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独立貫けるか、データ改ざんで揺らぐ神戸鋼-再編や事業分割の見方も

  • 業界再編の中で堅持してきた独立路線の転換迫られる可能性
  • 神戸鋼から支援要請あればJFEHDは「話に応じる」-関係者
Signage for Kobe Steel Ltd.

Signage for Kobe Steel Ltd.

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
Signage for Kobe Steel Ltd.
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

112年の歴史を誇る神戸製鋼所で発覚したアルミニウムや銅製品などでの検査データの改ざん問題。業界再編の流れから距離を置いてきた神戸鋼だが、堅持してきた独立路線の転換を迫られる契機となる可能性もある。

  鉄鋼業界は国内外で合掌連衡が進んだ。2002年には川崎製鉄とNKKが経営統合してJFEホールディングスが誕生。12年には新日本製鉄と住友金属工業が合併し、新日鉄住金が発足した。海外では06年にオランダのミタル・スチールがルクセンブルクのアルセロールを買収し、国境を超えた再編も起きている。中国の鉄鋼メーカーの存在感が増す中、国際競争力を高めるためにも規模拡大を追求してきた。

粗鋼生産の国内シェア

  株式調査会社グロース&バリュー・ストック・リサーチの井原翼代表は「高い技術者を抱える神戸鋼は新日鉄住金やJFEHDにとって魅力的」と話す。神戸鋼の持つアルミ事業は自動車の軽量化が進展する中で重要性が増し、強みを持つ自動車のエンジンや足回りに使用される鉄鋼製品の線材には事業価値があると指摘する。

Kobe Steel Ltd. Plants And Headquarters As Scandal Expands To Its Core Business

神戸製鋼所・神戸本社

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  実際、JFEHDは神戸鋼に対して経営統合を持ちかけた「実績」がある。関係者によると新日鉄住金が誕生した後の15年、神戸鋼に対して経営統合を打診した。神戸鋼が自主独立方針を崩さなかったため、当時はトップ交渉には至らなかったという。同関係者は現時点では神戸鋼への再編の働きかけについては「持ちかけることはなく、当面は様子見」と明かす。一方、仮に神戸鋼の経営状態が悪化し、支援要請などがあった場合には「もちろん話に応じる」とも語った。

  神戸鋼と株式を相互に持ち合い提携関係にある新日鉄住金の進藤孝生社長も「神戸鋼からの支援要請があれば検討し、対応していく」との考えを示している。ただ、新日鉄住金と神戸鋼が統合した場合、主力商品の一つである線材の国内シェアが高くなり過ぎるとの懸念もある。経営統合に発展するならばJFEHDの方が相乗効果が高いというのが市場の見方だ。

安全性の確認進む

  神戸鋼によるデータ改ざん製品に関する顧客との安全性の確認は進んでいる。1日時点では納入先525社のうち93%に当たる487社で安全性の確認を終えた。一方、懸念されるのは契約と異なるデータ改ざん製品を納入した企業からの損害賠償請求。また、米司法省からは拒否時に罰則が付く召喚状での書類提出も求められている。損害額がどの程度膨らむのかは不透明だ。

  立花証券の入沢健アナリストは、顧客企業が検査に費やした費用など神戸鋼が負担する費用の総額が数百億円規模にとどまれば、単独での存続は可能との見方を示す。「不安材料は米国政府や海外企業からの高額の罰金や補償を求められること」と指摘。現時点では実現性は低いとしながらも「会社がもたない規模の損失が発生した場合には解体につながる可能性も否定できない」。

Kobe Steel Ltd. Plants As Scandal Expands To Its Core Business

神戸鋼・加古川製鉄所

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  ジェフリーズ証券のアナリスト、タン・ファム氏は神戸鋼について、鉄鋼や電力、建機などの事業ごとに切り離した方が会社全体の価値よりも高いと試算する。たとえ今回の事態を乗り切ったとしても将来的には事業環境の厳しさなどから事業売却や再編を迫られる時期は来ると指摘。「神戸鋼は変化するための好機として現在の状況を生かすべきだ」と話す。どの部門にとっても収益環境は良いことから、事業部門ごとの再編に乗り出すには最適のタイミングと見る。

2016年の粗鋼生産トップ10

  神戸鋼との再編の可能性についてJFEHDの広報担当者は「現時点では検討していない。そうした話があれば検討はする」とコメント。一方、新日鉄住金の広報担当者は「仮定の話についてはコメントできない」と述べた。神戸鋼・広報担当者はデータ改ざん問題への対応や再発防止策に取り組むことが最優先課題とした上で「中期経営経営で掲げた戦略に変更はない」と説明した。

  再編の動きは直近でも進む。新日鉄住金は今年3月、株式公開買い付け(TOB)によって日新製鋼への出資比率を51%に引き上げ、子会社化した。16年の新日鉄住金の粗鋼生産量は世界4位。10年前に3位だったJFEHD傘下のJFEスチールは8位にとどまる。トップ10のうち5社を占める中国勢は再編をさらに進める方針で、競争力の強化を図っている。

Kobe Steel Ltd. Chief Executive Officer Hiroya Kawasaki Holds News Conference

会見する川崎会長兼社長

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  「再編は一切考えていない」。昨年4月の記者会見で神戸鋼の川崎博也会長兼社長はそう言い切った。鉄鋼事業の規模は小さいものの、アルミ事業を抱えることから複合素材を提供できる独自の強みに加えて圧縮機や建設機械などの機械系事業、電力事業の3本柱で「神戸鋼単独で十分会社としての体をなす」との判断があった。危機的な事態を自ら招いたことで、同社を取り巻く環境は一変した。

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