習近平総書記が固めた権力基盤、今後どのように使うのか-QuickTake

習近平総書記

Photographer: Qilai Shen/Bloomberg
Photographer: Qilai Shen/Bloomberg

過去数十年で最も強力な中国の指導者、習近平氏には多くの顔がある。腐敗を取り締まり、世界最大級の軍隊の改革を推し進める意志の強い人物。トランプ米大統領の誕生を受けて、自由貿易と気候変動対策を声高に擁護する経験豊富な政治家。

  中国による領有権の主張を非難する国際世論を一蹴するナショナリスト的側面。反対意見に容赦しない姿勢。共産党の影響力を拡大して労働と社会の統制を図る党員としての顔。世界2位の経済で自由な市場が果たす決定的な役割を主張する改革論者。さてどの顔が中心になるのか。そして、習主席は中国を世界一の強国である米国の真のライバルへと変貌させることに成功するのだろうか。

現状

  昨年10月に開催された5年に一度の共産党大会で、習氏は党総書記に再任された。2期目(任期5年)に踏み出しただけでなく、自らの名前を党規約に盛り込むことで2人の前任者が手に入れることができなかった名誉も手に入れた。アナリストらは、2022年に習氏が慣例を破って3期目を狙う可能性があると推測している。なぜなら、この党大会で公表された指導者の顔ぶれの中に明らかな後継者候補が存在しなかったからである。

習近平氏、豚の餌やりから国家主席へ-中国最高権力者の横顔

  習氏(64)は12年に権力の座に就いて以降、影響力を着実に強めてきた。中国の最高指導部で長年採用されてきた集団指導体制を打ち破ってきた習氏は、数多くの委員会のトップの座に就いているが、その一部は通常の職権を越えている。国際的には「一帯一路」構想がある。これは習主席肝いりのプロジェクトであり、古代のシルクロードに沿って貿易の促進とインフラの整備を行い、中国をその中心に据えながら、さらに網目状の拡大を目指すものである。

  また、軍の最高司令官として習氏は「戦争に勝つ用意」がある戦力を求めてきた。香港や台湾に対する姿勢を硬化させ、台湾に対しては中国の主権を主張している。また、習主席はアジアの係争水域でも、中国の存在感を拡大し、発言力を強化してきた。

  一方、国内では肥大化した国有企業の問題を解決するとの方針やその他の改革を通じ、債務を抱えながら減速する経済の改革を推進している。習主席が主導する反腐敗運動はすでに100万人余りを摘発して処分してきた(その中には将来の国家主席候補と見なされていた幹部も含まれている)。トランプ大統領は、習主席は北朝鮮に対して寛大であり、貿易に対して不公正であると非難しつつも、習主席を「非常に良い人物」と評している。

背景

  革命家であった習主席の両親は中華人民共和国の成立に貢献し、父親は1959年から62年まで副首相を務めた。数百万の若い中国人と同様に、習氏も毛沢東の文化大革命で農村に下放された。中国北西部で豚に餌をやり、下水を清掃し、また本(ビクトル・ユゴーからアーネスト・ヘミングウェーまで)を読みあさった7年間は屈辱的であり、また自身を大きく変えた時期だった、と習主席は回想している。

  前任者たちと比較して、習氏は公の場でも気さくで自信にあふれたカリスマ的な演説者である。習主席の妻である彭麗媛氏は歌手であり、結婚当時は習氏よりも有名だった。「中国の夢」と呼ばれる国民に対する習主席のビジョンには、2020年までに所得を倍増すること、そして49年までに「完全に開発された、豊かで強力な国」としての中国の地位を確立することが含まれる。習主席が権力を固めるにつれて、報道機関による礼賛も過熱している。「ヒマラヤにエベレストは一つしかない」と共産党系の学習時報は書いている。

論争

  支持者の主張によれば、多くの人が改革を切望しているにもかかわらず、それに抵抗する既得権者を打倒するために、そして多様な人々から構成される不安定な社会を結束させるために、中国は習主席のような強力なリーダーを必要としている。一方、習主席が困難な政策、例えば、中国の債務問題への取り組みや金融市場の自由化を本気で断行する意思があるのかどうかについて、疑問を呈する向きもある。

  確かに習氏は自由貿易について語り、17年秋には国内金融業を海外の投資家に開放する方針も明らかにしたが、それでも中国は最も保護主義的な国の一つにとどまっているとの見方だ。さらに、習主席に批判的な意見によれば、習氏の絶大な権力は大きな犠牲を伴っている。例えば、報道、インターネット、そして芸術の検閲が強化され、数千人の政治および宗教上の反対勢力が拘束されている。

  習主席の下で、中国は米国が「低強度の強制力」と呼ぶ戦術によって、南シナ海の緊張を高めたと非難されてきた。17年に37カ国で実施された意識調査によると、回答者の大半が中国に好意的な見方を抱いていたが、国際問題に関しては習氏を信頼していなかった。それでも、トランプ氏に対する信頼度よりは高かった。

原題:Xi Jinping Has Got the Power. So How Will He Use It?: QuickTake(抜粋)

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