Photographer: Alessia Pierdomenico

破綻した銀行救済の最良手段ベイルインに潜むリスク-QuickTake

各国政府は2008年に起きた金融危機のさなか、ベイルアウトによって銀行を救済するために公的資金1兆ドルを拠出した。有権者は激怒した。その後、規制機関はより適切なアプローチで大筋合意に達した。すなわち、経営難に陥った銀行をベイルアウトで救済する代わりに、債権者にベイルイン、すなわち損失の負担を強いるという方法である。

  つまり、銀行が破綻した場合は特定目的の債券の価値急減や普通株への転換があり得るという了解を得た上で、社債を投資家に売るということだ。その賭けが裏目に出て、投資先の銀行が破綻したときに投資家が資金を失うという原則に異議を唱える人は少ないだろう。しかし、実際問題として、ベイルインは政治的に厄介な問題を伴うことも確かである。なぜなら規制当局はどの債権者を犠牲にして、どの債権者を救済するかで厳しい選択を迫られるからである。しかも、抜け道がたくさんある。

現状

  欧州で生じた最近の銀行破綻は、ベイルインが意図した通りに機能しているかどうかに関する議論に火を付けた。2017年6月に、スペインで第4位の規模の金融機関、ポプラール・エスパニョール銀行が、より規模が大きい競合銀行に強制的に売却され、株主は投資した全額を失い、社債保有者は約20億ユーロ(23億ドル)の損失を負担したが、ここではベイルインの理論が有効に機能したように見えた。この事例は、欧州連合の規制機関の勝利であるとして歓迎された。なぜなら、税金に基づく公的資金は全く使用されなかったからである。しかし、投資家はこの取り決めは恣意(しい)的であり、回避可能であったと主張して、訴訟を起こそうとしている。

  それと正反対の事例として、イタリアは公的資金を使用して、国内最古の銀行であるモンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ銀行を支援している。200億ユーロも拠出して、この金融機関と2つの倒産した地方銀行の(全てではないが)ほとんどの社債保有者を救済しようとしている。このようなベイルアウトが欧州の重債務国の1つで実施され、銀行の社債を保有している一般市民の救済を図ったことから、経営難の銀行を抱える債務超過国が債務増大の悪循環に陥るのではないかという不安が再燃した。

  ただ、一部の政策ウォッチャーは、この懸念を過渡的な問題として一蹴している。なぜなら、ベイルインを容易にするために銀行は「損失吸収力」がある社債を新たに売る必要が生じているが、多くの銀行はまだそのような社債を十分に積み上げていないからである。そのような証券は、過去2年間に米国と欧州で5000億ドル以上売られている。

ベイルインの機能

Bloomberg

背景

  経営難に陥った銀行は、為政者にジレンマを突き付ける。すなわち介入を手控えれば、破綻が雪だるま式に増大して、経済は大混乱に陥り、国全体が崖っぷちに追いやられる恐れがある。救済に乗り出せば、公的債務が急増し、見境のない借金はしっぺ返しを食らう。ベイルインの背景にある基本的な考え方は、破綻処理のプロセスを事前にパッケージ化して迅速化し、そのような処理を週末の間に実行できるようにして金融への悪影響を防ぐというものである。そして、週が明けた月曜の朝には、破たんの危機にあった銀行が、かつての債権者をオーナーとする存続可能な機関となっているという筋書きである。そのためには、現金自動支払機(ATM)に十分な現金を備蓄し、取引先の要求に応じられるだけの豊富な資金も用意しておく必要がある。

  このようなベイルインプロセスは、可能な限り預金者を保護するものであり、プロセスの中でどの投資家が資金を失うことになるかを事前に明らかにする。損失を処理するために、まず株式が清算される。次に、劣後債とある種の優先債が減額の対象となり、あるいは新しい株式に変換される。クレディ・スイス・グループの経営陣が2010年に「ベイルイン」(bail-in)という用語を作り出したのだが、今ではこの言葉が世界中の銀行法の中に正式に記載されている。それ以来、この用語は経営難の銀行の損失を債権者間で分担する広範な事例を網羅するものとして使用されるようになっている。

論争

  規制機関の声明によると、ベイルインは経営危機にある銀行を管理する方法として徐々に受け入れられおり、債権者にとって「大きすぎてつぶせない」金融機関の問題を緩和する目的で金融危機後に考案されたさまざまな手段の一部となっている。ベイルインは債権者に対して銀行のリスク管理を監視するように促すインセンティブを生み出す。また、ベイルアウトの慣行が提供している暗黙の保証を排除することによって、中央政府と銀行の間のなれ合いの関係を徐々に解消することにも役立つ。

  一方、批判者の主張によると、イタリアの事例を見れば、ルールを避けて通る方法が多すぎること、そして債権者にベイルインを適用するという選択肢があっても政府が再び公的資金を利用するのを止められないことは明らかだという。米連邦議会の共和党議員は、米国の銀行法の新しいベイルイン規定を廃止しようと試みている。その理由は、そのようなルールには規制当局が公的資金(税金)を使用するのを防ぐだけの十分な効力がないからだと主張している。一部の政策立案者によれば、ベイルアウトを阻止する唯一の方法は、はるかに大きな自己資本バッファーを保持することを銀行に義務付けることである。そして、ベイルインの理念の真価は、世界規模の大手銀行が破綻しても政治家たちが平然と傍観しているという時に至って、初めて証明されることになるだろうと主張している。

原題:The Best Antidote to Bank Bailouts Has Its Own Flaws: QuickTake(抜粋)

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