EV普及による変化を見据えよ-リチウムイオン電池生みの親の吉野氏

  • カーシェアでは1台で10倍の距離走行、耐久性が重要に
  • 二次電池の小型軽量化が求められていた点に注目、新型電池を開発

リチウムイオン電池を発明した旭化成名誉フェローの吉野彰氏は、電気自動車(EV)の自動運転化やカーシェアリングが進めば、電池に求められる性能はこれまでとは異なるものになってくるとし、社会の変化を見据えた技術開発が必要になるとの見通しを示した。

  吉野氏はインタビューで、将来、無人自動運転が普及すれば、カーシェアリングが広がり、「世の中にマイカーはなくなり、片道の走行距離は300キロ走れば十分」な状況になると指摘。「10人でシェアすると仮定すれば、1台の自動車が10倍の距離を走ることになり耐久性が重要になる」と話した。

吉野彰氏

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  現在の電池開発では、EVの価格の約半分を占めるとも言われる電池のコストの削減や、一度の充電による走行可能距離を伸ばすための電池のエネルギー密度の引き上げが重要になっており、各メーカーがしのぎを削っている。

  吉野氏は、耐久性向上の重要性が高まるのに伴って電池材料の選択も変わってくると説明。繰り返す膨張と収縮に耐えられ、化学的、熱的に安定した材料を選ぶ必要があり、負極ではチタン酸リチウムなどが使われる可能性があると語った。

  吉野氏は1972年に旭化成に入社。後にノーベル賞を受賞した白川英樹氏が発見したポリアセチレンという電気を通すプラスチックの研究を80年代初めに開始した。太陽電池や半導体などに利用される可能性を持つ材料だったが、電池にも使用可能で、当時二次電池の小型軽量化が求められていた点に注目し、新型電池の開発に取り組んだ。85年にはポリアセチレンの代わりにカーボンを電池の負極に使うリチウムイオン電池の開発に成功した。

興味深い時期

  リチウムイオン電池は91年にソニーが先行して商品化したが、旭化成と東芝は翌年合弁会社を設立してリチウムイオン二次電池事業をスタート。吉野氏は開発当時、「8ミリビデオに使用されたら大きな市場になる」と考えていた。その後のIT革命で携帯電話やノート型パソコン、コンピューターなど使用範囲が拡大していったが、自動車にまで広がるとは「誰も思わなかった」と振り返る。

  小型民生用商品での使用実績に加え価格が下がったことで、リチウムイオン電池は自動車にも使われるようになった。吉野氏は車載用電池の開発について、従来の技術の開発の延長としてエネルギー密度を上げ、価格を低減するアプローチも必要だが、社会の変化も見据えた耐久性の向上も重要とした。

リチウムイオン電池生みの親・吉野氏

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  吉野氏は「自動車は全く新しいアプリケーションであり、最終的にどのような電池が必要かはこれから決まっていく。自動車の場合は単にEVに変化するだけでは終わらない。将来のクルマ社会がどうなるかを考えておかないといけない」と指摘。この点がどう変化していくのか、現在は最も興味深い時期だとも語った。

  リチウムイオン電池の開発が日本で進んだ理由については、開発当初、デジタルカメラやビデオなどの最終製品の分野で日本が世界をリードしており新型電池の需要があったことに加え、電池の材料分野で技術の基盤が整っていた点を挙げる。しかし、EVの開発が盛んな欧州で地元のメーカーから電池が調達されるようになれば、欧州の材料メーカーも手ごわい相手になると述べた。

  吉野氏は、リチウムイオン電池の開発に貢献したとして、2014年に全米技術アカデミーから他の研究者3名と共にチャールズ・スターク・ドレイパー賞を授与された。

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