「とことんやりたい」ソフトバンク孫氏、異能の発掘や育成にも腐心

  • 異能人との早い出会いは大切、「刺激し合いさらなる高みへ」-孫氏
  • 日電産の永守氏やFリテイリの柳井氏も私財投じ大学寄付や財団創設

ソフトバンク孫氏

Photographer: Mark Kauzlarich/Bloomberg
Photographer: Mark Kauzlarich/Bloomberg

数年前に社長退任をほのめかしたソフトバンクグループの孫正義会長兼社長(60)は今でも同社の経営を主導し続けている。10兆円規模のビジョンファンドを率いて自ら世界のIT革命の加速にも乗り出した。だがその一方で、自分のような「異能」を発掘し育てていくことも忘れない。

  「僕も皆さんぐらい若くなりたいなぁ。もう一度人生挑戦できるなら、もっととことんやりたい」。孫氏は7月下旬、自身の私財を投じて昨年設立した「孫正義育英財団」の交流拠点(東京・渋谷)の開所式典で思わず本音を漏らした。異能とは異彩を放つ優秀な人材を指す。

  式典では9歳の男児から大学院生まで孫氏が異能と認める45人が出席。英米で単身留学の経験がある鷲見題市君(13)は、「将来は会社を設立し、孫さんみたいに未来が見える子たちを育てたい」と目を輝かせた。AI(人工知能)やロボット分野の知識向上が目的で「孫さんに会えたことがこれからのモチベーションになった」

 孫氏も米マイクロソフト共同創業者のビル・ゲイツ氏やアップル共同設立者のスティーブ・ジョブズ氏らとの自らの出会いを引き合いに出し、「異能の人たちとできるだけ早く知り合って、刺激し合うことでさらに自分が高みに行くのは本当に大切なんだ」と若者に説いた。

世界視野に人材育成

  京都市が本社のモーターメーカー日本電産の永守重信会長兼社長(73)も今年3月、京都学園大学に私財100億円以上を寄付する大きな決断をした。2018年に自ら同大の理事長に就任し20年には工学部を新設する計画だ。ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長(68)も私財を投じて若者の海外留学を支援する財団を設立している。

  3人の共通点は、創業者であり、かつ「ソフトバンクファミリー」であること。柳井氏は01年からソフトバンクの取締役を務め、永守氏も先ごろ退任したが14年6月から3年余り務めた。孫氏を中心に、自身らが経営する企業とは別の場所で、しかも私財により、世界の変革をリードする人材を育成しようとの動きが広がりをみせている。

  孫氏の財団ではAIが人間を超えるシンギュラリティ(技術的特異点)時代を見据え、高い志を持つ若者が才能を開花できる環境を提供。スーパーコンピューターやドローンなど最先端機器を自由に使えるほか、希望者には最長4年間の支援金を給付する。これまで約1100人が応募、96人が17年度の支援対象に選ばれた。

  立花証券の内海清人アナリストは、孫氏と永守氏はともに技術の知識も持ち合わせた創業者で、「何十年も先のことを考えた上で今どうすべきなのか、リスクを負うことができる2人だ」と指摘。例えば、永守氏の多額の寄付は「日電産の人材のみならず、日本のものづくり、技術力を大切に考えている表れではないか」と述べた。

  永守氏は7月の決算会見で、日本にはモーターを体系的に学べる専攻がないとし、2030-50年ごろには電気自動車・ロボット・ドローンが技術の主軸になると予測した上で、「そこに焦点を合わせると大学教育もやらないといけない」と語った。

The Meeting That Changed Masayoshi Son's Life
    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE