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スプリント再生に試練、大胆な孫氏に残された厳しい選択肢

更新日時
  • Tモバイルとの合併交渉打ち切り、経営権巡り両社譲らず
  • スプリントの再生に孫氏の選択肢は限られる
孫正義氏

孫正義氏

Photographer:Kiyoshi Ota/Bloomberg
孫正義氏
Photographer:Kiyoshi Ota/Bloomberg

名うてのM&A(企業の買収・合併)仕掛け人である孫正義氏は自ら苦しい立場に身を置くことを選んだ。

  孫氏(60)が会長兼社長を務めるソフトバンクグループは、傘下で米携帯電話4位のスプリントと同3位のTモバイルUSとの合併交渉を4日に打ち切った。孫氏が統合会社の経営権を相手方に譲り渡す案に最後まで二の足を踏んだ結果だった。

  孫氏にとって厳しいのは、現実問題としてスプリントが独力ではどうにもできないということだ。同社は10年にわたり年間で黒字を確保したことがなく、380億ドル(約4兆3400億円)の債務を抱えている。業界大手と競争するため次世代無線技術に巨額投資を必要としているにもかかわらず、債務の約半分は今後4年間に返済期限を迎える。

  孫氏はスプリントの経営を軌道に乗せるため、別のパートナーとの大胆なM&A案件を成功させるか、スプリントの債務返済に加え、2021年にかけて約250億ドルとアナリストらが試算するネットワーク投資のためにソフトバンクの財力に手をつける必要がある。孫氏の交渉力と強い意志が試される状況だ。

  BTIGのアナリスト、ウォルト・ピエシク氏は「現時点で孫氏は戦略オプションを放棄し、スプリントのネットワークとブランドの競争力向上のため地道に米国に投資せざるを得ないだろう」と語った。
            

Fleeing Sprint Investors

  スプリントとドイツテレコム傘下のTモバイルUSは4日、合併交渉を打ち切ると共同で発表した。障害になった理由などの詳細には言及しなかった。関係者によると、孫氏とドイツテレコムのティム・ヘットゲス最高経営責任者(CEO)は3日夜、東京でのディナーの席で統合新会社の経営権を巡って最後の努力を重ねたが、解決には至らなかった。
          
  ソフトバンクは6日に4-9月期決算を発表するが、スプリントに関して質問を浴びるのは避けられない情勢だ。スプリントは近く投資家説明会を開き、マルセロ・クラウレCEOが米国で単独で戦う戦略の詳細を明らかにする見通し。事情に詳しい複数の関係者が非公開情報だとして匿名を条件に語った。

  スプリントは米携帯電話大手4社の中で最も多くの周波数帯ライセンスを保有している。ただ、周波数帯で優位な立場にあっても、ネットワークの改善に十分な資金を投じてこなかった。ピエシク氏によると、Tモバイルが過去12カ月間でネットワークに60億ドルを投資したのに対し、スプリントは25億ドル未満。追いつくには「設備投資を2倍以上増やさなくてならないが、営業キャッシュフローから資金を捻出することはできない」という。

  スプリントは今後4年間に190億ドルの社債償還とローン元本の支払期限を迎える。ブルームバーグインテリジェンスのアナリスト、スティーブン・フリン氏によると、スプリントの17年度のフリーキャッシュフローは5億ドル未満と見込まれるのに対し、無線ネットワーク関連の設備投資は総額約37億5000万ドルに達する見通し。

  ソフトバンクの株主はスプリントに対する財政支援を想定してない。スプリントの債務は親会社が返済義務を負わないノンリコース型だからだ。ソフトバンクも、自ら長期債務を14兆9000億円抱えており、財政支援にほとんど関心を示していない。

  ジェフリーズ証券のアナリスト、アツール・ゴーヤル氏は、「3年たってもこうした交渉は続いており、孫氏は自らを興奮させるようなテクノロジー投資案件に思いを巡らせているというよりも、スプリントに悩ませられていることだろう」と語った。

原題:SoftBank’s Audacious CEO Now Has Hard Choices to Make on Sprint(抜粋)

(6段落目以降を追加して更新しました.)
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