日本銀行の黒田東彦総裁は指数連動型上場投資信託(ETF)の「年間約6兆円」買い入れ方針について「実際の買い入れ額は市場の状況に応じて変動する」との認識を示した。

  黒田総裁は31日の金融政策決定会合後の記者会見で、ETFの「目標の達成期間について特定の時点を定めているわけではない」と言明。株式市場におけるリスクプレミアムに働きかける観点から実施している「ETF買い入れの趣旨、あるいは買い入れ方針を踏まえつつ、今後とも適切に買い入れを進めていきたい」と述べた。

  日銀は株価が高水準で推移する中、今月に入ってETFの買い入れを見送り、30日に初めて従来型のETF709億円を購入した。日経平均株価は今月24日まで、過去最長となる16連騰を記録。市場関係者からは、大規模なETF購入の継続には限界があると指摘する声も出ていた。黒田総裁は6月の記者会見で2%の物価安定目標達成前に購入を減らす可能性に言及していた。

  黒田総裁はETF購入の是非は量的・質的金融緩和の枠組み「全体の中で議論されていく」としながらも、将来何らかの調整を行う場合に、「全体の要素すべてが同時に調整される必要も別にない」とも指摘。その上で、「全体のパッケージの中で、その必要性に応じて検討されていくということだと思う」と語った。

  日銀は31日の決定会合で、長短金利操作付き量的・質的金融緩和の枠組みによる金融調節方針の維持を8対1の賛成多数で決定した。誘導目標である長期金利(10年物国債金利)を「0%程度」、短期金利(日銀当座預金の一部に適用する政策金利)を「マイナス0.1%」といずれも据え置いた。長期国債買い入れ(保有残高の年間増加額)のめどである「約80兆円」も維持。ETFや不動産投資信託(J-REIT)の買い入れ方針にも変更はなかった。

  一方で、片岡剛士審議委員は前回に続き反対。「15年物国債金利が0.2%未満で推移するよう長期国債の買い入れを行うことが適当である」ことを理由として挙げた。オーバーシュート型コミットメントを強化する観点から、国内要因により物価目標の達成時期が後ずれする場合には「追加緩和手段を講じることが適当」であり、これを声明文に記述することが必要とも主張した。

想定の範囲内

  同時に発表した3カ月に一度の経済・物価情勢の展望(展望リポート)では、17年度の消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)前年比の見通し(政策委員の中央値)を7月時点の1.1%上昇から0.8%上昇に下方修正した。18年度も1.5%上昇から1.4%上昇に下方修正、19年度は消費増税の影響を除き1.8%上昇に据え置いた。「19年度ごろ」としている2%達成時期は維持した。

  黒田総裁は会見で、物価は弱めの動きが続いており、下振れリスクの方が大きいとした上で、物価見通しを引き下げた理由について「携帯電話通信料の大幅に下がったこと」を挙げた。展望リポートでは、「企業の賃金・価格設定スタンスが積極化してくるまでに時間がかかる」との見方を改めて示した。
  
  野村証券の桑原真樹シニアエコノミストは発表後の電話取材で、物価見通しの下方修正は「想定の範囲内」と指摘。日銀は昨年9月の総括的な検証により長期戦に移行しており、物価見通しは「下方修正し続けないといけない」と述べた上で、黒田総裁の任期が終わるまでよほどのリスクがない限りは現状維持が続くと予想した。

  ブルームバーグがエコノミスト43人を対象に23-24日に行った調査では、全員が今回の会合での金融政策の現状維持を予想。緩和に積極的なリフレ派として知られる片岡氏の対応が注目されていた。黒田総裁は就任直後の13年4月、2%の物価安定の目標を2年をめどに達成すると宣言、4年半が経過したが物価は低迷している。  

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  会合結果の発表前は1ドル=113円10銭前後で取引されていたドル円相場は午後7時現在、113円25銭前後で推移している。決定会合の「主な意見」は11月9日、「議事要旨」は12月26日に公表する。

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