580億円消失の責任、業者規制と政府監督を問い直す声-仮想通貨

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  • 「投資家・利用者保護に欠けていると言わざるを得ない」-片山氏
  • 金融庁はコインチェックに立ち入り検査、他業者に報告命令も

The Japanese name of cryptocurrency exchange Coincheck Inc. is displayed on a sign outside the company's headquarters in Tokyo, Japan.

Photographer: Akio Kon/Bloomberg
Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  仮想通貨取引所を政府が登録制にして世界に注目された法改正からわずか10カ月。取引所大手コインチェックで580億円相当が消失したことで、技術革新で先を行く業者の自主規制と政府の監督の在り方が問い直されている。

  「この種の基本知識、常識に欠けている感じはする」--仮想通貨「NEM(ネム)」消失後の1月29日、麻生太郎金融相は国会答弁でコインチェックのセキュリティーの甘さを指摘した。同社の和田晃一良社長は会見で、本来はオフラインの「コールドウォレット」でネムを管理すべきところ対応が遅れていたなどセキュリティーに不備があったと認めており、麻生氏は、業者のシステム管理体制の強化が必要だとの見解を示した。

  金融庁は、2014年に取引所「マウントゴックス」で仮想通貨ビットコインが消失して経営破たんして以来、利用者保護とイノベーション促進のバランスがとれる制度を慎重に検討してきた。昨年4月には、改正資金決済法により世界で初めて仮想通貨取引所を登録制にし、利用者の保護体制や分別管理体制などが適切であれば、業者として登録し監督する体制となった。

  中国や韓国など仮想通貨取扱高の大きかった国が相次いで取引所の規制強化に乗り出す中、日本が産業育成の姿勢を示す形となった背景について、14年当時から業界や政府に働き掛けてきた元自民党IT戦略特命委員会の福田峰之氏は、法律でがんじがらめにするよりも自主規制のルール作りを進め仮想通貨の起業家が日本で活動しやすい環境を目指したという。

  自民党政調会長代理の片山さつき氏は、「初めてのことでどこまで規制すべきか分からなかったのだろう」と金融庁に一定の理解を示しつつ、「こんなに簡単にシステムへの侵入を許してしまうのは、投資家保護、消費者保護に欠けていると言わざるを得ない」と苦言を呈した。ネムの消失は不正アクセスにより生じており、26万人が影響を受けた。

「手を打つ必要ある」

  米連邦捜査局(FBI)の元分析官で、現在は仮想通貨に関わるコンサルタントをするジャレット・ポライト氏は、「ハッキング事件が一つ起きるたびに、業界の進歩は6カ月分後戻りする」と述べた。その上で、仮想通貨の熱心な利用者は中央集権的な管理を望まないが、こうした事件は避けるべきだとし「何か手を打つ必要がある」と強調した。

  仮想通貨技術の革新スピードが速く、規制が追い付いていない面もある。投資会社ジェネシス・グローバル・トレーディングのマイケル・モロー最高経営責任者(CEO)は、「セキュリティー面では民間企業や取引所が政府に先行しているが、この状態では今後の発展が望めない」と指摘した。

  大和総研金融調査部の矢作大祐研究員は、今回のハッキングを受け「規制強化の流れはまちがいなく起きる」と述べた。各国が規制を強める中、例外でいる状態は好ましくないとの見解を示し、「規制により安全安心な取引ができるようになるのであれば、産業にとってもポジティブ」と強化のメリットを強調した。

みなし業者

  コインチェックは、金融庁の仮想通貨取引所への登録申請をして認可を待ちながら事業を続ける「みなし仮想通貨交換業者」に位置付けられている。みなし業者の条件は、昨年4月時点で営業しており同9月末までに申請をしていることで、登録業者と同じ条件で営業できる。現在、登録業者、みなし業者ともに16社。

  自民党の片山氏は、登録業者としての適格性が認められていないみなし業者について、自社が登録されていないと顧客に知らせる義務もなく、広告の禁止規定もないことを疑問視。「コインチェックが登録されていなかった理由も洗い出す必要がある」との認識を示した。

  匿名を条件に語った政府関係者は、みなし業者でいられる期限がないことを問題視。登録業者が厳しい審査を受け、相応のセキュリティーや人材投資をしているのに、みなし業者が投資を怠り、派手なテレビコマーシャルで業界トップになったのでは、登録業者から文句が出てもおかしくないと語った。

  金融庁は2日、コインチェックに対する立ち入り検査に着手するとともに、みなし業者を含めた他の仮想通貨交換業者に、システムリスク管理体制に関する報告を命令した。コインチェックには既に、個客への適切な対応、経営管理体制の強化と責任所在の明確化、実効性あるリスク管理体制の構築と再発防止策などを業務改善命令として出しており、これらすべてが不十分だったとの見解を示している。今後、規制を見直す予定はないものの、みなし業者を含め迅速で深度のある審査に努めていくとしている。
 

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