「私のことではないが」後継者の資質語る黒田総裁、正常化観測は一蹴

  • 内閣が決めれば辞退しないという意味か、と東海東京調査の武藤氏
  • 3月会合も正常化議論は時期尚早のスタンス維持とモルガン山口氏

「グローバルな視点と実践的な能力と理論的な分析を兼ね備えていることが重要なのではないか」--。日本銀行の黒田東彦総裁は「これは私について言っているわけではありません」と前置きしつつも、後継問題に市場の関心が集まるこの時期にあえて次期総裁の資質に言及した。

  黒田総裁は4月の任期満了まで残り2回となった23日の定例会見で、総裁人事は「国会の同意を得て内閣が決めること」「何か申し上げるのは僭越(せんえつ)」と述べる一方で、その資質については「一般的に現在の中央銀行の総裁はそういったことが必要だ」と語った。

黒田東彦日銀総裁

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  15-17日にエコノミスト43人を対象に調査したブルームバーグ調査では、黒田総裁が本命視されており、退任した場合の為替への影響について24人のうち23人が「円高になる」と回答。株価についても22人全員が「株価は下がる」との見方を示した。

  東海東京調査センターの武藤弘明チーフエコノミストは会見後のリポートで、同じ人事の質問を受けた昨年12月の前回定例会見の時以上に、黒田総裁の「表情は緩んでいたように見受けられる」と指摘。「内閣が決めること」という言葉の裏に、「内閣が決めれば自分は辞退しないという意味が暗に隠れているともとれ、大方の予想通り早晩、再任のアナウンスがなされるのではないか」と予想する。

  市場は「出口」を匂わせるような日銀の微妙な動きにも過敏に反応しているが、市場との対話をお家芸とする黒田総裁が再任されれば、「そのあたりには最大限の配慮を示すのではないか」と武藤氏はみる。

正常化観測を沈静化

  この日の会見では、9日の金融市場調節(オペレーション)で超長期債の買い入れを減額したことをきっかけに浮上した早期正常化観測を落ち着かせる発言に終始した。2%の物価安定の目標の実現までにはなお距離があるとし、「出口のタイミングやその際の対応を検討する局面には至っていない」と言明。オペについても「先行きの政策スタンスを示すことはない」と述べた。

  昨年12月の金融政策決定会合の「主な意見」では、同10月会合に続き指数連動型投資信託(ETF)買い入れについて、政策効果と副作用を「あらゆる角度から点検すべきだ」との意見が出た。黒田総裁は、株式市場で過度な期待の強気化は観察されておらず、企業統治の面でも大きな問題になっていないとして、「現時点でETF買い入れを見直す必要はない」とも語った。

  主な意見では、経済・物価情勢の改善が続くと見込まれる場合は「金利水準の調整の要否を検討することが必要になる可能性もあるのではないか」との発言が出たが、黒田総裁は「合議体なのでいろいろな議論が出ることは非常に自然なこと」としながらも、「ごく一部の議論であった」と一蹴した。

  展望リポートで予想物価上昇率の判断を引き上げたことを受けて、金融政策決定会合の直後に円高が進行したことについても「直ちにイールドカーブコントロールの金利について何か調整をする必要があるとは全く考えていない」と語った。

  モルガン・スタンレーMUFG証券の山口毅エコノミストは会合後のリポートで、春闘が決着する前に円高が進むと、製造業を中心に賃上げの結果に悪影響が及ぶ可能性があることから、次回3月会合でも「日銀は政策正常化の議論は時期尚早とのスタンスを維持する」と予想している。

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