東京地検と公取委が鹿島や清水建を捜索、リニア巡り独禁法違反か

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  • 発注済みの22件中、15件で大林組、大成含む大手ゼネコン4社が受注
  • 国家的プロジェクトで「特捜部の関心の強さ示す」-川島弁護士

リニア中央新幹線関連工事の入札を巡り、東京地検特捜部は18日、公正取引委員会と共同で大手ゼネコンの鹿島と清水建設に家宅捜索に入った。特捜部は既に大林組の本社を偽計業務妨害の疑いで捜索しているが、より捜査の範囲を広げて不正入札の実態解明を進める。

  鹿島広報担当の藤野敦氏はリニア工事に関連して、同特捜部と公取委が午前9時過ぎから本社が家宅捜査に入ったを明らかにした。清水広報担当の丸山潔氏も同様に、同9時半過ぎに捜索を受けている事実を認めた。刑事訴追や行政処分に至れば、各社の事業やリニア計画自体に影響が及ぶ可能性もある。

JR東海のリニア

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  JR東海の資料によると、発注している工事はこれまで22件で、このうち15件で大林組、鹿島、大成建設、清水建設の4社がそれぞれ受注している。共同通信によれば、同特捜部は入札前に受注調整するなど独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いがあるとみて、公取委と連携して解明を急ぐなどと報じた。

  リニア計画は車両を含め総工費が約9兆300億円に上る巨大プロジェクトで、東京-大阪を約1時間7分で結ぶ。2027年に東京-名古屋を先行開業し、45年には東京-大阪の運行を目指す。南アルプスの赤石山脈などを横断するため大半がトンネルとなる。政府による低金利の財政投融資も活用し開業を前倒しする方針だ。

国家的プロジェクト

   独禁法に詳しい柳田国際法律事務所の川島佑介弁護士は、通常は公取委が主導する企業への家宅捜索に特捜部が入ったのは「リニアが国家的なプロジェクトで国民の関心が高いことから、特捜の事件への関心の強さが表れているようだ」と分析。独禁法違反の追及なら1年以内の決着を目指す可能性もあるとみる。

  大林組、鹿島、清水、大成の18日の株価は軟調な動きとなっている。9時過ぎに家宅捜索を受けた鹿島の株価は一時前日比4.6%安になるなど急落した。先週すでに家宅捜索を受けていたことが判明している大林組は一時0.7%安。大成は一時3.9%安、清水も3.7%安まで下げた。

  バリューサーチ投資顧問の松野実社長は、ゼネコン株への影響について、限定的であり大林組の株価には底打ち感さえ感じられると指摘。「特捜部はいつまでも止まない談合体質にお灸を据えたいのであろうが、市場と意識のかい離がある」とし、JR東海としては技術力を伴う大手に受注してもらいたいのが本音だろうと述べた。

  企業法務で実績のあるアイシア法律事務所の小林嵩弁護士は、検察は報道機関に家宅捜索実施を予告していたとの情報もあり、世間の関心を集めたかったと分析。容疑が固まっていないため刑罰に言及するのは時期尚早とし、「公共工事に限らず、民間工事でもに公正かつ自由な競争の妨げとなる構造の暗部にメスを入れ正す狙いがある」との見方を示した。

<主要なリニア工事の受注企業>

企業受注工事名
大林組名城非常口、品川駅(南工区)、東百合丘非常口、名古屋駅(中央西工区)
大成南アルプストンネル(山梨・静岡工区)、導水路トンネル、第一中京圏トンネル
鹿島南アルプストンネル(長野工区)、小野路非常口、中央アルプストンネル(山口)
清水品川駅(北工区)、北品川非常口、伊那山地トンネル(坂島工区)、日吉トンネル

起訴か行政処分か

  川島弁護士は事件のリニア工事について、基本的に民間会社からの発注という立て付けで、今後の対応はJR東海に委ねられるが、「入札の公正性が担保されるまで様子を見るのかJR東海は苦しい判断を迫られる」とみている。起訴に至るかは不明で、行政処分として課徴金納付や排除措置命令を科す可能性もあるという。

  JR東海広報の依田広貴氏によると、これまでに決まっている22件の工事は東京ー名古屋間の一部が対象。同社の柘植康英社長は13日の会見で、特捜部の捜査に全面的に協力する一方、「国交省から認可されすでに着工しており、今後も緊張感持ち計画通り着実に進めたい」と述べた。

  大手ゼネコンを巡っては1990年代に建設受注での談合事件が社会問題化。検察の摘発などを受け一時は沈静化したが、07年には名古屋市発注の市営地下鉄工事入札で談合が発覚。大林組、鹿島、清水、前田建設工業、奥村組の5社が最長9カ月間の指名停止処分を受けるなど不正体質があらためて露呈していた。

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