【インサイト】円と米金利の縁を切る、パウエル新FRB議長への思惑

Japanese 10,000 yen banknotes are arranged for a photograph in Tokyo, Japan.

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

最近の円の奇妙な動きは、日本銀行の目に留まったかもしれない。米金利が上昇しているにも関わらず円高が続いているからだ。日銀が長短金利操作政策を導入後、日米金利差の拡大は円安への主要なエンジンとなってきた。しかし、円と米金利の緊密な関係は、昨年11月2日のトランプ大統領によるパウエル次期米連邦準備制度理事会(FRB)議長の指名を機に薄まりつつある。

9日の円高のきっかけは、日銀による超長期国債買い入れ減額だ。これまでも日銀の長期国債の買い入れペースは減少していたが、年初の減額でテーパリング(量的緩和縮小)への思惑が広がり円高につながった。継続的な円安は日銀の2%の物価目標達成のためには重要だ。為替市場の新たな反応で、金利正常化に向けた日銀の表向きのトーンがやや弱まる可能性がある。

日銀による長短金利操作の導入で10年物日本国債金利を0%程度に固定され、日米金利差が米金利の変動とほぼ一致するようになった。その結果、日次(にちじ)のドル円の変化率と10年物米国債金利の変化幅の相関係数は0.8まで上昇して推移するようになった。こうした円と米金利との高い相関は、昨年11月にトランプ大統領がFRBの次期議長にパウエル理事を指名して以降次第に低下し、現在は0.5を割り込んだ。長期金利だけでなく、円と2年物米金利との相関も同様に低下している。

米金利と対照的に、円と10年物金利の相関係数は昨年の中頃から終盤にかけてほぼゼロだったが、昨年11月上旬に0.5まで上昇し、足元では0.2まで低下している。年初来、為替市場のテーパリングへの思惑による円高は、日銀の金融政策の正常化に向けた姿勢をより慎重にさせる可能性がある。

これまで為替市場は日銀による長期国債の買い入れペースの変化に比較的鈍感だった。実際、2017年の買い入れペースは60兆円で、80兆円の目安を大幅に下回っている。今月9日の日銀による超長期国債買い入れ減額による円高が、スポット的な動きなのか、継続的な傾向となるのかは現状では判断が難しい。いずれにしても日銀内部での正常化の議論を求める声の高まりとは別に、23日の金融政策決定会合後の黒田東彦総裁の記者会見での発言はより慎重なものとならざるを得ず、ポーカーフェースを貫くこととなろう。

ブルームバーグ・エコノミクスによる日米の長短金利差と円の避難通貨効果を考慮した為替モデルでは、現状の円高の動きはややオーバーシュート気味だ。もし、米金利が上昇する中で円高傾向が続くようなら、日銀の金利正常化に向けたスケジュールをさらに先延ばしにせざるを得なくなるかもしれない。

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JAPAN INSIGHT: Fed’s Powell Shift Cuts Yen’s Link to U.S. Yields

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