ホック・タン氏が2013年以降にまとめたディールは計9件、金額ベースで500億ドル(約5兆6600億円)余りに上る。半導体メーカー、ブロードコムの最高経営責任者(CEO)を現在務めるタン氏は譲歩や追加資金、意志力あるいはその全てを駆使してやり遂げてきた。

  ただ、同氏の新たな標的である米クアルコムを支配下に置くのはそれほど簡単ではない。クアルコムは13日、ブロードコムから提示された1050億ドル(1株当たり70ドル)の買収案について、金額が低過ぎ、規制上の不確実性を大きく高めるとして拒否した。事情に詳しい関係者によると、タン氏は昨年、非公式にクアルコムに接触しており、断られるのはこれで2度目だ。同氏は13日、クアルコム買収に向けた決意をあらためて表明した。

ホック・タン氏
ホック・タン氏
ソース:Broadcom

  テクノロジー業界で過去最大規模の買収実現に向けてタン氏(65)が取り得る選択肢は、買収条件を引き上げるか、クアルコムの株主に直接訴えるかだ。同氏は半導体メーカーは本業に集中すべきだとする業界の常識に反する構想を掲げており、携帯端末向け半導体で最大手のクアルコムは最近ではサーバーや乗用車、パソコンの分野への転換を図り始めている。

  米プライベートエクイティ(PE、未公開株)投資会社シルバーレイクのマネジングパートナー、ケン・ハオ氏は「タン氏は半導体業界が成熟しているとの認識からスタートしている」と指摘。「成長期とは異なる方法で事業が運営される必要がある」と述べた。シルバーレイクは過去にタオ氏と協力したことがあり、ブロードコムによるクアルコム買収案を支持している。

  マレーシア生まれのタン氏はハーバード大学経営大学院で経営学修士号を取得した後、ペプシコやゼネラル・モーターズ(GM)の財務部門に勤務。1994年に半導体メーカーのインテグレーテッド・サーキット・システムズに入社し、最終的にCEOとなった。在職中に同社は非公開化と再上場を経て、売却された。

  その成功をきっかけにタン氏はシルバーレイクやKKRに注目されるようになった。両社はヒューレット・パッカード(HP)から分社したアバゴ・テクノロジーズの責任者に同氏を起用。同氏はアバゴを通じ、かつては業界の有力企業に所有されていた会社を次々と傘下に収め、ブロードコムを昨年買収した。

  当時の監督当局への届け出によれば、タン氏がブロードコムのスコット・マクレガーCEOに最初に電話してから合意を発表するまでに要した時間は1カ月半。タン氏は同社創業者のヘンリー・ニコラス、ヘンリー・サミュエリ両氏に身売りを決意させ、サミュエリ氏は最高技術責任者(CTO)として同社にとどまることにも同意した。事情に詳しい関係者によると、タン氏はブロードコムの名前を残すことで摩擦の可能性を回避したという。
 
  クアルコムの幹部を説得するのはずっと難しいだろう。ポール・ジェイコブズ執行会長は創業者アーウィン・ジェイコブズ氏の息子で、無線技術がいかに未来を変えるかについて語るのが大好きだ。スティーブ・モレンコフCEOは半導体設計を手掛けてきた。クアルコムの取締役会メンバーとしてブロードコムの提案について票を投じる両氏はタン氏より10歳以上若く、これまでのように簡単に排除することはできないだろう。

  今後数カ月がヤマ場となるのは間違いないが、「実現への確かな道があると信じている」とタン氏は語った。

原題:Broadcom’s Tan Got His Way on Deals; Then He Targeted Qualcomm(抜粋)

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