黒田日銀総裁悩ます携帯料金下落、震源は安倍首相-物価上昇の障壁に

  • 携帯電話の通信料は前年同月比5.2%下落し、25カ月連続の下落
  • 政府は2%物価目標達成を優先的に考えてない-野村総研の木内氏

黒田日銀総裁

Photographer: Alex Kraus/Bloomberg

携帯電話通信料の下落が止まらず、政府と日本銀行が目指す2%物価目標の足かせとなっている。通信料引き下げの動きは安倍晋三首相の呼び掛けで始まった経緯があり、政権自身が物価上昇を妨げた格好だ。

  総務省が1日発表した10月の消費者物価指数によると、携帯電話の通信料は前年同月比5.2%下落し、25カ月連続の下落となった。消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)は0.8%上昇だったが、エネルギーと生鮮食品を除いたコアコアCPIは0.2%上昇にとどまる。

  通信料下落は安倍首相が2015年9月、経済財政諮問会議で携帯電話料金の負担軽減策検討を指示した翌月から続く。安倍首相の指示を受けて総務省が設置した有識者会議は同年12月、利用量の少ないユーザー向け料金導入や格安スマートフォンを手掛けるMVNO(仮想移動体通信事業者)との競争を促進すべきだと提案。政府の動きを受け、大手携帯通信各社も通信料割引につながるプランを提供し始めた。

  前日銀審議委員で野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは政府の方針が「携帯電話通信費の値下げの一つの背景を成しており、それが消費者物価の上昇を妨げる要因にもなっている」と指摘。「政府が日本銀行の2%の物価目標達成を助けることを必ずしも優先的に考えてない証左ともいえる。政治的にはデフレ脱却は良いが2%の物価上昇は国民から支持を得ていない」と述べた。

  日銀は10月の経済・物価情勢の展望(展望リポート)で、17年度の消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)前年比の見通し(政策委員の中央値)を7月時点の1.1%上昇から0.8%上昇に下方修正した。通信料下落については「一時的要因」「部門ショック」と表現し影響は限定的と位置付けたが、黒田総裁は発表後の会見で下方修正の「最大の理由は、携帯電話の通信料が大幅に下がったこと」と説明した。

  黒田総裁は15年9月の会見で、安倍首相の通信料引き下げを促す方針について「消費者の選択の余地を拡大し、実質所得を増やすことは、長い目でみて、物価を好循環の下で2%に向けて引き上げていく面でもプラスになる」と発言していたが、依然として効果は出ていない。

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