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中曽日銀副総裁:政府による成長戦略も金融安定にとって重要

更新日時
  • プルーデンス政策だけでは限界、潜在成長率低下が「慢性ストレス」
  • 10月にはデフレ脱却に前向きな見通し、緩和修正の地ならしとの見方

日本銀行の中曽宏副総裁は「政府による成長戦略も金融安定にとって重要」との見方を示した。29日午後、都内で講演した。

  中曽氏は、金融システム全体のリスクを分析し、制度設計や政策対応を行うプルーデンス政策だけでは「金融安定を達成しようとするのには限界がある」と説明。潜在成長率や自然利子率の低下が金融システムの「慢性ストレス」となっており、引き上げのための成長戦略が重要だと指摘した。

  また人口や企業数減少で地域金融機関が低収益性や競争激化に苦しんでいることが「従来とは異なる姿形をした金融脆弱(ぜいじゃく)性」だと述べた。地域金融の資本と流動性は十分としつつ、地域経済を支える役割を果たすためには「問題に適切に対処していくことが必要」との見方を示した。

  講演後の質疑応答では、金融緩和からの出口戦略について米連邦準備制度理事会(FRB)の事例が参考になると説明。市場参加者と対話しながら「適切に対応していくことは可能」と述べた。

  中曽副総裁は10月、ロンドンとニューヨークでも講演し、デフレ脱却に前向きな見通しを示したことで、長短金利操作付き量的・質的金融緩和の修正に向けた地ならしとの見方が出ていた。日銀の事情に詳しい複数の関係者によると、来年3月に任期満了を迎える中曽副総裁は今回の講演を含めた「三部作」の作成に数カ月を費やしたという。ブルームバーグの次期総裁予想では黒田東彦総裁に次ぐ2番手につける。

夜明け

  10月5日のロンドンの講演では、飛鳥時代の歌人、柿本人麻呂が夜明けの様子を歌った「東の野にかげろひの立つ見えてかへり見すれば月かたぶきぬ」という和歌を引用し、現在の日本経済に近い「情景」と分析した。経済データを並べた図表の最後には、夜明け間近に東の空が紫色に明るくなっていく景色を描いた自筆の絵を掲載して話題を呼んだ。

  18日のニューヨークでの講演では、望ましいイールドカーブ(利回り曲線)を判断するため日銀が計測している「均衡イールドカーブ」に言及した上で、「必要であればイールドカーブの形状についても調整を行っていく方針だ」と述べた。

  みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは15日付リポートで、中曽副総裁の発言について「金融引き締め方向の政策変更を行う意欲を日銀は失っていない」という注意喚起の意味合いがあると指摘。物価が近い将来2%目標に接近していく確信に基づいて「計画的に地ならしを行ったものだとは考えにくい」としている。

(3、4段落に地域金融と出口戦略についての発言を追加しました.)
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