Photographer: Courtesy: Federal Reserve

【FRBウオッチ】1月の雇用者原数は309万人減、緊急利下げ視野に

  • 市場は修羅万障を手掛かりにFOMCの先を行く
  • 「市場の見えざる手」が当局に変わって投機の行き過ぎに制裁か

労働省が発表した1月の非農業雇用者数は季節調整済みで20万人の増加とされたが、季節調整前の原数値では308万5000人の減少だった。季節調整値は原数から328万5000人も加算されたわけだ。1月は一連の年末セールで雇われた一時雇用者が一斉に解雇される月に当たり、年間で最も解雇者が増える。

  だが、原数値でも雇用が300万人を超えるマイナスを記録するのは極めて異例で、過去2度しかない。最悪だったのは2009年1月の369万人減で、グレートリセッション(大不況)さなかに記録された。この時は季節調整後で78万7000人減とされていた。原数値からの加算分は290万3000人で、今年1月より38万2000人も少ない。

  あと一度はグレートリセッション突入から2カ月目に当たる08年1月の302万9000人減だった。この時は今年1月よりマイナス幅は小さい。それにもかかわらず、季節調整値では8000人増とマイナス転落寸前だった。加算分は303万7000人で、今年1月より24万8000人少ない。当時の季節調整係数を適用すれば、今年1月の季節調整値は大幅なマイナスに落ち込む。

  こうした複雑怪奇な統計が発表されるなかで、1月の雇用統計が発表された2日以降の市場の反応は見事というほかない。債券市場で季節調整後の雇用者数の堅調な増加を手掛かりに、売りが集中し、10年物米国債利回りは一時2.85%まで急上昇。市場金利の上昇に驚いた株式市場で売りが殺到して、ダウ工業株30種平均は666ドルの大幅安となった。ダウ平均は5日にさらに1000ドル以上も続落した。

  結果的に、株式市場は1月の雇用者が原数で300万人以上減少したことに象徴される統計の裏面に反応したことになる。市場金利は、連邦公開市場委員会(FOMC)が景気拡張期の終盤になってもなお漸進的に緩和の解除を進めていくという、のんびりした姿勢をとり続けているのをよそに、引き締め姿勢を強めてきた。市場は悠長な金融政策当局が本来なら取るべき政策を代行しているわけだ。

  さらに、株式市場の大幅安に伴い、景気先行きへの不安が台頭、企業設備投資減退、個人消費圧迫など景気引き締め効果が加わる。その一方で、長期金利は素早く緩和方向を示唆し始めた。市場金利はFOMCに比べはるか先に進んでいるようだ。  

  前回の景気拡張期ではFOMCは市場とほぼ一致して利上げを実行してきたが、今回は大幅に出遅れている。これはイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)第15代議長ら執行部が、前回の景気拡張期に「Measured(慎重な)」ペースと銘打って会合毎に0.25ポイントずつ規則正しく利上げしたことがバブルの膨張から破裂を招いたという反省に立って、極めて緩やかかつ不規則な小幅利上げを延々と続けてきたことが背景にある。

  アダム・スミスが唱えた「市場の見えざる手」がFOMCの優柔不断な行動に対して、厳しい鉄ついを加えることになりそうだ。「市場の見えざる手は」最終的に経済の均衡をもたらすが、行き過ぎた投機には厳しい制裁を加える。

  市場が代行する金融引き締めにより資産バブル崩壊から景気縮小期に突入、FOMCは緊急大幅利下げに追い込まれるという歴史が繰り返されようとしている。01年1月3日、08年1月21 日に招集された緊急FOMCを想起すべき時が再び近づいてきたようだ。

(【米経済ウオッチ】の内容は記者個人の見解です) 

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