ビットコイン、独裁国家の救世主になり得ない-経済制裁の回避困難

  • デジタル通貨はまだ萌芽期、市場規模小さく外為取引の約7分の1
  • 北朝鮮など孤立国家に資金獲得の新たな手段は提供

Cables are attached to an application-specific integrated circuit (ASIC) device and power unit, manufactured by Bitmain Technologies Inc.

Photographer: SeongJoon Cho/Bloomberg

ロシア財務省は国内の公認取引所で仮想通貨の取引を認めたい。北朝鮮のハッカーはデジタル通貨を盗み、ベネズエラは石油を裏付けとする仮想通貨で同国に投資を呼び寄せることを期待している。

  プーチン大統領率いるロシア、金正恩朝鮮労働党委員長の北朝鮮、マドゥロ大統領のベネズエラという3カ国はいずれも、制裁によってグローバル金融システムへのアクセスを制限されるという共通の問題を抱える中で仮想通貨ブームに乗ろうとしている。ただ、ビットコインや仮想通貨はそうした国々の政治指導者に資金の源泉を与えることはできても、生まれたばかりのデジタル通貨市場に米国主導の経済制裁をうまく回避させてあげられるほどの実力はない。

  ビットコインを制裁に対する安全な逃避先とみている独裁者の誰もが、単純に規模の問題にぶつかるに違いない。コインマーケットキャップ・ドット・コムによると、世界のデジタル通貨には合わせて7000億ドル(約77兆6500億円)相当の価値があるが、これは外国為替市場における1日の取引額の約7分の1にすぎない。

  オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)の国際サイバー政策センターで客員フェローを務めるトム・ウレン氏は「米ドルの流通量とその価値に合致するためビットコインがいくらになる必要があるかを考えると、恐ろしく大きな数字になる」と指摘。「長期的には可能でも、数十年単位の話になる」と語った。

市場を規制

  さらに、監督当局がデジタル通貨の規制に迅速に動いている。中国人民銀行(中央銀行)は新規仮想通貨公開(ICO)は違法と9月に宣告。韓国の朴相基(パク・サンギ)法相は今月11日、取引所を通じた仮想通貨の取引を禁止する方針をあらためて示した。 13日の聯合ニュースによると、韓国当局は銀行に対し仮想通貨口座で実名を確認する措置を求めた。

  ムニューシン米財務長官は12日、エコノミック・クラブ・オブ・ワシントンで、ロシアなどが制裁を回避するためにデジタル通貨を利用する可能性について「全く」心配していないと発言。米国は資産ではなく人や組織に制裁を科しており、こうした措置は仮想通貨で利益を保有する国家にも適用される。たとえマドゥロ大統領がベネズエラの石油を裏付けとする仮想通貨「ペトロ」への支持を投資家から集められたとしても、ペトロ利用者は制裁に巻き込まれる恐れがある。

仮想通貨の規制強化嫌気し中国離れも-QuickTake

  制裁回避に仮想通貨を利用することは、石油を売るために米ドル中心の金融システムにアクセスが必要な産油国にとっては特に問題となりそうだ。例えば、イランの経済規模は大き過ぎて、ビットコインは救世主になり得ない。
  
  それでも仮想通貨は孤立した体制やその国の政治エリートが国境を越えて現金を得るための新たな道を開く。韓国の金融保安院(FSI)でハッキング分析チームを率いるクァク・キョンジュ氏によると、北朝鮮のハッカーは昨夏に韓国のサーバーを乗っ取り、それを2万5000ドル相当のデジタル通貨採掘に利用した。

  サイバーセキュリティー会社ファイアアイで、脅威インテリジェンスのアジア太平洋地域ディレクターを務めるティム・ウェルズモア氏は仮想通貨について、「分散型で規制されておらず、匿名性が高いため、犯罪者や違法行為を欲する政府にとっては信じ難いほど素晴らしい資産だ」と語った。

  ムニューシン財務長官は12日、マネーロンダリング(資金洗浄)のような犯罪にビットコインが使用される可能性が最大の懸念事項との認識を示した上で、ビットコインの利用を注意深く監視するため米国と世界の監督当局が協力していると語った。

原題:Bitcoin Can’t Save World’s Autocrats From the Sanctions Squeeze(抜粋)

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