【米経済ウオッチ】近代資本主義を襲う異次元の「最終バブル」崩壊

  • ゼロ金利・量的緩和の長期化で異次元バブル膨張
  • アダム・スミスが唱えた「神の見えざる手」が厳しく制裁へ

トランプ大統領

Photographer: Mike Theiler/UPI

トランプ第45代大統領は今世紀最悪のバブル崩壊に見舞われるリスクが高くなってきたようだ。歴代大統領の歴史を振り返ると、共和党の大統領はバブル崩壊と景気後退に見舞われる確率が民主党の大統領に比べずっと高い。

  ジョージ・W・ブッシュ第43代大統領は就任早々にIT株式バブル崩壊による景気後退に見舞われた上、住宅・金融バブル崩壊によるグレートリセッションの最中に2期目の任期切れを迎え、失意のうちにホワイトハウスを去っていった。

  極めつきは1929年に就任したハーバート・フーバー第31代大統領だ。就任の年にニューヨーク株式市場の大暴落が直撃、その後退任するまで大恐慌が続いた。「トランプ相場」と呼ばれるトランプ大統領就任に伴う株高は、フーバー大統領の就任後の株高と非常によく似ている。

  今年1月26日に株価がピークを付けた後、9営業日の下げとしては、1929年9月3日にピークアウトした当時よりも急激だ。下記のチャートはダウ工業株30種平均が29年9月3日に記録したピークと同指数が今年1月26日につけたピークを重ねたものである。ピークを付けた後の切り込みは今回の方が急激だ。

  1929年当時は株価のピークアウトと同時に景気縮小期(赤の縦じま)に入り、大恐慌へと沈んでいく。株価は同年10月24日の「暗黒の木曜日」などを経て、下げを加速した。

  独立戦争、南北戦争、さらに29年の株価暴落とそれに続く大恐慌と、米国はおよそ70年の周期で大きな危機を克服して、これまで発展してきた。大恐慌は大英帝国の力が衰え、覇権国交代期の不安定な状況の下で発生している。米国はまだ、覇権国としての意識も能力も持っていなかった。

  その後、米国はニューディール(新規まき直し策)の成功と第2次世界大戦で勝利を収めて、覇権国に成長。パクスアメリカーナ、つまり米国の覇権による世界の平和を謳歌(おうか)する。しかし、終戦から70余年経過して、米国型資本主義が限界に近づく中で、再び覇権国交代の時期に差し掛かってきた。だが、新たな覇権国がまだ十分に育っていないところは、大恐慌の時とよく似ている。

  こうして覇権国交代期が接近する中で、巨大バブルが生じていることも1929年当時と、鏡像を描いているようだ。ただし、大きく異なる点がある。それは、大恐慌は米国資本主義経済が大きく飛躍する直前の準備期間だったことだ。一方、これから始まる覇権国の交代は、米国資本主義が衰退に向かう中で起こる。つまり、米国の建国以来230年余にわたり発展してきた米国型近代資本主義の衰退期で生じた「最終バブル」といっても言い過ぎではないだろう。

  さらに、米金融政策当局がゼロ金利と量的緩和という異例の金融政策を長期間続け、いまだに緩和政策をゆっくりと解除している状況で、株式はじめ金融市場は巨大な「異次元バブル」を醸成してしまった。

  これは異次元の金融政策が、市場の見えざる手による調整を押さえ込んできたためで、野放図になった強欲資本主義は極限まで膨張してきたわけだ。

  しかし、いずれ市場の見えざる手が働く。しかも、これまで押さえ込まれていたことに対する、反作用が加わる。金融政策が市場の見えざる手を弱めてきたツケは、異次元へと膨らんでいくことになりそうだ。このところの金融市場の乱高下はその予兆にすぎない。

  アダム・スミスが唱えた「神の見えざる手」は、政策当局ならびにその対話と称する市場操作に追従してきた投資家の行き過ぎた行為に対して、厳しい制裁を加えることを決して忘れるべきではないだろう。

(【米経済ウオッチ】の内容は記者個人の見解です) 

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