政府は黒田総裁を再任、副総裁に雨宮氏と若田部氏

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  • 雨宮氏は黒田総裁の側近、若田部氏は金融緩和に積極的なリフレ派
  • 現行の金融緩和を継続する布陣-黒田総裁は任期途中で交代の見方も

黒田日銀総裁

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

政府は16日、日本銀行の黒田東彦総裁を再任させる人事案を国会に提示した。日銀総裁を2期連続で務めるのは第20代の山際正道総裁(在任1956-64年)以来54年ぶり。副総裁には雨宮正佳日銀理事、若田部昌澄早稲田大学教授を充てる案も示された。

  衆参両院の議院運営委員会理事会が人事案についての資料を配布した。任期は総裁が4月9日、副総裁は3月20日からで、いずれも5年間。正副総裁の任命には国会の同意が必要だが、衆参両院とも与党が過半数を確保している。

  黒田総裁は午前の衆院財務金融委員会で、再任報道を受けた今後の金融政策の運営について「引き続き強力な金融緩和を続けていく」と答弁。同委員会後、政府による再任案提示についての記者団の質問にはコメントを控えた。

黒田東彦日銀総裁

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  中曽宏副総裁の後任となる雨宮氏は2013年4月の異次元緩和の導入以降、黒田総裁の側近として現行の金融緩和路線を支えてきた。岩田規久男副総裁の後任となる若田部氏は同副総裁と同じく経済政策として金融政策を重視するリフレ派の学者。黒田総裁の続投に加え両氏が副総裁に任命されれば、現行路線は当面継続するとの見方が強い。

  前審議委員の木内登英野村総研エグゼクティブ・エコノミストは電子メールで、今回の人事により「現在の政策はほとんど影響を受けないだろう」と分析。リフレ派の若田部氏が副総裁に起用されたことについても、日銀法で副総裁は総裁を補佐することを要請されており、政策論にかなりたけた学者でない限り「総裁と異なる意見を強く主張し、政策に大きな影響力を行使することは困難」の見方を示した。

健康問題も注目材料に

  黒田総裁は13年4月に2年をめどに2%の物価目標を達成すると宣言し、異次元緩和を導入したが、5年たった今も道半ば。物価が持続的に下落するデフレに歯止めはかかったものの、昨年12月の消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は前年比0.9%上昇にとどまる。達成時期は6回も先送りされ、政府によるデフレ脱却宣言には至っていない。

  マイナス金利や長短金利操作などの施策を相次ぎ導入したが、エネルギー価格を除くと物価上昇率は引き続き低水準にとどまっており、金融政策の限界が指摘されている。国内総生産(GDP)に匹敵する500兆円を超える規模に膨らんだ日銀の資産縮小の影響を懸念し、出口戦略の早期着手を求める声も根強い。

  現在73歳で次の任期満了時に78歳になる黒田総裁の健康問題も今後の注目材料の一つ。バークレイズ証券の山川哲史チーフエコノミストは13日付のリポートで、日銀総裁の続投は「異次元緩和下とはいえ異例」と指摘。黒田総裁が「2期目の任期途中で交代するケースも可能性として考えておく必要があるだろう」としている。

  円相場は人事が公表された後、円高方向に振れており、正午現在1ドル=106円台前半で推移している。みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケットエコノミストは電子メールで、「なり振り構わないリフレ志向の強い本田悦朗駐スイス大使を期待していた向きの巻き戻し」と分析した。

雨宮副総裁

  雨宮氏は東京都出身の62歳。1979年に東大経済学部を卒業後、日銀に入行し、企画局長を経て2010年に理事に就任した。金融政策の企画・立案を行う企画局が長く、「ミスターBOJ(日銀)」とも呼ばれる。円高論者だった故速水優氏、コミュニケーション上手だった福井俊彦氏、リーマンショックの対応に追われた白川方明氏、異次元緩和の黒田氏と、個性の異なる歴代総裁に仕えてきた。

雨宮正佳日銀理事

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  関係者によると、政策担当理事から外れた大阪支店長時代の12年末、副総裁ポストを打診されたが、中曽宏現副総裁の方がふさわしいとして固辞したという。安倍政権の下で総裁に就任した黒田氏に呼び戻され、13年3月に政策担当理事に復帰。量的・質的緩和の設計を主導した。同年6月に再任され、14年10月の追加緩和、16年1月のマイナス金利政策、同年9月の長短金利操作でも中心的役割を担った。

若田部副総裁

  若田部氏は53歳。1987年に早稲田大学政治経済学部を卒業後、同大学院に進学し、2002年にカナダのトロント大学経済学大学院で博士を取得した。昨年12月のインタビューでは、消費税10%への引き上げが予定される19年10月までに2%の物価上昇目標達成に十分な物価モメンタム(勢い)が形成される可能性は低いと指摘した。その上で、「増税が前提となると、やはり追加緩和が必要ではないか」と述べた。

  具体的には、年間80兆円をめどとする長期国債買い入れ額(保有残高の年間増加額)の90兆円への引き上げや物価上昇目標の2%から3%への変更を挙げた。政府・日銀の共同声明を改定し、20年度までの名目GDP(国内総生産)600兆円目標を採用することも一つの選択肢としている。

(若田部氏の経歴やエコノミストコメントを追加します.)
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