輸入化石燃料への依存度軽減に向けた再生可能エネルギーの利用促進策が、熱帯雨林などの破壊につながり環境問題の一因と指摘されているパーム油を燃料に使う発電所計画が増えるという皮肉な結果をもたらしている。

  東日本大震災後、政府は化石燃料に変わる代替エネルギーの利用を促進するため2012年に再生可能エネルギーの買い取り制度を導入した。最近は、主要な再生可能エネルギーである太陽光発電に適した場所が少なくなり買い取り価格も低下してきたことから、バイオマス発電案件の認定が増えている。

  今年3月末までに経済産業省の認定を受けたバイオマス案件のうち、輸入に頼っているパームヤシ殻や木質ペレットなど「一般木材」を燃料とする案件は出力ベースで9割以上を占めた。その中でもパーム油を使う案件は出力ベースで38%(約400万キロワット)となっている。 

  これは「制度的欠陥」を示唆していると、民間非営利団体(NPO)「バイオマス産業社会ネットワーク」の泊みゆき氏は語る。「そもそもバイオマス発電で期待されていたのは未利用材の活用だった。日本にたくさんある人工林がうまく利用されていなかったので、ある程度使うことができればということで買い取り制度が設定された」と指摘する。

  NPOの「憂慮する科学者同盟」によれば、特にパーム油は、ヤシ栽培により熱帯雨林が破壊されるほか泥炭地から二酸化炭素(CO2)が排出されることを考慮する必要がある。パーム油の主要生産国はマレーシアとインドネシア。

  こうした指摘に対し、事業者はパーム油を巡る環境問題は今後取り組むべき課題と捉えている。国内2カ所でパーム油を燃料とする発電事業を手掛けるエナリスは、食用パーム油を精製する際の副産物で主に工業用に利用されるパームステアリンを使用していると説明。ヤシの栽培が熱帯雨林などの破壊とCO2排出につながるとされている問題について、一事業者として、こうした課題に関して情報を収集するとともに、今後の日本政府の考え方や指導などを注視していくと電子メールで回答した。

稼働実現は2-3割以下か

  バイオマス発電協会常務理事の池田力氏は10月に開かれた経産省の委員会で、パーム油による発電事業について、まだ運転を開始した案件が非常に少ない中、楽観的な観測で事業を計画している業者も多いと指摘。実際に稼働にこぎ着けるのは予定されている2-3割、もしくはそれ以下になるとの見通しを示した。

  自然エネルギー財団の上級研究員、相川高信氏はリポートで、欧州委員会の委託で実施された最新の調査でも、パーム油のバイオ燃料としての消費が引き起こす土地利用変化によるCO2排出量は、他のどの原材料よりも多く、石炭の燃焼による排出量を大きく上回っていると指摘。取材に対し、そもそも一般木材に想定されていたのはペレットなどの固体バイオマス燃料であり、世界的に見てもパーム油は発電用にはほとんど利用されていないと述べた。

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