「黒船」アリペイ、日本の決済市場で足場固め-地域商店街に浸透図る

  • 中国の電子決済サービス、マーケティング機能が店舗に魅力
  • 日本人向けサービスは「検討しないわけにはいかない」-日本支社長

週末には1日6万人の買い物客で賑わうアメヤ横丁。ここ数年、売り子のダミ声に混じって買い物客の間から中国語を耳にすることが増えてきた。彼らがスマートフォンを片手に探すのは店頭に掲げられた青色のマーク。中国のアリババグループ関連会社が提供する電子決済サービス「アリペイ」のサインだ。

店頭に掲げられた「アリペイ」のサイン

Photographer: Yuki Hagiwara/Bloomberg

  アリペイは店頭でスマホをかざし、QRコード読み込みで決済をするサービス。デパートやブランド店、コンビニエンスストアなどで中国人向け決済事業を展開してきたが、中国人の旅行動向が「買い物」から「体験を楽しむ」に変わるのを背景に、地域や商圏単位での拡充にシフトする。今月10日は、アメ横を含む上野商圏で初の地域をターゲットにしたキャンペーンを展開した。
  
  上野地区で2店舗のディスカウント店を展開する多慶屋の馬躍原営業企画課長は、この動きを歓迎する。アリペイでは決済端末となるスマホのアプリでプロモーションを展開したりクーポンを配布したりできる。世界遺産に登録された美術館、動物園やデパートもそろう上野の魅力を中国の人たちにピンポイントで届けられ、「エリアとしての集客力が高まる」と期待している。

  調査会社セレントの柳川英一郎シニアアナリストは、決済業者が小売店と消費者をつなぎ、マーケティング情報も介在させる試みは日本では遅れているとした上で、アリペイは「得意分野で小売店にベネフィットをもたらす強みがある」とコメントした。

  多慶屋は15年にアリペイ決済サービスを導入しており、今年10月のキャンペーン展開時には前年同月比で2.5倍の売り上げを記録した。馬課長は、「中国人は現金を持たなくなっており、スマホ決済は絶対必要」と呼び掛け、上野商圏で個人商店など16店舗が新たに導入を決めた。

マーケティング機能

  政府は、外国人観光客を2020年に4000万人に、30年に6000万人に増やす計画。日本政府観光局によると、17年1-10月の訪日外国人数は前年同期比18%増の約2400万人、うち中国からの観光客は3割近くを占める。スマホを使ったモバイル決済利用者の割合は、日本の6%に対して、中国は都市部で98.3%に達する。
  アリペイを運営する中国企業、アントフィナンシャルの岡玄樹日本法人社長は、決済手段にとどまらないプロモーション機能が「われわれの最大の武器」として、今後の戦略につなげると10月のインタビューで語った。アプリを開くと、周辺の店や割引キャンペーン、観光スポット情報も表示される。クーポンの利用可能時間を明示すれば、店がすいている時間帯に客を誘導でき、マーケティング機能としても使える。

  地域商圏での展開は、大阪の道頓堀や心斎橋一帯でも進めているほか、将来的にはシャッター通りの商店街に中国人を呼び込み、活気を取り戻してもらうことも視野に入れる。

日本人向けサービス

  日本人向けのサービスについて岡社長は、「日本という市場を検討しないわけにはいかない」としながらも詳細についての言及を避けた。日本はアジアの中でも社会環境が整っており、電子マネーの選択肢が多い中、事業展開を慎重に見極める必要があると述べた。

上野で行われた「アリペイ」のキャンペーン

Photographer: Shiho Fukada/Bloomberg

  アントフィナンシャルは、世界30以上の国と地域で中国人旅行者向けの決済サービスを展開し、5億2000万人のユーザーを抱える。うち韓国や香港、タイやマレーシアなど6つの国と地域では現地に住む人も使えるシステムを提供。現地パートナー企業と合弁を組み、技術面を同社がサポートする形をとっている。合弁先は、SNS運営会社や通信会社、銀行傘下の交通システム提供会社などさまざまだ。

黒船の脅威

  金融や決済ビジネスに詳しいナビゲータープラットフォーム社の泉田良輔アナリストは、既に電子マネー端末を設置した日本の小売店では、決済手段の追加を負担に感じる可能性があると述べた。労働市場のひっ迫から外国人や年配のアルバイトにレジを任せることも多く、複雑な作業を避ける傾向にあるという。消費者が電車と共通で使えるカード使用から切り替えるにも、それなりの恩恵を感じる仕掛けが必要と語った。

  国内では、交通系の「SUICA」や「PASMO」のほか、イオングループを中心とした流通系カード「WAON」など電子マネーの利用が浸透している。また、みずほフィナンシャルグループは、QRコードを利用した日本独自の決済システム「Jコイン」を、三菱UFJフィナンシャル・グループが新しいデジタル通貨「MUFGコイン」の実用化を検討している。

  みずほフィナンシャルグループの山田大介常務は9月、アリペイの急速な普及は「決済業務を主要ビジネスとする銀行にとっては黒船の襲来」であり、日本市場を席巻しようとする動きが「大きな脅威だ」と述べていた。

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