ことし最大IPO、「佐川急便」に3割高予想-黒猫離す飛脚の収益力

  • SGホールディングスの営業利益率予想は5.8%、ヤマトHD1.7%
  • 海外・企業向けシフトは道半ば、業界の人手不足問題にはなお懸念

宅配便の佐川急便を傘下に置き、資金吸収額でことし最大の新規株式公開(IPO)となる公算のSGホールディングス株について、最大3割上昇するとの見方が市場で出ている。競合に勝る収益力や企業向けビジネスの成長性が評価の背景だ。26年ぶりの高値を付けた日本株の好調や世界経済の回復も後押しする。

  京都ー大阪間を結ぶ飛脚業として60年前に創業したSGHDは、12月13日に東京証券取引所に上場予定。売り出し価格は承認時想定の1580円に対し仮条件は1540ー1620円、4日に正式決定する。国内外での売り出し株数から試算した資金吸収額は最大1276億円、2017年のIPOでは3月に東証1部へ再上場した回転ずしチェーンのスシローグローバルホールディングス(761億円)を上回り、トップとなる。

  ことしの日本株は北朝鮮や為替の円高リスクが警戒され、8月まで世界の株式に対し出遅れたが、海外投資家の積極的な買いで一変。TOPIXは1991年以来の高値を付けた。年初来上昇率は11月30日時点で18%。一方、陸運株指数は7.3%上昇と東証33業種でワースト6位。ドライバー不足や人件費問題で収益性が悪化し、4.3%下げた「クロネコ宅急便」のヤマトホールディングスが足を引っ張る。ただ、競合の中でも海外や企業向けに注力した日本通運は14%上げており、中期経営計画でグローバル物流ネットワークの確立を掲げるSGHDにも先高期待がある。

配送準備中の佐川急便荷物

Photographer: Noriyuki Aida/Bloomberg

  いちよしアセットマネジメントの秋野充成執行役員は、SGHDは海外ビジネスへの注力で「世界の景況感が拡大するステージではアウトパフォームしやすい」と指摘。株価基調が弱い競合のヤマトHDを買いにくい分、「比較的割安感があり、短期的に人気化するのではないか。3割程度は上昇する」と予想した。

  SGHDの18年3月期の売上高計画は前期比7.5%増の1兆円、営業利益は17%増の580億円、営業利益率は5.8%の見通し。1株利益106.31円、配当32円を見込む。想定売り出し価格を基準にした予想PERは14.9倍、配当利回りは2%。ヤマトHDは今期28%の営業減益を計画し、営業利益率1.7%、ブルームバーグ・データによる予想PERは50倍、12カ月配当利回り1.2%だ。今期2割の営業増益計画の日通も16倍と1.7%で、SGHDの投資指標は両社より割安に位置する。 

  しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹運用部長は、SGHD株は「18年3月期が10%増益だと、1750円ぐらいが現実的なところ。それがさらに、次の期もある程度増益が見込めるというのであれば、プレミアムを付けて1年後ぐらいまでに1900円への上昇があってもおかしくない」と話す。日本アジア証券の清水三津雄エクイティ・ストラテジストも、企業物流重視や海外進出を考えれば、「18年末までに2000円程度までの上昇はあってもいい」との見方だ。

配送を急ぐ宅急便ドライバー

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  SGHDは4年前に世界的ウェブ通販のアマゾン・ドット・コムとの契約を解消、収益性重視の方針に転換した。16年3月には荷主企業に代わり効率的な物流提案を行い、包括的に受託するサードパーティーロジスティクス(3PL)が強みの日立物流と資本業務提携し、数年後のシナジー効果をみながら経営統合も視野に入っている。

  個人向け依存からの脱却を図った点に市場関係者の評価は高い。レオス・キャピタルワークスの渡邉庄太運用部長は、「B(ビジネス)から発生した荷物をBに届けるところが荷物の量が一番安定する」し、3PLでの事業効率化や付加価値提案もしやすいと指摘。電子商取引の拡大で「物流量が確実に増え続ける中、どこで勝負するかの違い」が株価に反映されるとみる。その上で、「ヤマトとの相対観で言うと収益性が高く、それを評価する向きは一定程度ある」と話した。

  とはいえ、今期売上高の事業別見通しは飛脚宅配便などデリバリー事業が77%、海外や企業向け物流を含むロジスティクス事業は13%と「アジアを代表する総合物流企業グループ」を掲げた長期経営ビジョンは道半ば。ミョウジョウ・アセット・マネジメントの菊池真代表取締役は、「海外の評価は実績が出てこないと評価できず、ポテンシャルとして考えるしかない。それをもってプレミアムを乗せるという話には早い」と言う。

  物流セクターに弱気のビスタマックス・ファンド・アドバイザーズの藤原正邦代表は、「ネットトレードの広がりで仕事がくるのはいいが、人手不足で逆にコストがかかるという点は解決されていない。ガソリン価格も今後上昇するイメージで、コスト増につながる」と懸念を示す。

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