IT人材争奪で会社ごと買収も、最大200億円-トヨタ系Jテクト

更新日時
  • 自動運転などの新技術「やめたら負け」、研究開発強化-安形社長
  • 金融緩和の「出口」意識、社債や借り入れで手元資金の充実検討

自動運転や電動化など新技術への対応を急ぐ自動車業界で、不足するIT人材の確保のためエンジニアリング会社を丸ごと買収しようという奇策まで飛び出した。トヨタ系の部品メーカー、ジェイテクトは人材確保に向け、システムエンジニアリングの会社を最大200億円を投じて買収することを検討している。

  「会社を買ってでも確保するように言っている。たとえ400人の会社であってもそのうち200人が自動車関連、残りの200人が別の事業を行ってもいい」と安形哲夫社長がインタビューで明らかにした。ジェイテクトが手がけるステアリングシステムなどでも自動運転に向けて高度なソフトウェア開発が求められており、「全部対応しようとするとエンジニアリング力がついていかない。そこが成長のボトルネックになる」とし、数百人単位でシステムエンジニアが必要でいい会社があれば「100でも200億でも」出すつもりだと話す。

安形社長

Photographer: Kentaro Takahashi/Bloomberg

  安倍政権の働き方改革の下、求人倍率は約40年ぶりの高水準となるなか各業界で人材がひっ迫しており、自動車業界も人材確保に苦心している。特に自動運転や、電動化、コネクティッドなどで必要なシステムエンジニアなどのIT人材が足りていない。

  経済産業省の2016年の調査によると、マクロ規模でのIT人材は現在約90万人、不足数は約17万人と推計され、同省は19年をピークに人材供給は減少傾向となり、より一層不足数が拡大するとみる。転職支援サービスのリクルートキャリアが発表した昨年12月の転職求人倍率は全体で1.92倍だったのに対し、インターネット専門職は6.5倍、組み込み・制御ソフトウエア開発エンジニアリングは5倍と上位を占めた。

  トヨタ自動車では、神奈川県川崎市と東京都立川市を結ぶJR南武線の駅ホームに、沿線に多い電機メーカーやIT系企業からの中途採用を見込む広告を掲げ、技術者の確保を急いでいる。日産自動車も自社のウェブサイトで、自動運転や電動車両の開発者を募集しているほか、ホンダも東京や愛知県でITシステムエンジニアなどを対象に面接会を開いている。

  ジェイテクトでは昨年11月、自動運転の対応を見据えたソフトウェアの開発拠点を秋田に設立した。それでもシステムエンジニアは足りず、人員を「増やしていかないと、この大競争に振り落とされるのではないか」と安形社長は危機感を示す。16年度の研究開発費は482億円、売上高比率は3.7%と14年度以降増え続けている。人件費を中心とする積極的な投資は「やめたら負ける」とし、今年度は4%を超える見込みで、今後は「5%くらいまで行かざるを得ない」と述べた。

  トヨタグループでは、電動化、自動化、コネクティッドなどの技術進化で異業種との競争も激しくなる中、グループ内での連携を強化している。自動運転技術について、統合制御システムの開発をグループ内で行っていることも明らかにした。「それまで慎重だったトヨタのドライブがきつくなってきたので、加速しなくてはならない」とし、自動運転では最終的にはドライバーの存在を前提としないレベル4を目指すとした。トラックとバスについては海外メーカーとの開発を進めているという。

  安形社長は新技術への積極的な投資が必要な一方、景気動向を見極め、長期資金の手当てを行う必要性にも触れた。景気の急激な悪化はないとみているものの、各国の中央銀行が緩和的な金融政策の出口を探る中でいずれ調整局面が来る可能性があり、「低金利のうちに5-7年くらいのスパンの長期資金手当てをやっておく」という。社債の発行や借り入れを増やすなど資金調達を進めることを検討している。同社では15年、16年にも社債を発行している。

  13年に就任した安形社長は13年度に2500億円近くあった有利子負債を16年度には1871億円まで減らし、手元流動性資産の縮小に努めてきた。長期資金手当ては自らの主義には反するが、今後、景気が下振れれば「資金を心配しながらやっている経営者にとっては、大変難しいかじ取りが迫られる。経営者としては会社をつぶすわけにはいかない」と話した。

  日銀は23日の金融政策決定会合で、金融政策の現状維持を決定。予想物価上昇率の記述を上方修正したことを受け、為替市場では円が一時上昇した。ジェイテクトの同日の株価終値は前日比2.2%高の2084円だった。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE