との見方を示した。

  鉄連の進藤孝生会長(新日鉄住金社長)も2月27日の会見で「米国に輸出されていた製品がアジアに回ってくることが一番怖い」として、鋼材需給の緩和が招く市況下落に懸念を示した。欧州連合(EU)や中国などは報復関税を打ち出す構えも見せており、「農産物などで他の国が対抗措置を取れば、『パンドラの箱』を開けるようなことになる。各国が保護主義に立った対抗措置の乱発になり得ることを憂慮する」とも述べていた。

  通商拡大法232条は、対象製品の輸入増が米国の安全保障を損なう恐れがある場合に、輸入を是正するための措置を取る権限を大統領に与えている。

  三井物産戦略研究所の北米・中南米室長の山田良平氏は、「トランプ政権の通商政策の戦略は貿易赤字の削減を目指すもの」とし、「議会で法案を通しての関税引き上げは難しいと認識しているため、政権の裁量で実施できる輸入制限措置に踏み込んでいる」と指摘。1月には通商法201条に基づき太陽光パネルと洗濯機への緊急輸入制限(セーフガード)を発動したほか、通商法301条に基づいて中国による知的財産権の侵害についても調査中だ。

  山田氏は今回の鉄鋼、アルミに関する輸入制限について「国防製品の調達に支障が生じて、安全保障が損なわれる懸念があるとの言い方」と説明。「実際に支障が生じていれば正当化する余地はあるが、『懸念』であるため他国からの世界貿易機関(WTO)への提訴を招くことは必至」とみる。

  一方、米国の雇用を守ると公約したトランプ大統領に対し、全米最大規模の労働組合である全米鉄鋼労働組合(USW)は早期の輸入制限措置の実施を迫っており、「トランプ政権側に立つと、選挙公約を実行したと示すことが重要だ」との見方を示した。

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