空の旅か、鉄道の旅か-世界を走る高速鉄道が新たな旅行需要生み出す

  • 時速600キロのリニア、実現すれば鉄道と旅客機の関係に変化も
  • 米国だけは交通インフラはむしろ途上国の方に近い

アジアと欧州では長距離の移動手段として高速鉄道が旅客機と競い合うが、ジャーナル・オブ・アドバンスト・トランスポーテーション(JAT)誌に掲載された論文によれば、移動距離が1000キロになると、時間を節約したい人々は旅客機の利用を考えるという。だが新しいテクノロジーが将来、この節目を変えるかもしれない。

  北京航空航天大学と米サウスフロリダ大学の調査員らによる「異なる移動手段の競争力にとって移動に要する時間は極めて重要」との指摘は、運賃とドア・ツー・ドアでの移動時間において、高速鉄道が旅客機と同等かより優れていれば、鉄道での旅が空の旅に取って代わり得るとの理論を裏付ける。だが実際はゼロサムゲームとはなっていない。

  日本や中国、韓国、西欧で発達した高速鉄道は、旅客機と鉄道との競争に関する先入観を覆した。航空会社が支配してきた市場を高速鉄道が奪うわけではないのだ。手ごろな運賃の高速鉄道が各地で新たな旅行需要を生んでおり、鉄道会社と航空会社の双方にとってプラスとなっている。

JR西日本の新神戸駅

撮影:大隅智広/ブルームバーグ

  鉄道業界の新たな注目は中国だ。急成長を続ける高速鉄道ネットワークは世界最大で、今後の拡充方針も野心的だ。1247キロの北京-上海間は世界有数の運行量で国産の新型高速鉄道「復興号」が時速350キロで走る。中国国営の新華社通信によれば、北京-上海間の鉄道旅客数は年約1億人で、運行時間は4時間28分に短縮された。

  1960年代に新幹線を導入した日本では、東京-大阪間が現在2時間半で結ばれており、航空会社はボーイング767や777、787による約70分のフライトで新幹線に対抗する。

中国の高速鉄道「復興号」

出典:STR / AFP /ゲッティイメージズ

  JAT誌の論文によれば、中国では鉄道全体の利用者数が2015年に9億1000万人となった。旅客機の4億1540万人の倍以上だ。上海では、すでにリニアモーターカーが時速430キロで運行されている。エンジニアらは時速600キロで走行するリニアについての研究を進めており、実現すれば、今の鉄道と旅客機の関係を根本から変えるかもしれない。

上海のリニアモーターカー

撮影:大隅智広/ブルームバーグ

  欧州ではユーロスターがロンドンとパリ、ブリュッセルを結ぶ。昨年の利用者数は1000万人。1994年11月に運行を開始し、翌年の利用者数は290万人だった。運賃は29ポンド(約4400円)からと、開業当初の79ポンドから引き下げられている。

ユーロスター(ロンドンのセントパンクラス駅)

撮影:Simon Dawson / Bloomberg

  ライバル同士のように見える鉄道会社と航空会社だが、実際は多くの点で補完的だ。鉄道は都市の中心部に乗客を運び、格安航空会社(LCC)は運賃を抑えるため都市中心部から離れた空港を利用する傾向がある。エールフランス・KLMなど欧州の大手航空各社は短距離路線をライアンエアーやイージージェットなどのLCCに譲っており、米国でも同じよう動きが見られる。

フランスSNCFのTGV(ナント)

撮影:Loic Venance / AFP /ゲッティイメージズ

  米国の交通インフラは、中国や西欧よりむしろ途上国に近い。全米旅客鉄道公社(アムトラック)の乗客数は、同社の2016会計年度で3130万人とアジアと比べあまりにも少ない。全米最速の鉄道はボストン-ニューヨーク-ワシントンをつなぐ「アセラ」だが、最高速度は時速241キロ。しかも運行が混み合うため時速161キロを上回る走行はめったにない。道路と平行して走る地点も多いが、自動車に追い抜かれることも珍しくはない。

アムトラックの「アセラ」

原題:High Speed Rail Now Rivals Air Travel on Key Asia, Europe Routes(抜粋)

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