黒田総裁の出口論封印に耳貸さぬ海外勢、円スワップ金利内外差が示唆

  • 海外勢は米欧正常化を背景に「次は日銀」と考えがち-メリル日本証
  • 黒田総裁があれだけ説明したのに海外勢に響かず-パインブリッジ

Japanese yen notes are arranged for a photograph in Tokyo,Japan.

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

日本銀行の黒田東彦総裁は先週、海外を中心に高まっていた金融緩和縮小への思惑の火消しに動いたが、大きな効果はなかったようだ。こうしたことは円スワップ金利の国内と海外での格差から垣間見え、円高の一因となっている可能性もある。

  海外勢が金利スワップ取引決済に利用する世界最大のロンドンの清算機関(LCH)が提示する20年物の円スワップ金利は、昨年11月の黒田総裁による金融緩和の副作用に関する「リバーサル・レート」への言及や今月9日の国債買い入れオペ減額を受けて大きく上昇し、国内勢が使う日本の清算機関(JSCC)の清算値との差が急拡大した。黒田総裁は23日の記者会見で早期の出口論を明確に否定したが、格差は足元で高止まりしている。

  メリルリンチ日本証券の大崎秀一チーフ金利ストラテジストは「海外勢は米欧の正常化を背景に『次は日銀』と考えがちで、もしもの金利上昇に対して保険を掛けている」と指摘。「国内勢は顧客に対する円建ての支払いを抱え、一定規模の円債を買わなくてはならないし、現物債の需給面に注目しがちだ。これが円スワップ金利の内外格差につながっている」とみている。

  金利スワップ取引は、金利リスクを回避するためなどに利用される金融派生商品。現物の日本国債を売買せずに相当規模の元本に対する円金利だけの動きに賭けたい場合にも使われる。ロンドンの清算機関でのスワップ金利が高止まりしているのは、海外勢が日銀による金融緩和の縮小が近いと依然としてみていると解釈できる。

  黒田総裁は記者会見で、2%の物価安定の目標の実現までにはなお距離があることを踏まえると、「出口を検討する局面には至っていない」と言明。予想物価上昇率の記述変更で「直ちに金利の調整が必要になるとは全く考えていない」とも述べたが、為替市場は予想物価上昇率の現状判断の引き上げを手掛かりに円買いで反応。トランプ政権からのドル安歓迎発言も加わり、円相場は1ドル=108円台と約4カ月半ぶりの高値を付けた。

  パインブリッジ・インベストメンツ債券運用部の松川忠部長は「黒田総裁があれだけ説明したのに為替市場は無視しており、海外勢には響かなかったようだ」と指摘。海外勢は「金融正常化をやらないというのは短期的な話で、欧州中央銀行(ECB)と同様、日銀も『いずれはやる』という中期的な視点を重視している」と言う。

  三菱UFJモルガン・スタンレー証券の稲留克俊シニア債券ストラテジストは、海外勢は「日本の政治・財政面や米欧に追随する形での金融引き締めリスクへの懸念が強い」と分析。次期日銀総裁人事や新たな財政健全化目標など、債券市場で思惑を誘発し得る国内イベントが数多く控えていると指摘した。

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