世界規模の魚の乱獲で食卓に忍び寄るリスク、解決策は-QuickTake

魚介類はますます世界の食卓をにぎわすようになっている。平均的な人が1年間に摂取する魚介類は20キログラムを超えており、1960年代の2倍の水準に達している。中国をはじめ発展途上国で所得が増加し、需要をけん引するにつれて、海産物はいまや人類が消費する動物性たんぱく質のほぼ5分の1を占めるようになっている。しかし、このような魚介料理の全てが海洋生物資源に大きな打撃を与えつつある。現在、人類が摂取している魚介類の半分以上が養殖だが、依然としてわれわれは海から生物を取り過ぎているのである。海洋生物資源の減少は漁業が盛んな国の経済に打撃を与え、失業につながり、一部の地域では飢餓さえもたらすリスクがある。

現状

  全世界の漁場の約90%で、持続可能な限度ぎりぎりか、またはそれを超えた捕獲が行われている。ミナミマグロなどは絶滅の恐れがある。アフリカ西部・中部の沿岸沖合での漁獲量の減少は、同地の将来的な食糧不足に関する懸念を高めている。地中海と黒海では2007年以降、漁獲量が3分の1減少している。中国と東南アジア諸国の間で領有権の主張がぶつかる南シナ海では、漁業権が紛争の火種となっている。インドネシアは、自国の領海内で違法操業した外国のトロール漁船を拿捕(だほ)し、爆破処理するようになった。漁業は英国の欧州連合(EU)離脱交渉における難題の一つとなる可能性がある。同国の水産業者は外国の船団との競争を排し、漁獲枠による制限の緩和を目指している。

背景

  19世紀には漁網を装備した帆船が米北東沿岸沖のオヒョウなど一地域の種をほとんど捕り尽くしてしまうということがあった。だが、人口増大と技術の進歩により、海洋水産資源の乱獲は地球規模の危機へと広がった。1950年代以降、ソナーのような装置を備えた大型の産業用トロール船は深海でより多くの魚を探知し捕獲できるようになり、さらに魚群の位置を特定するために飛行機と人工衛星が使用されるようにもなった。商業漁業の船団は破壊的な漁法を採用した。重いネットを海底に沈めて網の中に入った物を全てすくう底引き網漁などである。漁獲対象ではない魚類や生物、カメやイルカ、鯨などを大量に捕獲して殺し、後には砂漠化した海底が点々と残されることになる。

  現在では、一部の国は排他的経済水域(EEZ)での底引き網漁を制限または禁止している。そのような水域を超えた公海は海洋の64%を占めており、規制が及ばないため乱獲が横行する。中国などの水産国は、自国の漁業者に補助金を出し、過度の投資をしている。ある推定によると、世界の海で持続可能な形で漁獲を続ける上で必要な数の2-4倍の漁船が存在しているという。

乱獲状況

Bloomberg

データのオンラインソースはこちら  

論争

  領海内の漁業を規制するさまざまな方法の中で、いわゆる漁獲割当制度は最も効果を上げてきている。この制度は、個々の漁業従事者や地域、企業に漁獲可能量の一定部分を付与するものである。その権利を譲渡することもできるし、それを使って漁を行うこともできる。漁業関係者らは需要が高まる時期に操業し、産卵期にはペースを落とすことが奨励され、収穫物の価値を最大化し割当量の値打ちが高まることになる。このような制度は時に、所得が少なくとも一時的には減少するという不安をかき立て、水産業界からの反対に直面することがある。それでも、米国とベリーズ、チリ、デンマーク、ナミビアは、この制度を利用し乱獲状態だった漁場を回復させてきている。

  2017年半ば、国連に集まった外交官らは海洋保護区を設けるための交渉を開始することで合意した。そこでの漁業を制限または禁止して、海洋生物資源の回復を図る。ただ、その場所と執行メカニズムに関して合意することは、公海における漁獲量が特に多い国に最も政治的発言力の強い米国や中国、日本などが含まれているだけに容易ではない。

  一部の規制支持者は、養殖を拡大することが天然魚への負荷を軽減する最善の方法と主張するが、養殖そのものにも批判が向けられている。養殖場は海洋の魚類に害を及ぼす有害生物と病原体を放出する可能性がある。さらに、養殖魚は主として天然魚から作られた餌で飼育されるため、海洋生物資源に一段とストレスがかかる。養殖場から排出される廃棄物を処理する実験が進行中だが、最終的な回答ははるか沖合または内陸に場所を移し、汚水処理施設と似たようなシステムを使用して汚染物質を除去することになるのではないだろうか。

漁獲量と養殖生産量

Bloomberg

原題:Why Overfishing Puts More Than Your Dinner at Risk: QuickTake(抜粋)

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE