テイラー・ルール、米金融当局にどのような意味持つか-Q&A

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トランプ米大統領が連邦準備制度理事会(FRB)次期議長の候補者リストをスタンフォード大学のジョン・テイラー教授らに絞り込む中、投資家はテイラー氏が1990年代初めに考案した政策金利決定の指針「テイラー・ルール」に注目している。金融市場の動きから判断すると、投資家の多くは数式で表された同ルールが実際の政策策定で運用された場合、米金融当局が一段と急ペースで利上げすると結論付けている。だが、それは正しい判断ではないかもしれない。

1. テイラー・ルールとは何か

  テイラー氏は92年、ピッツバーグのカーネギー・メロン大学で、金利決定にインフレ率と経済成長率をどのように活用することができるかについて自身のアイデアを初めて概説。93年にはインフレ率と成長率に基づいて、政策金利をいかに調整すべきかを論文で詳述した。現在は成長率の代わりに失業率が用いられる場合が多い。数式はとても簡潔で、テイラー氏はかつて自分の名刺に印刷していたほか、世界中の中央銀行が政策の指針に非公式に活用してきた。テイラー氏は将来のノーベル経済学賞受賞者候補の1人としてしばしば取り沙汰されてきた。

2.現状でどんな影響があるか

  一般的に言って、テイラー・ルールが適用された場合、金利は高めに設定されるが、数式に投入される数字に大きく左右される。オリジナルの計算では、フェデラルファンド(FF)金利は3.75%前後に設定すべきだとされる。これに対し、現在のFF金利の誘導目標レンジは1-1.25%だ。インフレ高進につながる失業率を低めにするなど、インプットする数字の一部を小さくすれば、同ルールから導き出される結果は現行の金融政策に近づく。

3. ルールの実績は

  2012年以降の時期を見ると、テイラー・ルールを適用していれば、米金融当局が設定した実際の金利よりも高いものとなっていただろう。テイラー氏自身は11年、当局が利上げすれば「状況は改善する」と述べた。だが、12年以降はインフレ低迷が続き、総じて2%の目標を下回ってきたため、高金利政策は誤りであった可能性がある。一方で、同ルールが常に当局よりもタカ派的な数字を示すわけではない。米国がリセッション(景気後退)に陥っていた08年、FF金利の誘導目標は事実上のゼロに引き下げられたが、貸し出しや支出を促進するため同ルールが提言したのはマイナス金利だった。当局者は当時、そのようなことをすれば銀行収益に打撃を及ぼし、国民からや政治的な反発を招きかねないと懸念していた。

4. 学術的な議論にすぎないのではないか

  その正反対だ。金融当局の緩和策に批判的な米議員はテイラー・ルールにしばしば言及する。例えば、下院金融委員会のヘンサリング委員長が推進する法案には、当局が政策ルールに従うよう義務付け、ルールから逸脱する場合、議会に説明するよう求める条項が盛り込まれている。テイラー氏は15年、「世界の金融政策は今や戦略なき領域に入ったように見受けられる」とし、こうした条項の趣旨に支持を表明していた。

5. セントラルバンカーはルールをどう考える

  エコノミストや当局者の多くの反応は、このような要求は中銀の独立性を制限し、行動の余地を狭めて経済に打撃になるというものだ。議会が15年に、金利設定の数式の導入を当局に求める法案を審議した際、イエレンFRB議長は「大きな誤りであり、経済と米国民に害を及ぼす」と論じた。ミネアポリス連銀は昨年、テイラー・ルールの適用追求を過去5年間行っていたら、250万人の雇用創出が阻止されていただろうとの推計を示した。


6. 批判に対するテイラー氏の反応は

  テイラー氏は常に、テイラー・ルールは指針であって機械的なツールではなく、当局にしっかりした理由があるのであれば、ルールから算出された数字から逸脱してもよいと主張してきた。同氏は最近の論文で、「われわれが望むのはセントラルバンカーの手を縛るのではなく、うまく機能する政策であり、明確な戦略があればそれは可能だ」と指摘した。バーナンキ前FRB議長は、テイラー・ルールに修正を加えれば、金融当局が1990年代以降に行ってきたことを「かなり的確に表現」できるとした上で、「金融政策は自動的ではなくシステマチックであるべきだ」と論じた。

7. テイラー氏が次期議長になればルールに従うか

  テイラー氏は現実的に行動する以外、あまり選択肢がないかもしれない。FRB議長は連邦公開市場委員会(FOMC)の議長も務めるが、1票しか持たず、バーナンキ氏の議長時代以降、コンセンサスが政策決定の標準となっている。ボストン連銀のローゼングレン総裁は最近、「議長に就任する大半の人々は誰であろうと、実際の政策判断に際してもう少し柔軟に思考するケースが多い」と説明した。

原題:What John Taylor’s Rule Could Mean for U.S. Fed: QuickTake Q&A(抜粋)

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