奇妙な風貌、それでも日産自「クロスカブリオレ」が愛され続ける理由

  • 発売当初は業界誌が酷評、生産中止から4年経っても中古価格は堅調
  • ソーシャルメディアに載せた途端に売れてしまった-ミリカン氏

最近の自動車業界のトレンドは大きな車体、速さ、環境への優しさという3つの区分のどれかに大抵当てはまる。4つ目にあった本当に奇妙な車という区分は2014年にほぼ消滅してしまった。

  それは日産自動車が、21世紀で間違いなく最も奇妙な車「ムラーノ クロスカブリオレ」の生産を終了した年だ。スポーツタイプ多目的車(SUV)の車体にコンバーティブルスポーツカーを融合させたクロスカブリオレは車体が大きく、重量があり、車高が高いが、独フォルクスワーゲン(VW)の「ビートル」よりも荷物スペースは狭いという代物だった。2ドアでスポーティーな印象を与えるものの、無段変速(CVT)のため高速で振動しやすく、コーナリングでは安定性を欠いた。

  「ドライバーはこの車を嫌うだろう」。自動車業界誌のカー・アンド・ドライバーは半年ごとのレビューで手厳しい見方を示した。価格の約4万5000ドル(現在のレートで約490万円)も買い手を遠ざける要因と評価は低かった。
         

「クロスカブリオレ」は最上級グレードのみの設定。価格は4万4540ドルで標準的な「ムラーノ」よりも11%高かった。

写真:マーク・エリアス

  満を持して発売した製品の不発という点で、クロスカブリオレはコカ・コーラの「ニューコーク」やゴープロのドローン(小型無線機)に少なくとも肩を並べるとみる業界関係者もいる。それでもさまざまな年齢層のドライバーの中には、弱小スポーツチームや拾われたペットに対して抱くような愛情をこの奇妙な車に注ぐ人もいる。

蓼食う虫も好き好き

  ケリー・ブルー・ブックの業界予測担当マネジャー、ティム・フレミング氏は「何か奇妙なもの、何か違うものを探し求めている人は常にいる」と述べた。蓼(たで)食う虫も好き好きで、説明のしようがない。

  クロスカブリオレは日本では発売されなかったが、この不思議な状況から、日本の組み立てラインからクロスカブリオレが現れてきたとしてもサプライズにはならないだろう。生産終了から4年、この中古車は引っ張りだこだ。カーグルーズ・ドットコムによると、14年モデルは定価の約3分の2で現在取引されており、同時期に生産された自動車の平均43%をはるかに上回る。

  この記事の執筆時点でカーズ・ドットコムには74台のクロスカブリオレが掲載されており、販売価格の中央値は2万5000ドルだった。ボディーカラーがチェリーのクロスカブリオレはムラーノの新車よりも高いものもあった。
          
         

Fun Factor

A big Nissan SUV styled like a sports car still commands a premium on used-car lots.

Source: CarGurus Inc.

  どうしてこうなったのかは、その希少性が一因だ。ショーン・ミリカン氏はカリフォルニア州ローズビルで経営する日産自ディーラー「フューチャー・ニッサン」でクロスカブリオレを3台販売した。「新車としての売れ行きは良くなかったが、中古車を1台仕入れ、ソーシャルメディアに載せたら途端に売れてしまった」と説明。「あとの2台はネバダ州リノ在住のカップルが購入したが、『また新たに仕入れたら知らせてほしい』と言われた」という。

  このカップルは灼熱(しゃくねつ)のネバダでクロスカブリオレを帆を開けて乗るのを愛し、高い車高からの見晴らしの良さ、四輪駆動で砂嵐の中を駆け抜けることに喜びを感じている。そして彼らにとってはこれ以上の楽しみはない。

インスタグラムへのリンク

  クロスカブリオレが、自動車業界を支配する残酷なルールの例外であることは間違いないだろう。自動車メーカーはわずかな調整での勝ち抜き競争に安住してしまい、勇敢な戦略が新たな道を切り開く可能性がある向こう見ずな冒険の日々を忘れてしまった。フレミング氏は「最近は何か違ったことをしようとするインセンティブがほとんどない」と述べた。

  これは賢明で効率の良いビジネスだが、自動車の持つ楽しさが過小評価されるべきではない。誰もエコノミストに設計された玩具や財務部門が決めたスタイルを望んではいないだろう。そしてここにクロスカブリオレに注がれる愛情の秘密の全てがある。非合理的な商品の購入ほど喜びを感じさせてくれることはあまりない。ある製品にぽんと2万5000ドル余りを出す人は誰でも、心から満足することを望んでいる。

「計算されたギャンブル」

  ボストン拠点のコンサルティング企業、カルチャー・オブ・プロフィットのエコノミスト、ラフィ・モハメド氏は「百人百様の価値観がある」と述べ、消費者は商品購入の際に客観と主観の両視点で検討するが自動車に関しては主観に影響されやすいと語った。 

日産ジューク

ソース:日産自

  日産自は13年にクロスカブリオレの価格を6%引き下げて4万1995ドルにしたが、その1年後に生産を終了した。 それでも日産自はクロスカブリオレを失敗だったとは考えていない。商品企画担当バイスプレジデントのマイケル・バンス氏は、女性とベビーブーマーにはかなり好評だったと述べたが、それこそ肝心な部分であり、日産自にとってこれは「計算されたギャンブル」だ。オリジナルのムラーノや「ジューク」など一部のベストセラーカーは発売当初に酷評されたと振り返ったバンス氏は「全ての自動車が全ての人のためでなくても、それはそれでかまわない」と語った。
    
原題:Weird and Ugly, Nissan’s CrossCabriolet Is Still in High Demand(抜粋)

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