日銀:金融政策は8対1で現状維持-片岡氏が反対、議案提出見送り

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  • 金融政策は8対1で現状維持-片岡氏反対、議案提出見送り
  • 10年以上の国債金利幅広く引き下げるよう買い入れが適当-片岡氏

Pedestrians cross a road in front of the Bank of Japan (BOJ) headquarters in Tokyo, Japan.

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

日本銀行の黒田東彦総裁は21日の金融政策決定会合後の記者会見で、自らが講演で言及した「リバーサル・レート」について「金利操作見直しとの意味ではない」と述べ、長期金利引き上げに向けた布石との市場の見方を改めて否定した。

  黒田総裁は日本の「金融機関は充実した資本基盤を備えており、信用コストも大幅に低下している状況だ。金融仲介機能に現段階で何か問題が生じているということはない」と指摘。その上で、「リバーサル・レートの学術的な分析を取り上げたからといって、昨年9月以来の長短金利操作付き量的・質的金融緩和について何か見直しや変更が必要だという事は全く意味していない」と語った。

  黒田総裁は11月13日の講演で行き過ぎた低金利が金融仲介機能を阻害し緩和効果をそぐ「リバーサル・レート」に言及し、「リスクにも注意していきたい」と発言。反響の大きさに、4日の講演で、現在の長短金利操作で金融システムに問題は生じていないと火消しを図っていた。

  この日の会合では現行の金融政策の枠組みの維持を8対1の賛成多数で決定。誘導目標である長期金利(10年物国債金利)を「0%程度」、短期金利(日銀当座預金の一部に適用する政策金利)を「マイナス0.1%」といずれも据え置いた。長期国債買い入れ(保有残高の年間増加額)のめどである「約80兆円」も維持。指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(J-REIT)の買い入れ方針にも変更はなかった。

  片岡剛士審議委員は、前回10月会合と同様、物価目標の達成時期が後ずれする場合に追加緩和を講じることや、10年以上の国債金利を幅広く引き下げるよう長期国債の買い入れを行うことが適当として、現状維持に反対した。議案の提出は見送った。

  消費者物価の前年比が先行き2%に向けて上昇率を高めていく可能性は、現時点では低いとも分析。2018年度中に物価目標を達成することが望ましいと主張した。

  世界的な好景気や円安を背景に、17年は黒田総裁が13年3月に就任してから初めて大きな金融政策変更がない年になる。エコノミストに行った調査でも、全員が現状維持を予想していた。ただ2%の物価安定目標への道のりは遠く、10月の消費者物価は、生鮮食品とエネルギーを除くと前年比0.2%上昇と低迷が続く。

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2%達成が最大の目標

  黒田総裁は会見で、「2%の安定目標を早期に達成することが日銀の金融政策の最大の目標」と述べた上で、「景気がいいから、そろそろ金利を上げるという考えはない」と強調。モメンタム(勢い)が維持されない恐れがある場合には、「もちろんさらなる緩和を行う」と述べる一方で、2%が達成される状況になる時に「全くイールドカーブコントロールを変えないということはない」とも語った。

  三井住友銀行の西岡純子チーフエコノミストは電話取材で、日銀が「2%に向けた物価上昇を見通す方向性は変わっていない」と分析した。原油価格が上がり、企業の価格転嫁が続けば1%超えの可能性が高まり「景気動向がそのまま続けば、来年は金融政策正常化への期待が高まっていくだろう」と述べた。

   日銀は今回の会合で設備投資については「企業収益や業況感が改善する中で、増加傾向を続けている」との判断を示し、10月の経済・物価情勢の展望で示した「緩やかな増加基調にある」から上方修正した。個人消費も「底堅さを増している」から「雇用・所得環境の着実な改善を背景に、振れを伴いながらも、緩やかに増加している」に引き上げた。

  大和証券の野口麻衣子シニアエコノミストは「部分的に景気判断の文言を修正し景気の回復には自信を深めている様子がみてとれる」と述べた。ただ「これが近い将来の政策変更を示唆するものと考えるにはまだ早い。肝心の物価に対しての見方は全く変わっていない」との見方も示した。

  会合結果の発表前は1ドル=113円35銭前後で取引されていたドル円相場は黒田総裁の会見後、113円60銭前後の円安で推移している。決定会合の「主な意見」は28日、「議事要旨」は1月26日に公表する。

(黒田日銀総裁の記者会見での発言を追加し、更新します.)
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