アサツーDK社長:TOB結果に関わらずWPPと提携関係解消へ

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  • ベインの提示した買い付け価格、「安いとは思っていない」
  • 提携関係の解消後に業績悪化すれば社長辞任する覚悟

米投資会社ベインキャピタルによる株式公開買い付け(TOB)が行われている国内広告3位のアサツーディ・ケイ(DK)は、結果に関わらず筆頭株主で世界広告最大手の英WPPとの提携関係を解消させる意向だ。約20年間の提携関係の中でメリットを見いだせなかったことなどが背景にある。

  アサツーDKの植野伸一社長は18日のインタビューで、「われわれはWPPにマジョリティーを持たれている子会社ではない」とした上で、過去の協業の中では「彼らが自らの利益を優先してくるところが大きくあった」と指摘。TOBの結果に関わらず提携関係の解消を模索する考えを示した。またベインからの提案を受ける以前の、社長就任の翌年の2014年からWPPと資本提携関係の解消に向けた議論を進めていたことも明らかにした。

植野伸一社長

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  アサツーDKはベインのTOBに賛同することを2日に発表し、20年間にわたり資本提携関係にあったWPPと提携解消することも併せて明らかにした。ベインはアサツーDKを1株当たり3660円で、全株を取得して非上場化することを計画。買収額は最大1517億円の見通しで、買い付け期間を11月15日までと予定している。しかし、発行済み株式数の25%弱を保有する筆頭株主のWPPは、同社の企業価値が大幅に過小評価されているとして、買収に反対の姿勢を示している。

  植野社長はベインが示した買い付け価格について「われわれは決して安いとは思っていない」とコメント。その根拠として、ベインの提示した価格はTOB発表前の半年間の平均株価を26.5%上回っており、取締役会や外部の専門機関から意見を収集して議論した上で適切な価格だと判断したと説明した。

  アサツーDK株は買収発表後に約20%上昇し、17日の終値は買い付け価格を上回る3790円だった。これまでWPPの他に2位株主の英投資ファンドのシルチェスター・インターナショナル・インベスターズや香港のヘッジファンドのオアシス・マネジメントなどもTOB反対の意向を表明している。

  WPPは17日にアサツーDKのTOBへの意見書をウェブサイトに掲載し、アサツーDKは戦略的、金融的な部分で他の関係者に接触した回数や程度などについて明確に示すべきだとの見解を示した。これに対し植野社長は「ベインの提案があったのと同じ時期に複数企業と交渉していた」と発言。「多くは事業会社でその中の一つは商社」とし、金融関連ではベイン以外のファンドとも接触があったことを明らかにした。最終的に正式な提案があったのは「ベインだけだった」という。

破滅的な買収

  WPPはから「破滅的な買収」と指摘された、16年7月のアニメ制作会社ゴンゾの買収について、植野社長はWPPから派遣された社外取締役も投資委員会の一員として積極的に賛同した案件であり、取締役会で全員一致で可決された案件だったと反論した。

  ベインのTOBに応じたのは非上場化が目的で、「非上場化で改革のスピードを上げることが大きなポイント」だと述べた。ベインについては「マネジメントの人的な供給、海外のM&A(合併・買収)のサポート、新たな事業計画作りのサポートが非常に強い会社」というメリットあると述べた。

  植野社長は過去に東南アジアでのWPPとの合弁事業や国内の他の事業で貢献の大小を問わずに、同社が大きな利益を要求することがあったと説明。過去にWPPが持ちかけたデジタル分野での事業提案も日本の商習慣には合わず、実現に至らなかったという。M&Aに至っては同社が中国でデジタル広告の会社の買収を図った際にも、WPPグループにも類似の事業があるため買収計画の断念を迫られた。

  提携関係の解消後は「いろいろな領域で適切なパートナーを見つけていく」方向に転換すると述べた。すでに国内外で複数のパートナー候補と話を進めているという。

  非上場化の後は同社が13年8月に示した20年までの中期経営計画の着実な実現を目指す考えで、「一時的に売り上げや利益が減ることをやってでも構造改革をすることが必要。今がそのタイミング」だと話した。「業績が悪くなれば、社長として辞任する覚悟」もあるという。同社は20年に営業利益を昨年実績の2.7倍にあたる150億円、営業利益率を18%に高めることを目標に掲げている。

  元広告代理店社員で関西大学で広告分野を研究している水野由多加教授によると、国内の広告業界では減益傾向が長期間続いており、その傾向に歯止めをかけることができるのがデジタル化だという。「グーグル、フェイスブック、LINEなどの会社が広告を前提としたビジネスモデル」である以上、「広告会社が果たせる役割はまだある」と指摘した。アサツーDKは非上場化後にデジタル領域を強化するとしている。

  市場調査の英ユーロモニター・インターナショナルによると、昨年の国内広告売上高シェアは電通が1位の27.4%、博報堂が2位の13.3%、3位のアサツーDKは3.2%だった。

  WPPはアサツーDKの主張に対して、買収価格はアサツーDKを「著しく過小評価」していると電子メールでコメントした。一方、ベインは「株主にとって魅力的な価値を実現できる機会」を提供していると電子メールでコメントし、上場を維持したままで構造改革を進めることは株主の価値を悪化させる可能性があると指摘した。

(8段落目以降に内容を追加して更新しました.)
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