衆院埼玉5区では、今回の衆院選を象徴する3極の激しい選挙戦が繰り広げられている。選挙直前に新党・立憲民主党を立ち上げ、9選を目指す枝野幸男代表(53)に自民党前職(比例復活)の牧原秀樹氏(46)、希望の党新人の高木秀文氏(44)が挑む構図。候補者らは最後の追い込みをかけている。
  
  「無所属なら私は今頃大宮でマイクを握っている」-。枝野氏は14日、選挙区を離れ都内で街頭演説を行った。党代表として全国を駆け回り、地元入りする時間はほとんどない。

枝野幸男代表
枝野幸男代表
Photographer: Shiho Fukada/Bloomberg

  新党結成の理由について「選択肢がない、このままでは困るという声をたくさんもらった」と語る。アベノミクスは「上からの経済政策」だとして、「下からの経済再生」が必要だと強調する。枝野氏が「本当の民主主義をこの国に作り上げたい」と力を込めると、集まった有権者からは歓声が上がり、「枝野コール」も響いた。

  枝野氏は「これだけたくさんの反応を頂いていることに最初戸惑っていた」と演説後、記者団に語った。同党の候補者は「当初メディアが想定していたよりもきちっと戦えていると思う」と手応えをにじませ、小選挙区で自民候補に勝つことが「自公政権の議席を減らす事だと思って頑張る」と意気込む。

  NHKが16日に報じた世論調査では自民党の政党支持率が32.8%と優勢な中、立憲民主党の支持率が6.6%と希望の党の5.4%を抑えて野党のトップに躍り出た。

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自民は枝野氏「ヒーロー」化に危機感

  自民の牧原氏は、過去4回の選挙でいずれも枝野氏に小選挙区で敗れている。ブルームバーグの取材に対し、地域住民らとのつながりは「私の方が深い」と自信を見せる一方、連日メディアに登場するライバルの存在に「テレビでヒーローになっている」と危機感を示した。

牧原秀樹氏
牧原秀樹氏
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  仮に全国の自民の候補者に戦いたくない相手を聞けば、「全員が枝野さんと答えるのではないか」と漏らす。共産党が公認候補を降ろして枝野氏支援に回ったことも選挙戦の厳しさが増す要因として「一番大きい」と言う。

  JR大宮駅前には岸田文雄政調会長が16日、応援に入り、「まさに選挙の争点の縮図みたいな選挙区で頑張っている」と街頭で激励した。牧原氏も新党結成や野党再編の慌ただしい動きを捉えて「信用ならない」と語り、安倍政権の約5年間に及ぶ外交や経済政策の実績を訴えた。公示日の小泉進次郎筆頭副幹事長を皮切りに、菅義偉官房長官も駆けつけ、自民は総力戦で臨んでいる。

希望は他候補意識する「余裕もない」

  希望の高木氏は16日、帰宅客らでにぎわう同駅前で小池百合子代表と並んで写る選挙用ビラを自ら配布し、支援を呼びかけた。枝野、牧原両氏と同じ弁護士出身で、3日に党の公認を受けて慌ただしく公示日を迎えた。

高木秀文氏
高木秀文氏
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  街頭では、報道各社の世論調査で与党優勢が伝えられていることを受け「今のままでは安倍政権がこのまま続く、果たしてそれでいいのか」と訴える。外交安全保障では「現実的な対応」をとる一方、「しがらみ政治をリセットして大胆に改革する」と党の掲げる政策を繰り返し語ることで支持拡大を狙う。

  ブルームバーグの取材に高木氏は、公認から公示までの準備期間が「新人としては短いと感じた」ものの、「決められた期間の中でベストを尽くす」と話した。残りの選挙戦も「党の政策をいかに理解してもらうか」に力を入れ、地道な活動を続けるという。他候補の動向については「意識している余裕もないので、がむしゃらにやっていくしかない」と語った。

  さいたま市に住むパート、酒井キミ子さん(70)は以前の選挙では枝野氏を街頭でよく見かけたと言うが「今回は会っていない、埼玉では見ていない」とこれまでとの違いを語る。選挙直前にできた二つの新党については「よく分からない」と首をかしげた。会社員の泉山浩さん(49)は「投票しても変わらないから最近は全然選挙に行かなかった」と話すが、野党の急な動きを見て「興味が湧いた」と語った。

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