賃上げと歳出抑制のジレンマ、医師人件費プラス改定-来年度予算

更新日時
  • 3%の賃上げには改定率1.4%増相当の財源が必要-日本医師会
  • 本体部分のプラス改定は「政治的要因」-みずほ総研の野田氏

政府は22日午前の閣議で2018年度一般会計予算案を決定した。伸び続ける社会保障費を抑制する切り札と目されていた診療報酬をマイナス改定とし歳出の増加幅を抑えたが、賃上げの機運を踏まえて医師の人件費などはプラス改定で決着した。

  過去最大となった総額97兆7128億円のうち、社会保障関係費は前年度当初比4997億円増の32兆9732億円。政府は高齢化による自然増を前年度当初予算比で6300億円と見積もっていたが、診療報酬の改定により財政健全化計画に示された目安の5000億円以内に抑えた。

  医療サービスの公定価格である診療報酬は2年に1度見直されることとなっており、来年度は改定の年にあたる。財務省によると全体の改定率は0.9%減で決着。そのうち薬価は1.45%まで切り下げ、国庫負担を1555億円減少させた。一方、医師の人件費などの本体部分は0.55%増と6回連続のプラス改定で決着し、国庫負担は588億円増加した。

  麻生太郎財務相は閣議後の会見で、診療報酬の改定について「一番頭が痛かったところ」と振り返った。その上で「そこそこのところで収まることができた結果、目安としていた伸び率5000億円以下を達成できた」と語った。

  物価が伸び悩む中、賃上げはデフレ脱却を目指す安倍晋三政権の最重要課題となっている。安倍首相は10月の経済財政諮問会議で、「賃上げはもはや企業に対する社会的要請」と述べ、3%の賃上げを経済界に求めた。与党も来年度税制改正大綱で、賃上げに積極的な企業の法人税負担を軽減する優遇税制の導入を決めた。

  日本医師会の横倉義武会長は11月29日の会見で、安倍首相が求める3%の賃上げを医療従事者も行うためには改定率で約1.4%相当の財源が必要になると説明。共同通信によると12月20日の会見では、本体部分について「物価や人件費の伸びを勘案すると0.76-0.78%が望ましいと思っていた」と明かしたうえで、今回の改定率を「60点」と評した。

  自民党も側面支援を展開した。同党の武見敬三参院議員のフェイスブックによると、同氏が会長を務める「医療政策研究会」のメンバーは7日、麻生財務相と面会。「薬価改定財源は診療報酬本体にあて、診療報酬改定はプラス改定とすること」を求める決議文を提出した。

  みずほ総研の野田彰彦上席主任研究員は21日の電話取材で、自民党は10月の衆院選で日本医師会の支援を受けたとし、本体部分のプラス改定は「政治的な要因」と分析。本来はマイナス改定が望ましかったとの見方を示した。その上で、財政健全化の目安を達成すればそれ以上やらなくていいという流れがあるとし、「社会保障費の改革はまだ切り込む余地があった」と指摘した。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE