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東証はガバナンスコードの責任ある審判役に-投資ファンドが注文

更新日時
  • M&Aでは少数株主が不当に不利益被るケースも-ニューホライズン
  • 基準なければ大株主や主力行の意向に逆らえない
Employees work on the trading floor at the Tokyo Stock Exchange (TSE), operated by Japan Exchange Group Inc. (JPX), in Tokyo, Japan.

Employees work on the trading floor at the Tokyo Stock Exchange (TSE), operated by Japan Exchange Group Inc. (JPX), in Tokyo, Japan.

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
Employees work on the trading floor at the Tokyo Stock Exchange (TSE), operated by Japan Exchange Group Inc. (JPX), in Tokyo, Japan.
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

日本の企業合併・買収(M&A)件数が過去最高水準に迫るなか、投資会社ニューホライズン・キャピタルの安東泰志会長は、ファンドなど少数株主が不当に不利益を被るケースが出てきていると指摘。安倍晋三政権の進めるガバナンス改革の実効性を高めるために、東京証券取引所が主体となり、コーポレートガバナンスコード違反を取り締まるべきだと訴える。

  「コードの制定者として、東証は無責任だ。企業行動がコードに照らしてアウトかセーフか、きちんと判断をしてほしい」。東京都顧問でもある安東氏はブルームバーグとのインタビューでこう注文を付けた。例示したのが2017年にパナソニックが上場子会社のパナホームを完全子会社化した案件。パナホームの少数株主だった香港のヘッジファンド、オアシス・マネジメントが「企業価値を過小評価している」と反発、コードの株主平等の原則をないがしろにしていると問題提起した。その後、パナソニックは実質的に買収価格を引き上げた。

  安倍政権は15年、企業の透明性を高め、投資を呼び込む目的でコーポレートガバナンスコードを導入。東証は上場規程の中に位置付けた。しかし、強制力のある法律ではないため厳しい罰則がないのが現状で、コードの実践は株主と企業に委ねるというのが東証の一貫した立場だ。

  コーポレートガバナンスコードは、少数株主を含む全ての株主を実質的に平等に扱うことを求めており、安東氏は「パナホームの件で疑義が出ても東証は何の判断もしなかった。これでは企業がコードは守らなくてもいいんだ、と思っても仕方がない」と懸念する。

なしのつぶて

  ファンド経営者である安東氏自身も過去に東証を頼った。16年10月、ユニー・ファミリーマートホールディングスが子会社で和服販売のさが美を投資会社アスパラントグループへ売却すると決定した際、より高い買収価格を提示したニューホライズンの提案を却下した理由が合理的でなく少数株主の利益を損なうコーポレートガバナンスコードの原則に違反しているなどとして、翌月、東証に対し両社への制裁措置発動を求める要望書を提出した。だが、現在まで東証から反応はないという。

  安東氏は「もちろん投資は自己責任だが審判役は必要だ」と言う。例えば、コードには「独立社外取締役を2人以上選任すべきだ」などの分かりやすい原則もあれば、「株主総会で株主の権利が実質的に確保されるよう適切な対応を行うべきだ」など具体例のない原則もある。後者のような原則で、企業側と少数株主の認識が異なった場合には数の論理で決まってしまうのが現状だ。安東氏は「基準がなければ大株主や主力行の意向に少数株主は逆らえない。コードで形を整えても、実際には機能しない」と懸念を示した。

コードの趣旨理解を

  東証親会社である日本取引所グループ広報・IR部の大籔将貴氏は「違反事例を取り締まることはコードの制定趣旨にそぐわないので、制定趣旨を正しくご理解いただけるよう今後も努めたい」とコメントした。パナソニック広報担当の刑部智恵子氏は「完全子会社化に当たっては、公正性を担保すべく適切な措置をとっており、また、パナホームの少数株主であった方の利益に最大限配慮した価格で実施されたものと認識している」とコメントした。

  ユニファミ広報室の本田勝也氏は「本件については、複数の売却候補者について必要な情報収集と十分な討議を行い、さが美経営陣の意見も踏まえて、経済条件以外の状況も慎重にかつ総合的に勘案した上で判断したものです」と述べた。

  M&A助言のレコフによると、日本企業が関係する2017年のM&Aの件数は11月末時点で2708件と過去最高だった06年(2775件)に迫る。今年は米ベインキャピタル連合による東芝メモリ買収もあって海外ファンドによる買収が金額ベースで前年の4倍近い約3兆円に急増しているのが特徴で、日本企業のガバナンスの国際化も急務となっている。

相次ぐ不正発覚

  また、神戸製鋼所の検査データ改ざんをはじめ、名門企業での相次ぐ不正発覚について安東氏は「神戸製鋼のケースはガバナンスの形はあるが中身が伴っていない、まさに仏作って魂入れずの典型だ」と断じる。「大手製造業では購買、製造、設計、販売など組織が縦割りになっていて情報交流がなく、現場の判断でやってしまうことがある。経営陣は不正を知らなかったから許されるものではない。むやみな収益プレッシャーが要因となり得ることも自覚すべきだ」とした。安東氏は04年に再生ファンド社長として三菱自動車工業の再建に関わった経験を持つ。

(第10段落に神戸製鋼についてのコメントを追加しました。.)
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