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100年に一度の転換期、トヨタはカイゼン強化-200人部署新設

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  • 経営環境の激変に備え、「カイゼンマン」の友山副社長が陣頭指揮
  • トヨタ生産方式を開発や販売現場にも徹底、戦闘力上げる-友山氏

自動運転や電動化など新技術の台頭で自動車業界が転換期にあるなか、トヨタ自動車は継続的な業務改善で競争力を高める「トヨタ生産方式」(TPS)を強化する。創業以来同社の成長の原動力となってきたTPSを統括する部署を新設して生産部門以外の営業や技術開発などを含めて全社的に展開し、競争力の底上げを図る。

  トヨタでは、販売店の業務改善や社員教育などを担ってきた3つの部署が統合した「TPS本部」が1月から始動した。本部長として200人弱のメンバーを率いる友山茂樹副社長はインタビューで新部署の狙いについて、「TPSをもう一度生産分野にきちっと展開し、競争力を上げていく。同時に技術開発から製造、販売、サービスまで一貫してビジネスの戦闘力を上げる」ことだと述べた。

友山茂樹副社長

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  友山氏は昨年まで専務としてITやモータースポーツなどを担当。かつてはTPSの本流である生産調査部門に所属して上司らの厳しい指導を受けながら「TPSを修業」し、現在の豊田章男社長と国内ディーラーの業務効率化に取り組んだこともあり、豊田社長から「カイゼンマン」と評されているという。

  トヨタは昨年後半から年明けにかけてEVを含む電動車の長期計画やアマゾンやウーバー、アップルなどIT業界の巨人との連携などを相次いで発表し、未知の領域に向けてかじを切った。今年を闘いの1年と位置づける豊田社長は、「 自動車業界が100年に一度の大変革期を迎える中、何が正解か、何をすれば勝ち組なのかわからない状態で我々は闘っている」と新年の賀詞交歓会で記者らに話した。

  TPSは、徹底的な無駄の排除と効率性追求を柱とするトヨタ独自の生産システムで「かんばん方式」、「ジャスト・イン・タイム」などの考え方でも知られる。それにより低価格で品質の高い車づくりが可能となり、トヨタの競争力を支えてきた。これまでも生産現場以外の分野でTPSを用いた業務改善は行われてきたが、それを全てのプロセスにおいて再徹底し全社一丸となって取り組むという。

  東海東京調査センターの杉浦誠司アナリストは、TPS本部の設立は目立たないが非常に重要で昨年行われた組織改正の目玉の一つと指摘。TPS本部には生産調査部と流通情報改善部があり、生産分野だけでなく販売分野も一緒に組み込まれている点は「彼らのソフトパワーの強みを生かそうというあらわれ」で、新技術の開発に対応しながらも「原点回帰のようなことが行われている」と話す。

  車の電動化や自動運転、カーシェアリングの台頭などでエンジン車を生産して一人一人の顧客に販売してきた従来の自動車メーカーのビジネスモデルが揺らぐなか、新技術に向けた研究開発費は増加している。今回の組織改正は、業務の進め方を抜本的に見直し、「TPSを会社の経営の根幹に改めてかかげる」意味合いがあると友山氏は説明する。

  友山氏はこうしたなか、「TPSを取ってしまったら、車どころかトヨタ自体がコモディティ化してしまう」とし、「新しいビジネスモデルをつくるときに、トヨタの強みを発揮しようと思うと、やはりTPS的な考え方を入れる必要がある」と話した。

  SBI証券の遠藤功治アナリストは、米国で自動車市場の伸びが頭打ちとなっている中、「利益が上がる地域はなくなっており、トヨタの営業利益率は低下している」と指摘。そうした状況でTPS強化に努めるのは「車づくりにかかわる足元の問題を見直すということだろう」と電話取材で指摘した。

  トヨタは6日に第3四半期(2017年10ー12月)の決算発表を予定。通期の営業利益は前期比0.3%増の2兆円と2年ぶりの増益を見込む。ブルームバーグが集計したアナリスト22人の予想平均値は2兆1116億円で会社側の予想を上回っている。5日のトヨタ株は前営業日比下落で取引を開始し、一時1.6%安の7502円まで値を下げた。
  
  

(9、10段落目にアナリストコメントと株価情報を加えました.)
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