弾道ミサイル飛来を想定、東京ドーム周辺で都内初の避難訓練

  • Jアラートの発令から5分で到達の可能性-内閣官房担当者
  • 住民ら350人が参加、「学びの場あるのは良い」との声も

「ミサイル発射。建物の中または地下に避難してください」ー。雪交じりの小雨が降る中、東京ドーム周辺に全国瞬時警報システム(Jアラート)のサイレンが響くと、集まった住民らは誘導に従い、地下鉄駅などに向かった。

   政府と東京都、文京区が22日午前に実施した弾道ミサイルを想定した避難訓練。同様の試みは昨年から各地で実施されているが、都内では初めてだ。周辺住民や近隣企業の会社員ら約350人が参加し、地下鉄春日駅や後楽園駅、遊園地・東京ドームシティアトラクションズで地下施設への避難手順を確認した。

Jアラートのサイレンを聞く訓練参加者

Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  会社員の大沢昌奈さん(34)は「ミサイルが来ないのが一番だが、何もしないというのは良くないので、学びの場があるのは良い」と語った。訓練に参加して「都内にいれば地下には逃げやすい」と感じたという。

  内閣官房の国民保護ポータルサイトによると、弾道ミサイルは発射から「10分もしないうちに到達する可能性がある」としている。内閣官房の末永洋之参事官は同日の訓練を総括し、Jアラートの発令後5分ほどの時間しかないため、避難誘導は難しく、「それぞれ置かれた状況の中で、申し訳ないが判断して的確な行動を取ってほしい」と参加者に呼び掛けた。

「避難」はわずか

  政府のインターネット調査では、昨年8、9両月に北朝鮮の弾道ミサイルが日本上空を通過した際にJアラートを聞いて「実際に避難した」と回答したのは8月が5.4%、9月が5.6%。「不必要と考え避難しなかった」人は8月は48.2%、9月は50.8%と半数に上った。避難しなかった理由は、いずれも「意味がないと思った」が最も多く、「どこに避難すればよいか分からなかった」が続いた。

地下鉄の入り口へ向かう訓練参加者

Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  日本大学危機管理学部の福田充教授は、Jアラート発令から取り得る行動はごく限られたものしかないが、地下や屋内に避難した方が爆風や熱線の直撃を受けるよりは「生き残る可能性は高まる」ことから、訓練には一定の「意味はある」と話す。

  現在の全国での訓練は、本来リスクのある「政治的な中心地や在日米軍基地周辺は外されている」と福田氏は話す。「不安をあおりすぎる」との配慮があり、今回の東京での訓練も「政治的な意味を持たない大規模集客施設」が選ばれたと分析。まずは「国民の意識を高めてもらう効果」を狙った取り組みとの見方を示した。

プラカードを掲げる反対派と警察官

Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  ただ、今回の訓練の会場となった地下鉄駅の周辺では、「ミサイル避難訓練やめろ」「戦争ではなく対話を」とのプラカードを掲げた反対派の姿も。立川市から来た大西章寛さん(44)は「意味のない訓練をやって特定の国への敵意をあおっている」と政府の姿勢に懸念を示した。

北海道  

  訓練の動きが広がる一方、北朝鮮のミサイル発射によって昨年Jアラートが発令された地域では市民生活への影響も出始めている。 

  8月と9月のミサイル発射で2度の警報が発令された北海道。札幌市の私立札幌新陽高校は11月に予定していた修学旅行先を米領グアムからフィリピンのセブ島に変更した。荒井優校長によると、北朝鮮がグアムへの弾道ミサイル発射計画を発表したため、保護者の不安や不測の事態を想定し判断した。

  荒井氏はJアラートのサイレンを初めて聞いた時、「やはりちょっと手が震えた」という。今やミサイル発射の兆候を伝える小さな記事も「気になる」といい、「着弾するような可能性も0%ではないことを考えると、本当に苦しい世の中だ、と正直思っている」とも語った。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE