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三菱商CFO:増配で長期保有の株主に報いる、非資源底上げで手応え

  • 急激な利益拡大受けて配当金の引き上げ幅には「難しさもある」
  • 商社業界のROEは低下傾向、投資家からの還元要求は強い-市場

三菱商事の増一行・最高財務責任者(CFO)はインタビューで、減配せずに増配していく配当方針によって「長く保有していただいている株主を優先に還元を続けたい」との考えを示した。短期で売買する海外の投資家層などにも5年以上といった長期保有につなげてもらいたい狙いだ。

  三菱商は11月、今期の連結純利益予想を4500億円から過去最高となる5000億円に上方修正した。年間配当金も従来予想の1株当たり80円から95円へと引き上げた。赤字決算でも配当金を出した2016年3月期を除けば、過去10年、20%台で推移してきた配当性向は30%に達する見通し。

  増配を決めた背景については「資源価格も回復してきており、非資源の利益も全般的に底上げされてきている」と述べた。原料炭価格が1トン当たり70ドル台、原油が1バレル当たり20ドル台など大幅に下落する可能性は低いとした上で、サケ・マス養殖事業や子会社ローソン、タイでの自動車販売事業といった市況変動に業績が左右されにくい分野の事業が好調で「手応えが出ていることが大きい」という。

  商社業界では業績好調を背景に配当の引き上げが相次ぐ。伊藤忠商事は今月20日、年間配当金を従来予想の1株当たり64円から70円に引き上げると発表。住友商事は中間決算で今期業績見通しを上方修正したのに合わせて、年間配当予想も引き上げた。配当予想を据え置いている三井物産も基礎営業キャッシュフローが計画を上回っており株主還元の拡大を前向きに検討している。

配当引き上げた2社の株価が好調

  三菱商は17年3月期から開始した3年間の中期経営計画で、配当方針については減配せずに利益成長に合わせて増配していく累進配当制を掲げた。増CFOは「減配は配当だけでなく株価も下落することになり、株主には相当迷惑を掛ける」と説明。実際に15年11月の中間決算で業績の下方修正とともに減配を発表し、株価下落を招いたことが累進配当制を導入するきっかけとなった。

  一方、配当の引き上げ幅については「難しさもある」と指摘。足元の原料炭価格が250ドル台の高値で推移しており、急激な利益拡大につながっているためだ。業績が悪化しても減配しないため、配当額を決めるには今期の業績に加えて来期の業績動向も勘案する必要がある。期初には今期の年間配当を前期比横ばいの80円としていたが、純利益を上方修正しなかったとしても、計画通りに達成できる確度が高まった時点で配当を引き上げる予定だったと述べた。

  計画している投資が実現しない場合などには資本が積み上がり過ぎるため「自社株買いで還元することは視野に入る」とも語った。

  野村証券の成田康浩シニアアナリストは、総合商社業界では全体で今期に過去最高の利益が見込まれる一方、自己資本利益率(ROE)は低下傾向にあると指摘。利益成長の鈍化や資本の積み上がりが背景にあるとして「ROEが低い会社ほど還元に対する投資家からの要求は強い」との見方を示した。

 
【商社5社の今期の年間配当金見通し】


   配当金  配当性向  配当利回り ROE
三菱商事80円⇒95円(80円)  30%  3.0%  9.3%
伊藤忠64円⇒70円(55円)  27%  3.3%  15.3%
三井物産   60円(55円)  26%  3.3%  8.6%
住友商事50円⇒56円(50円)  25%  2.9%  7.4%
丸紅   25円(23円)  26%  3.1%  11.1%

(注:配当金の左側は期初の見通し、カッコ内は前期実績。配当性向は今期予想、配当利回りは27日の株価終値ベース。ROEは17年3月期実績)

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