ボルカー米連邦準備制度理事会(FRB)議長(当時)の退任と、後任としてグリーンスパン氏指名が発表された1987年6月、バージニア州のパーペチュアル・セービングス・バンクに勤務していたマーティ・ミッチェル氏は、トレーディングデスクの同僚と債券市場全般がどんなにショックを受けたか覚えている。

  長期債利回りはその日に30ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)余り上昇し、ドルは2%近く下落した。後に「マエストロ(巨匠)」と称されるグリーンスパン氏だが、当時はまだ、ボルカー氏のインフレ抑制を継承するのかどうか、トレーダーは不安を感じており、8月に就任した後も利回りの上昇は続いた。ピークを付けたのは10月の株価暴落で、市場はグリーンスパン氏の対応に気迫を感じた。

  ミッチェル氏とダン・ファス氏、レーシー・ハント氏、ジャック・マルビー氏、エドワード・ヤルデニ氏の債券市場のベテラン5人にとって、87年当時の出来事を含む過去50年間の米金融当局での首脳交代が浮き彫りにするのは、トランプ大統領による次期議長指名の発表を受けたトレーディングの最初の波に飛び乗ることに、投資家は注意するべきだという点だ。

マーティ・ミッチェル氏
マーティ・ミッチェル氏
出典:マーティ・ミッチェル

  スタイフェル・ニコラウスの政府債トレーディングの責任者を経て、現在は独立系ストラテジストのミッチェル氏(54)は、「われわれが今、一部の議長候補を見つめる場合と同じように、グリーンスパン氏が登場した際には彼はまだ未知の存在だった。しばらく身近であった人物に多少安心感を覚えるのが人間の本性だ」と語った。

  これら5人の債券市場のベテランとのインタビューで得られた主な教訓は4つに集約される。
・議長指名の発表を受けた市場の最初の反応は必ずしも続かない
・連邦準備制度はゆっくりと動く大型客船のようなもので、急な激変を期待してはいけない
・債券トレーダーは米金融当局に強烈なメッセージを発し、その進路を変えさせることができる
・新任の議長が最初の危機に直面するまで、その人物の真価は分からない

  トランプ政権は候補をウォーシュ元FRB理事、スタンフォード大学のテーラー教授、パウエルFRB理事、コーン国家経済会議(NEC)委員長、イエレン現議長の5人に絞り込んだとされる。債券トレーダーは各候補について、既に一定の評価を下している。

  それは、タカ派と目されるウォーシュ氏が次期議長ならボラティリティー(変動性)が高まる一方、イエレン氏が続投するか、パウエル氏が指名されるなら、より円滑な政策運営が見込まれるといったものだ。賃金上昇の兆候が過去30年にわたる債券市場の強気相場の終わりを警告しているとの見方もある中で、トランプ大統領は米国債市場にとって極めて重要なタイミングで議長人事を決めることになる。

原題:Greenspan Fed Debut Shows Peril of Bond Traders’ Snap Judgments(抜粋)

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