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リニア入札に捜査の手、工事計画・関与ゼネコンへの影響は-Q&A

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JR東海が発注したリニア中央新幹線関連工事を巡る不正受注事件で、東京地検特捜部の捜査が大手ゼネコン4社に広がった。特捜部は公正取引委員会と共同で総工費9兆円超に上るプロジェクト全体の公平性について検証するとも伝えられている。リニア計画の内容を再確認しながら今後の影響を探った。

1.リニア中央新幹線とは

  正式名称は超電導リニア中央新幹線。JR東海が開発中。東京-大阪間を平均時速505キロで運行、約1時間7分で結ぶ計画。ルートが確定している東京-名古屋間では南アルプスの赤石山脈などを横断するためほぼ9割がトンネルとなる見込み。まず27年に東京-名古屋を先行開業、その後45年に東京-大阪も開業する計画。2015年に着工済みだ。

2.不正受注疑惑とは

  この巨大プロジェクトで、大手ゼネコンは不正に受注調整した疑いが浮上している。特捜部と公取委による捜査・調査の対象は大林組大成建設鹿島清水建設で、既に本社の家宅捜索に着手、独占禁止法違反や偽計業務妨害の疑いで追及する方針。ただ、JR東海の社員が見積もりに関する情報を漏らしたとの報道もある。

  4社はJR東海が発注した工事22件のうち15件をほぼ均等に受注していた。産経新聞によると、4社以外が受注した7件でも受注調整をしていた。読売新聞は、大林組は公取委に共謀を認め申告したと報じた。同社の広報担当者はこの報道にコメントを控えた。公取委の課徴金制度では違反を自己申告すると金額が減免される。

 大手ゼネコンを巡っては90年代に談合事件が表面化。検察の摘発などを受け一時沈静化したが、07年には名古屋市発注の市営地下鉄工事入札でまた談合が発覚。大林組、鹿島、清水、前田建設工業、奥村組の5社が最長9カ月間の指名停止処分を受けるなど不正体質の改善が進んでいないことが明らかになっていた。

3.プロジェクトの性格は

  リニア中央新幹線は基本的にJR東海が一民間企業として開発に取り組んでいる。ただ、日本の技術力の高さを世界に示すプロジェクトであることから、国民的な関心も高い。政府も低利融資で工事推進を側面支援しており、東京-大阪間の開業は最速で37年に前倒しとなる可能性もある。

  民間企業による開発事業とはいえ、リニア新幹線は重要なインフラ整備という面で公共性が高い。開通に向けた大きな課題がトンネルの掘削だ。東京ー名古屋間の9割程度に上る約246キロメートルがトンネルとなり、最深部は地表から1400メートル。長さは英仏を結ぶユーロトンネルの5倍に上り、工事受注業者には高い技術力が求められる。

4.懸念される影響は

  現在のところ、当局による捜査の状況は明らかになっていないが、進展次第ではプロジェクトを遅らせる可能性もある。事件の影響でゼネコン4社がリニア工事に関わることができなくなれば、トンネル工事は深刻な問題に直面すると指摘する専門家もいる。  

  ゼネコン4社は今後、検察により会社関係者や法人が起訴される可能性や、公取委による課徴金や排除措置命令の行政処分を受ける公算もある。JR東海とゼネコンを所管する石井啓一国交相は閣議後会見で、当局の捜査について「事実関係は把握していない。捜査の推移を見守りたい」と述べ、工事への影響には言及していない。

  JR東海の柘植康英社長は13日の会見で、特捜部などの捜査に全面的に協力する一方、「国交省から認可されすでに着工しており、今後も緊張感持ち計画通り着実に進めたい」と述べた。

5.市場の反応は

  問題の表面化以降、ゼネコン4社の株価は軟調に推移している。バリューサーチ投資顧問の松野実社長は「市場は大きく反応していない」と指摘。「この規模のプロジェクトなら談合的要素は必要悪とみて市場は容認しているように感じる」などと述べた。収益への影響も限定的とみている。

6.リニアモーターカー仕組み・開発の現状

  超電導状態のコイルに電流を流し強力な磁界を発生させてその反発力を利用して浮上、走行させる次世代輸送システム。15年4月には鉄道の世界最高速度となる時速603kmを記録。現在の新幹線の約2倍で航空機並みの速度で乗客を一度に輸送できる。

  開発は62年に旧国鉄が着手、JR東海は97年から山梨県で本格的な試験走行を始めた。13年までに総延長42.8キロメートルの走行試験線が完成。試験車両では最大12両編成で実用化に向けた確認試験が実施されている。現在までに多くの試乗会が行われており、14年4月には当時のケネディ駐日大使が安倍晋三首相と共に試乗した。

7.建設コストは

  概算約9兆300億円に上る建設コストは全額JR東海が負担する。中間駅の建設を含む東京-名古屋間の建設費は約5兆4300億円になる見通し。それ以西について当初計画では、長期債務の削減などで最大8年間かけ経営体力を回復させた後に始める計画だった。

  しかし、JR東海は政府による低金利の約3兆円の財政投融資を活用することで、早期に大阪までの工事に着手できるようになった。国土交通省では民間借り入れとの比較で5000億円ほど金利負担が減るものと試算している。

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