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日銀:金融政策は現状維持-出口検討の局面ではないと黒田総裁

更新日時
  • 物価見通しは据え置き、下振れリスク大きく、強力な金融緩和進める
  • 予想物価上昇率の記述変更で一時円高も、総裁発言後に円安に
黒田総裁

黒田総裁

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
黒田総裁
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

日本銀行は23日の金融政策決定会合で、長短金利操作付き量的・質的金融緩和の枠組みによる金融調節方針の維持を8対1の賛成多数で決定した。2017年度から3年間の物価見通しも据え置いたものの、予想物価上昇率の記述変更を上方修正。為替市場では一時円が上昇したが、黒田東彦総裁が会合後の記者会見で出口検討に否定的な姿勢を示し、円安に転じた。

  誘導目標である長期金利(10年物国債金利)を「0%程度」、短期金利(日銀当座預金の一部に適用する政策金利)を「マイナス0.1%」といずれも据え置いた。長期国債買い入れ(保有残高の年間増加額)のめどである「約80兆円」も維持。指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(J-REIT)の買い入れ方針にも変更はなかった。

  黒田東彦総裁は会合後の記者会見で、「2%の物価安定目標に向けたモメンタム(勢い)は維持されているが、なお力強さに欠けており、引き続き注意深く点検していく必要がある」と述べ、物価の下振れリスクの方が大きいの見方を示した。その上で、出口を検討する局面には至っておらず、「引き続き現在の強力な金融緩和を粘り強く進めていくことが日本経済にとって必要だ」と語った。

  同時に発表した3カ月に1度の経済・物価情勢の展望(展望リポート)は、消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)前年比の見通し(政策委員の中央値)を17年度0.8%上昇、18年度1.4%上昇、19年度1.8%上昇(消費増税の影響を除く)といずれも据え置いた。

  3年度分の見通しを変更しなかったのは2014年7月以来3年半ぶり。2%程度に達する時期が「19年度ごろになる可能性が高い」との見通しも維持した。コアCPI前年比は1%程度となっていると指摘。これまで「弱含みの局面が続いている」としていた予想物価上昇率は「横ばい圏内で推移している」に判断を引き上げた。

  みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは発表後のリポートで、「予想物価上昇率の記述が上方修正されたことなどを除いて無風と言える内容であり、日銀の金融政策は現状維持が当面続くと見込まれる」との見方を示した。

市場はセンシティブ

  しかし、為替市場は記述変更に敏感に反応した。決定会合終了前に1ドル=110円90銭前後だったドル・円相場は、正午過ぎに結果が伝わると、一時110円56銭まで円高に振れた。

  ソニーフィナンシャルホールディングス金融市場調査部の尾河真樹部長は、日銀による予想物価上昇率についての記述変更に反応した感じだが、黒田総裁の会見では「すぐに何かすると受け止められないように配慮するのではないか」と指摘。「市場はセンシティブになっている」とし、総裁が緩和縮小の思惑に対して「どこまでトーンダウンできるか」が焦点になるとみていた。

  黒田総裁は出口検討に消極的な発言をしたほか、予想物価上昇率の記述変更が「直ちにイールドカーブコントロールの金利について何か調整があるとは全く考えていない」とも発言。為替相場は会見途中で1ドル=111円18銭まで円安が進んた。足元では、110円台前半(午後5時15分現在)で推移している。

  片岡剛士審議委員は4会合連続で現行の金融政策の維持に反対した。18年度中に物価目標を達成することが望ましく、10年以上の幅広い国債金利を一段と引き下げるよう長期国債の買い入れを行うことが適当と主張。物価目標の達成時期が後ずれする場合は、追加緩和を講じるよう求めた。

  3月に期限が来る「貸出増加を支援するための資金供給」と「成長基盤強化を支援するための資金供給」などの1年間延長も決定した。

関心は総裁人事に

  エコノミストに行った調査でも全員が金融政策運営方針の現状維持を予想していた。日銀が9日の金融市場調節(オペレーション)で超長期債の買い入れを減額したことなどをきっかけに、市場で金融緩和の縮小が近いとの見方が浮上したが、エコノミストの多くは早期の正常化に懐疑的だ。

  黒田総裁は会見で、9日の市場動向について「ドルが他の通貨に対しても若干弱くなったということであり、特に円高が起こったということでもない」と分析。オペの金額は市場の状況に応じて増減するとし、「オペの時々の金額やタイミングが金融政策の先行きを示すものでは全くない」と改めて強調した。

ブルームバーグの事前調査の結果はこちら

  任期満了まで3カ月を切り、市場の関心は黒田総裁の後継問題に集まっている。ブルームバーグ調査では、黒田総裁が退任した場合の為替への影響について回答した24人のうち23人が「円高になる」と回答。株価について回答した22人全員が「株価は下がる」との見方を示した。

  黒田総裁は次期総裁に必要な適性として経済がグローバル化する中で、「国際的な関わり合いが非常に重要になっている」と述べるとともに、「実践的な能力と理論的な分析を兼ね備えていることが重要なのではないか」と持論を語った。

  ソシエテ・ジェネラル証券の会田卓司チーフエコノミストは発表後の電子メールで、総裁人事は黒田総裁の再任か、同程度にハト派で現行政策に理解のある人が任命されると予想。その上で、「政府・日銀が一体となって2%の物価目標を目指すアコードは強化され、日銀は現行の金融緩和政策を粘り強く維持するのがメインシナリオだろう」としている。

  決定会合の「主な意見」は31日、「議事要旨」は3月14日に公表する。

(黒田総裁の発言や為替市場の動向を盛り込み、差し替えます.)
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