取るべきリスクは為替か貸し倒れか、生保悩ますヘッジコスト上昇

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  • 日本生命は新規資金の大半をオープン外債に-下期計画
  • 為替ヘッジして海外で信用リスクを取る-住友生命
Photographer: Mario Tama/Getty Images

主要な生命保険会社4社の2017年度下期(17年10月-18年3月)の運用計画が25日、出そろった。外国債券への投資に伴う為替差損の回避(ヘッジ)コストの上昇にどう対処するか。日本生命保険第一生命保険の打開策は住友生命保険とは対照的な内容だ。

  ブルームバーグのデータによれば、米10年物国債利回りから為替ヘッジコストを差し引くと、年0.47%程度しか残らない。3月には1%を超えていたが、米長期金利の伸び悩みと連邦準備制度理事会(FRB)の利上げを受けたヘッジコストの上昇で低下。主要生保4社が低金利を理由に保有残高を抑制している日本国債の20年物利回り(0.6%程度)をも下回っている。

  日本生命は下期に約8400億円と見込む新規資金の大半を、為替ヘッジをかけないオープン外債に投じる。ヘッジ外債はコストの上昇を見越して上期に前倒しで5100億円積み増しており、下期は減らす計画だ。第一生命は上期にヘッジ外債の残高を減らし、オープン外債は増やした。下期も金利・為替の水準次第だが、同じ方向になる可能性が高いという。

  為替ヘッジのコストは国内外の短期金利差と、通貨間の需給格差の合計で決まる。3カ月物の金利差は1.4%程度と、米利上げ開始前に当たる2年前より約0.5ポイントも拡大。円をドルに交換するためのベーシススワップも0.5%近く必要だ。

  オープン外債は円高が大幅に進むと、為替差損を被る恐れがある。ただ、第一生命の重本和之運用企画部長は、米国が利上げしている間は日米金利差が拡大して円安基調が続く公算が大きいと指摘。円安局面が終わったら「為替ヘッジをかけるなり、金利が低くても円債を買う」可能性があると説明した。日本生命の秋山直紀財務企画部長は、地政学的リスクの高まりを受けた円高は長続きしないことが多いと述べた。

  ユーロ圏の債券に対する投資では、足元では欧州中央銀行(ECB)のマイナス金利政策を背景に為替ヘッジのコストがかからない相場環境だが、ECBは来年から量的緩和を縮小する見通しだ。明治安田生命保険の山下敏彦執行役副社長は記者説明会で、国内外の経済・金融環境を踏まえると「ヘッジコストは対ドル、対ユーロとも、これから高くなると見ておいた方が良い」と述べた。

ヘッジ付き外国社債

  ヘッジ付き米欧国債の見通しが悪化する中、住友生命はオープン外債ではなく、信用リスクの見返りに高い利回りが得られるモーゲージ債や社債などを、あくまでヘッジ付きで積み増す。松本厳上席執行役員兼運用企画部長は、下期に「数千億円」と見込む新規資金の多くを外債の残高増に振り向けると表明。外国株式等に区分するバンクローンのファンドを含めると、積み増しのほとんどが外貨建て資産になると述べた。

  「米10年債利回りが2.3%前後なら、格付けがA格の米社債は1%ポイント程度の上乗せ金利(スプレッド)が乗るので、ヘッジコストが約2%なら1.3%前後のリターンが得られる」と、松本氏は説明。オープン外債は円高・ドル安局面で「少し拡大」するが、日米金利差の拡大を背景に1ドル=110円を超える円高は期待しにくくなると読んでいる。

  かんぽ生命保険も上期、下期ともヘッジ外債を積み増す。米国債ではなく信用スプレッドが取れる債券が中心なので、ヘッジコストを差し引いても、まだ円債よりは有利な水準だと言う。オープン外債は上期は微減で、下期は横ばいの計画。円安基調だが1ドル=125円を目指すほどの勢いはないとみているためだ。一時的に円高に振れる場面があれば、残高積み増しに動く。

  明治安田生命は今年度の投資財源2兆円の約4割に当たる8000億円程度を、国内外の金利と為替動向に応じて円債、ヘッジ外債、オープン外債に機動的に配分する。うち、上期には2000億円前後しか使っていないと言う。山下氏は国内は超低金利環境が続くとみるが、円建て公社債が外債より有利な場合は買い入れていくと語った。

外債積み増しに慎重

  財務省の統計によれば、生保の海外中長期債の買越額は上期に1兆7706億円と前年同期の約4分の1にとどまった。日本銀行の大規模な金融緩和策を受けた国内金利の低迷を背景に、生損保による超長期債の買越額は上期に1兆2391億円と10年ぶりの低水準を記録。それでも、生保は外債の積み増しに慎重姿勢を強めている。

  生保の資産運用はALM(資産・負債の総合管理)が基本。保険商品の契約者に支払う長期・固定の円建て負債に見合う、円建てで残存年限が長く、安定的な収益が見込める資産が中心となる。債券を償還まで保有すれば金利上昇時の評価損を免れる「責任準備金対応」など、会計上の優遇措置もある。本来は超長期国債が最優先の投資対象だが、歴史的な低金利下でヘッジ外債が代替手段となってきた。

2017年度下期の運用計画


国内債券外国債券ヘッジ外債オープン外債国内株式外国株式
日本生命横ばい増加減少増加横ばい増加
第一生命減少横ばい金利水準次第為替水準次第株価水準次第増加
明治安田横ばい増加横ばい横ばい
住友生命横ばい増加増加やや増加横ばい横ばい
三井生命▲数百億円台前半増加横ばい+千億円台後半横ばいN.A.
大同生命横ばい増加増加増加

2017年度予想


国内金利(%)米国金利(%)日経平均(円)ダウ(ドル)ドル円(円)ユーロ円(円)
日本生命▲0.20-0.20(0.00)2.00-3.00(
2.50)
18000-22000(20000)20000-24000(22000)100-120(110)110-140(125)
第一生命▲0.10-0.30(0.10)2.00-3.00(2.50)17000-23000(21000)19500-25000(23000)100-125(115)115-145(135)
明治安田▲0.10-0.00(▲0.10-0.00)2.00-3.00(2.50)19000-23000(21000)20000-25000(23500)101-121(115)120-145(135)
住友生命▲0.10-0.20(0.10)1.80-2.80(2.50)18500-24000(21500)20000-24000(23000)100-120(115)115-140(136)
三井生命▲0.10-0.20(0.10)1.80-2.60(2.30)19700ー22000(21000)20000-24000(22200)108-118(113)127-142(135)
大同生命▲0.05-0.15(0.10)2.0-2.6(2.5)18000-23000(21000)20500-24750(23000)107-117(115)126-138(132)

※日本生命、三井生命は18年3月末のレンジ(18年3月末の中心)
※第一生命、明治安田生命、住友生命、大同生命は下期のレンジ(18年3月末の予想)

(第9段落を追加して、更新しました.)
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